新年度の貴族学院の入学式が訪れた。整然と並ぶ新入生たち、厳粛な空気の中で式典が始まり、会場には一種の緊張感が漂っていた。そして、待ちに待った瞬間が訪れる。
「それでは、今年度の入学生代表の挨拶をお願いします」
学院長の声が響き渡り、会場中の視線が壇上へと注がれる。入学生代表がゆっくりと壇上に上がり、注目を集める中、その人物が明らかとなった。
「皆様、はじめまして。今年度の入学生代表を務めさせていただきます、アリシア・フォン・ヴァルトです。」
黒髪を背中に垂らし、鋭い眼差しを持つ美しい少女が堂々と立ち、静かに挨拶を始めた。その名はアリシア・フォン・ヴァルト。今年の首席合格者であり、貴族学院の新たな才能として学院中の注目を集める存在だった。
「アリシア・フォン・ヴァルト…あの子が首席合格者なのね」ミラは思わず小声で呟いた。アリシアの冷静さと、何かを見透かすような鋭い眼差しが、周囲の人々に強い印象を与えていた。新たに入学してきた彼女の存在は、学院に新たな波紋を呼び起こし、これからの学院生活に大きな影響を及ぼすだろうと誰もが予感した。
しかし、実はこの首席合格者の問題には複雑な事情が潜んでいた。アリシアの満点合格は多くが認めるところだったが、背後に隠された「特殊な事情」が絡んでおり、その真相を知る者はまだいなかった。彼女に纏わる謎は、学院生活が進むにつれて少しずつ明らかになっていくことになる。