逃げるが勝ちです! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜。 え? 私のことはお気になさらずに。二度目の人生は楽しく生きますわ〜
にのまえ
異世界恋愛ロマファン
2025年04月24日
公開日
6.6万字
連載中
夏の夜、王城で開かれた舞踏会は煌びやかで、貴族たちの話しあう声、食事と音楽に満ちていた。
飲み過ぎたカサンドラ・マドレーヌは、ひとり酔いを覚ましに出た庭園で、心は凍りついていた。
噴水の前、かつての聖女マリアンヌの銅像を背景に、皇太子アサルトと妹シャリィが密やかに触れ合っている。
「……うそ、アサルト様」
酔いも醒めるその瞬間、世界が音を立てて崩れ落ちた。
カサンドラが気づけば、汚れたドレス、床に転がる冷たい鎖。
――なに、これ……私が死ぬ直前の、姿?
「……あぁ、思い出したわ。私は一度、あのふたりに……殺されている」
昔? 前世を、思い出したカサンドラの周りは変わり、汚れたドレスを着てもなく、冷たい鎖にも繋がれていない、舞踏会の夜に戻っていた。
そう、そうだったわ。
カサンドラは静かに笑う。
「二度と怖い思いは、もう嫌なので逃げます。恋愛も玉の輿もご自由に。でも、私の命と自由は渡しませんことよ?」
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