目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
変身コスト1万円!赤字魔法少女カフェ、元社畜が経営改善。ついでに地球も救います。
変身コスト1万円!赤字魔法少女カフェ、元社畜が経営改善。ついでに地球も救います。
筋肉痛
現代ファンタジー異能バトル
2025年04月25日
公開日
8,389字
連載中
変身1回、1万円。 魔法1発、3,000円。 必殺技、2万円オーバー。 「それで地球は救えても、俺たちの帳簿は死ぬんだよ!!」 過労で心臓が止まりかけた元・社畜、高橋悠介(27歳)。 再就職先は、なぜか商業高校の“経営実践部”―― その実態は、赤字経営が常態化した魔法少女カフェの責任者だった。 しかも少女たちはガチで変身して、怪獣と戦って、観客の前でキラキラ踊る。 ……いやもう、何それファンタジー。現実どこ行った。 しかも魔法は課金制。1回の戦闘で社畜の月給溶けちゃうよ。 残高尽きれば、変身も、戦闘も、夢もさようなら。 頼りにされるのは、社畜仕込みのExcelスキルと根性だけ。 カフェ営業? 経費削減? 魔法コスト圧縮? 思春期女子の子守り? はい、それ全部俺の仕事です。 燃える経費、泣ける残高、壊れかけの帳簿とわずかな希望の中で、 少女と地球と、ついでに自分の人生ごと再建してやる! 『限界社畜、魔法少女を経営する』 お金と感情がぶつかり合う、青春ドタバタ課金コメディ、いざ開幕! ※カクヨムでも連載しています。(若干タイトルが異なります) ※弊著「Pathos〜魔法少女と社畜と革命と〜 (https://www.neopage.com/book/32506804724737100)のパラレルワールドです

第1話 変身コスト1万円。現在、残高8,920円。怪獣は目前。


【これは、社畜教師が魔法少女の赤字カフェと、ついでに地球も救う話である】



光珠が飛び交い、魔法少女女子高生変身済が空を翔け、球体広告原型は兎が「残高割れっぴぃぃぃ!!」と悲鳴を上げている。


俺はというと──

焼けかけたカフェワゴンの陰で、モバイルPC片手に“魔法少女支出管理表(ver3.1 安定動作版/責任は持たない).xls”と格闘していた。


昨夜の徹夜で組み上げたマクロは、当然のごとくエラーの溜め息をつき、絶賛手動入力中。


どんな悪夢かって? いや、現実リアル

じゃあラリってるのかって? いや、素面。


だって、Excelシートには、冷酷な数値が並ぶ。

シビアすぎて鼻血出そう。

魔法端末モフデバイスからの情報連携通知音が死へのカウントダウンに聞こえてきた。



──星宮すみれ:変身済/必殺技発動済

➤ ¥112,000 使用済(残高:¥8,920)

──白瀬カノン:支援魔法 ×4

➤ ¥12,000 使用済

【警告】残高逼迫中!課金判定:✕(魔法発動不可)

➤怪獣:被ダメージ微量、元気モリモリ!




このログに「俺:顧問就任7日目、キャパ崩壊中」を追記したい気持ちをぐっと抑える。


魔法少女なら、もっと夢を見せてくれ。

…そう思ってた時期が、俺にもありました。


でも現実は、魔法一発 ¥12,000。

今の戦闘でも俺の月給の手取り半分近くが溶けている。


資金源はカフェの売上とスポンサー。俺はその管理責任者。つまりこの地球防衛戦、経費申請との二正面作戦だ。


……社会って、どこまでが冗談でどこからが罰ゲームなんだろうな。


「すみれっぴー! その魔法撃ったら残高マイナスっぴー! 支払原資はーー!?」


頭上を飛びながら絶叫するのは、元・丸っこい兎型AIマスコット──モフ丸。

今や全身にスポンサーロゴを背負うアドバルーンの化け物 ver.8.0(協賛:Z社ほか7社)である。


資本主義は、癒し系マスコットさえ欲望の獣に変えるらしい。

……こわっ、資本主義君。たぶん、飲み会の割り勘で過剰請求して懐に収めるタイプ。


「せ、先生っ……回復、もう一度だけ……!」


震える声に涙を浮かべた白瀬が、スカートの裾をぎゅっと掴む。なんですか、このカワイイ生き物。


罪悪感で俺の胃が死にそうなんですけど。


彼女の支援魔法は効果抜群。2時間おきに処方すれば、疲れたサラリーマンでも24時間戦える。

──ただし、1回¥3,000。コスパ悪っ。


「さっき“最後”って言ったでしょ!? ……っ、泣くな、泣くなよ……もう……わかった、俺の負け! これが本当に最後だぞ!」


ビクビクと揺れるカノンの肩を見て、俺の脳裏に過去の記憶がフラッシュバックした。


──前職の後輩・篠原。

『高橋さん、これ……やるしかないんですか?』

彼女の代わりに徹夜して、倒れて、辞めた。


俺は、誰かの“もう一度”に応えられる大人になりたかったのかもしれない。


……ということで、女の子の涙は重課金兵器だよね、キラッ★


その毒性で赤字補填申請書、今週だけで8枚目♪

前職だったら「日次ですら予算管理できないのか、百回〇ね!!」と罵倒されてた案件。


俺だって、涙が出ちゃ~う……だって大赤字だもん。

お尻は小さくないし、ぷくっとボインでもないけど、な!

令和の時代にキューティー〇ニー。逆に有り!


そんなことより、誰か俺とこの帳簿の赤字、止めてくれ~!!


──


俺は27歳、元広告代理店の社畜。

先月、過労で心臓が止まりかけて退職。気づけば、都立新秋葉商業高校の「情報」科教員になっていた。


情報教員が全国的に不足しているらしく、書類を出したらトントン拍子で決まった。なにそれ、怖い。


俺の人生、七転八倒。七転び目なんて小学生のときに済ませたから、いまや“転がり記録”自己ベスト更新中。


あんなにうまく行くなんて、あの時疑うべきだったのかもな。


初日に任命されたのは──経営実践部。活動内容はカフェ経営。


「俺のスキルが役立つかも」だなんて考えた過去の自分、油断しすぎ。


そのカフェは、《【コスプレカフェ》を装った“変身1回1万円”の高コスト魔法少女たちの秘密基地だった。


敵は怪獣。気分は地球防衛軍。

──でも予算は、個人経営喫茶店。


サルでもわかる。無理ゲーである。


だが、俺たちがやらなきゃ地球がヤバい。

進むも地獄、退くも地獄の経営道。


俺の役目? 司令官……という名の便利なスケープゴート、オーマイゴッド。


『脱社畜してブラック企業を脱出できたと思ったら、配属先は赤字防衛軍レッドフォースでした』

そんなラノベタイトルみたいな人生、マジでいらん。



──でも、もう逃げない。


俺の人生、必ず取り戻す。

全社畜スキルを総動員して、

猫も杓子もカフェも地球もJKも──



全部まとめて救ってやるから、覚悟しろ!!




――――――――――――――――――――――――――――


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?