藤井未来は普通の女子高校生だった。学校からの帰り道、夕焼けに染まる空を見上げながら、友達とのおしゃべりやテスト勉強のことを考えていた。そのとき、不意に彼女の視界に飛び込んできたのは、車道に飛び出そうとする小さな子供の姿だった。
「危ない!」反射的に叫びながら未来は走り出し、子供を抱きかかえて安全な場所に押しやった。しかし、次の瞬間、彼女の体に激しい衝撃が走り、視界が真っ白になった。車が未来に突っ込んできたのだ。「ああ、私は、死ぬのね…」痛みとともに意識が遠のいていく中、未来は自分の行動に後悔はなかったと感じていた。命をかけてでも、あの子供を守ることができたのだから。
その瞬間、未来の耳に声が聞こえてきた。 「勇気ある優しい少女よ」 「誰…?」辺りを見回しても姿は見えない。声だけが静かに響いていた。 「私は、ある星から来た宇宙人だ」 「宇宙人…?」 「君の勇気ある行動に敬意を評し、私の命をあげよう」 「あなたの命?でも、あなたはどうなるの?」 「君と一心同体となる」 「一心同体…?」 「もし、困ったことがあったら、これを使うといい」
突然、未来の手に光る棒が現れた。 「これは何?」 「ベータスティックだ」 「これを使うとどうなるの?」 「ふふふ、心配することはない」 「…デザインださ…」それは、無骨なフォルムのアイテムだった。 「…すまん」 「それに携帯するのにも不便なサイズだよ。胸の谷間にでもはさんでおけというの?セクハラかしら?」
「ならば」 ゼクスの声とともにベータスティックは光輝くとネックレス状に変化した。 「有難う。これなら、いつも身につけていられるわ」 「使用する時に元の形状になる」
その言葉とともに未来の視界は完全に暗闇に包まれた。まるで、今際の際に見る夢のように感じられた。