昨日の帰りに透の家まで送っていき、
例の写真を見せて貰う事になりました。
透の家は父親と二人暮らしで夜は一人で居る事が
殆どだと聞き心配になりました。
「なぁ龍也、校長室に行くだろ?」
そうです。
「えぇ。私の写真も持って行かなくてはいけないですけど……」
「それならさ、この写真も一緒に持って行けよ」と
例の写真を私に渡したのです。
「え?」
「これが、岩滝が撮った物とは、最初は信じて
貰えないかも知れないけどこれはほんの一部に過ぎないから
岩滝の机を調べてみろって言えば、すぐにバレるぜ」
昨日の帰りの会話はこんな感じでした。
今日はやけに時間が経つのが早い様な気がしますが気のせいですね。
と言いつついつの間にか昼休みになっていました。
そして、昨日と同じように校長室のドアをノックしました。
「九重です」
「入りたまえ」
何回来ても緊張しますね。
「失礼します」
「昨日言っていた手紙と写真は持ってきたのかね?
ポケットから例の手紙と写真を取り出して、校長先生の前に出しました。
「はい、それから別の写真も持って来ました」
「別の写真?」
透が岩滝の机から失敬した写真も出しました。
「岩滝先生の机から失敬したものなのですが
女子生徒達の着替えを隠し撮りした物です」
それを見た校長先生はまさに、
"開いた口が塞がらない"状態で目を見開いて居ました。
「九重先生」
呼ばれたので、返事を返します。
「はい?」
「放送で岩滝先生を此処に呼んでくれないか」
「……分かりました」
昨日の今日でこの役目はかなり酷ですが
校長命令では仕方ありませんね。
放送室に行く為に廊下に出ると透が昨日と同様に壁によっ掛かって居ました。
「話、終わったのか?」
出てくればそう思いますよね。
「まだです」
「じゃぁ何で?」
透が居るのがバレると色々マズいので此処から離れます。
「歩きながら話します」
放送室に行く為歩きながら透に話しました。
「校長先生に岩滝……先生を放送で呼び出して欲しいと頼まれたんです」
「そぉなのか。
なら、放送室行くより直接言った方が早くないか?」
確かに、体育館の方が近いですね。
「まぁ、九重先生が会いたく無いってなら放送でも良いけどさ」
「……」
黙ってしまった私。
それは、透が苗字で呼んだからです。
何時も、二人で話して居る時は名前で呼んで下さるのに……
授業中とは言え誰かに聞かれたら大変なのは分かって居るのですが
苗字で呼ばれた事が酷く悲しいと思ってしまいました。
長い間黙ったままの私に透が耳元で小さく囁いたのです。
「"龍也"」
「あ、はい」
今の私の顔は真っ赤だと思います//////
「どぉする? あいつ、今なら体育館に居るぜ」
ビクッ!!
「校長の言う様に放送にするか?
どっちも、そんなに距離無いからな龍也が決めろ」
「私は……」
昨日の事や校長室に置いてきた写真や手紙等
会いたく無い理由は沢山あったはずでしたのに
私が出した答えは……
「体育館に行きましょう」でした。
内心自分でも驚きです。
「本当に体育館で良いんだな?」
「直接呼びに行くと言う選択肢を私に与えたのは貴方ですよ?」
全く、しょうがない人です。
「確かにそぉだな、んじゃぁ、行くか!!」
「はい」
校長室は四階。
体育館は二階にある為二人で階段をゆっくり降りて行きました。
因みに、放送室は三階にあります。
体育館に着くと透は中には入らず、"此処で待ってる"と言いました。
そぉ言えば今やってるのは透のクラスでしたね。
丁度、入口に来た生徒を呼び止めて岩滝を呼んで貰いました。
「君、岩滝先生を呼んでくれますか?」
「分かりました」
その男子生徒は嫌な顔一つせず岩滝の居る方へ
走って行き私が呼んでると言う事を伝えてくれました。
そして、連れてきてくれたのです。
「九重先生ぇ~
岩滝先生を連れてきました」
「有難うございます」
呼んでくれた彼にお礼を言いました。
岩滝の顔が少し引き攣って居る様に見えたのは
多分、見間違えでは無いと思います。
あの写真の事を知られてしまったからには顔も引き攣るでしょうね。
「私と一緒に来て頂きたい場所があるのですが
今よろしいでしょうか?」
上擦らないように必死ですね。
「一体何処に?」
大きなな声では言えないので私は手のひらに"校長室"へと書きました。
それを見て更に顔を引き攣らせて「分かりました」
と言って先程の生徒に「皆に自習だと言っておいてくれ」
と頼んだのです。
「俺は用事が出来たから頼んだぞ?」
極力、平静を装いながら先程の彼に頼みました。
「はい」
「じゃぁ、宜しくな。
九重先生、行きましょう」
廊下に出た岩滝は其処に居る透を見て眉間に皺を
寄せましたが何も言いませんでした。
-遠野視点-
「皆、岩滝が用事が出来たから自習だってさ」
何なのかは知らないがあいつがいなくなり、体育館の中は騒がしくなった。
「マジか?」
「おう」
オレの名前は
九重先生に岩滝を←いつも呼び捨て
呼んで来て欲しいと言われた時は驚いた。
岩滝に用があったらしい。
岩滝の隣に居たオレは九重先生が手のひらに書いた文字を見てしまった。
"校長室へ"
確かに、九重先生は手のひらにそぉ書いた。
チラッと、廊下を見ると新庄が居た。
岩滝と九重先生が体育館から出て行った後新庄が入ってきた。
あいつが岩滝の授業に出ないのはいつもの事だし、
逆に出たのは二、三回だ。
それより、岩滝の奴何をやらかしたんだ?
校長室に呼ばれるって……
何したんだ?
「よぉ、相変わらず体育はサボるな」
こいつがサボるのは岩滝の体育だけだが。
「めんどくさいからな、それに、俺はあいつが嫌いなんだよ」
「なぁ新庄、あいつが校長に呼ばれた
「あぁ、知ってるぜ」
「マジかよ、
オレは結構噂話が好きだったりする。
「此処じゃ話難いから帰りに話す」
言いにくいことってマジであいつ、何したんだ?
「分かった、じゃぁ決まりな」
「ドン引きするぜ」
呆れ返った顔の新庄をみてそんなに酷いのか? と思った。
「マジか……」
「冗談抜きでマジだ」
岩滝が居なくなったことで皆、好き勝手に色々している。
バスケをしてる奴。
俺達みたいに話をしている奴。
マットの上で寝てる奴。
それぞれだ。
-校長室視点-
コンコン
「岩滝先生を連れてきました」
「入りたまえ」
「「失礼します」」
「放送が聞こえなかったが直接呼びに行ったのかね?」
「はい、その方が早いと思いましたので」
本当は透に言われたからなのですがそれは透が授業を
サボってたのがバレてしまうので言わないでおくことにしました。
「俺は何故呼ばれたのでしょうか?」
解っていても聞き返してしまうのは人間の性でしょうね。
「君に聞きたい事が色々とあってね」
「何でしょうか?」
「此処にある写真は九重先生のも含めて、君がやったと聞いてている」
隣に居る私の顔を見て岩滝の顔は青ざめた顔をしていました。
私は少し
意地悪な笑みを
浮かべました。
「事実かね?」
正直に答えるんでしょうか?
それともはぐらかすのでしょか?
黙ったままの岩滝を校長先生が睨みつける様に見ています。
その間私も黙ったままです。
話そうとしない岩滝。
痺れを切らしのか校長先生は椅子から立ち上がり私達の方へ歩いて来ました。
「沈黙は肯定と取るが良いのかね?」
冷や汗を流しながら、それでも、黙ったままの岩滝。
校長先生は岩滝が答えるのを待っていて何故か隣に居る
私まで冷や汗が出てきそうでした。
それだけ、校長先生が偉大と言う事なのでしょか?(苦笑)
流石に校長先生の威圧感に耐えられなくなったのでしょう。
やや震える声で自分がやったと認めたのです。
「お、俺がやりました」
自白した岩滝。
しかし、今度は校長先生が黙ってしまいました。
そして、椅子に座り考えて居る様子です。
そして、徐に口を開いた。
「何故、こんなことをしたのかね?
女生徒達のもだがそれは置いといて、九重先生は幾ら美人でも男性だ」
私が美人!?
ありえません!!
わ、私が美人なんて……
第一、その言葉は女性に使うのであって
男の私に使う言葉では無いはずです……
使い方が違うのでは??
校長先生も何て事を言い出すのでしょうか……
そんな事を考えて居たら
隣に居た岩滝まで校長先生に賛同して私が美人だとか言い出したので
成す統べが無くなりました↓↓
最早、溜め息しか出てきません……
そこで、本人を無視した会話に
少し、ムカついたので「あの……」と二人の声を掛けたのです。
「あの、今話すべきは私の事では無く
彼の行為についてどう処分なさるかです」
普段怒鳴ったり大きな声を上げない私が
怒鳴ったので二人ともピタリと話すのを止めました。
「そぉでしたな……
岩滝先生、これが事実ならば、貴方を解雇しなければならない。
教育委員会にも話が行けば、貴方は教員免許を剥奪されるでしょう」
私の話をしてた時とは一変して、青ざめた岩滝。
「もう一度、訊くがこれは総て、君がやったのかね?」
「は……い」
「そうか、残念だ。
君は明日から来なくて良い、謹慎処分だ」
「すぐに解雇になるだろうが正式な、解雇通知は後日、郵送で送る」
「九重先生も今日はご苦労様でした。
これで、安心して働けますよ」
「はい有難うございました」
私は校長先生にお礼を言って、お辞儀をして校長室を出ました。