「オマエも新たな力を手に入れたようだな」
連はもう一度幻日をくらわせようとするが、次の瞬間、ティエラをみるとすぐにそれを解除した。
そう、ティエラは、“構えていた”。
そして数秒後、ティエラは消えた。
「ッ...!いちかばちか...!」
連は“能力”で幻日を棒状にする。
ティエラは“ソレ”を見て、目をカッと開いた。
連の目の前で砂埃が立つ。
「!!」
今だ。
連は棒を自身の前に出した。
すると次の瞬間、ティエラの剣と連の棒がぶつかり合い、その衝撃で2人とも地面を滑った。
2人とも数秒沈黙を貫いてきたが、ティエラがそれを破る。
「ふざけるな...貴様...それは...」
「...?」
「それは......!俺の能力(チカラ)だッ!!!!」
ティエラは青筋を立て、物凄い剣幕で連に怒鳴りかかった。
それは、連をも圧倒するほどであった。
「......やはり貴様は許せん。殺す!」
ティエラは斬りかかる。
連は棒状の幻日を今度は刀の形にし、ティエラの斬撃を防いだ。
互いの刃が押し付けられ合う。
「どこまでも俺を愚弄するか...連!」
「残念だったな。というより、この能力は元々オリジンのものだ。もとよりオマエのものでは...ないッ!!」
連はティエラを弾き飛ばした。
その後、連が大地に拳を打ち付けた。
すると次の瞬間、大地が“うねり”を起こした。
「まさか...」
ティエラが動揺している間をうかがい、今度は連が斬りかかった。
「くっ...!」
ティエラはそれを防ぐ。
と、次の瞬間、ティエラは大きな衝撃とともに吹っ飛ばされた。
ティエラは自分を吹っ飛ばしたものの正体を目にする。
それは、巨大な岩の腕。
ユピテルの能力...カオス・ガイアだ。
(やはりそうか...!ユピテルの能力まで...!)
ただし、顕現している岩の腕は一本だけ。
ここでティエラは一つ仮説を立てる。
(“型落ち”している...?)
以前のソレイユの幻日も、たった一つずつしか出せないことを考えると、元の使用者ほど、能力を使いこなせないのが彼の能力の欠点のようだ。
次にティエラは即座に拳銃を取り出し、発砲する。
連はそれをタカの神速でかわした。
(...やはり、か)
ティエラは不敵な笑みを浮かべる。
「連、お前に一つ大失策があったことを伝えておこう」
「...何?」
「それは...」
ティエラがあるものを投げる。
手榴弾だ。
連はジャンプでかわすが、着地した次の瞬間、真横に現れたティエラがきりかかってきた。
連はそれをなんとか幻日の刀で防ぐ。
「バリアを奪えなかったことだ」
「!!」
次の瞬間、手榴弾が爆発を起こす。
土煙で周りが見えない。
と、そのときだった。
パァン!!
そんな音とともに、連の脚に激痛が生じた。
「ぐっ...!」
連は痛みに顔をゆがませながら跳び、土煙の空間から脱出する。
連は自身の脚が被弾したことを確認すると、陽の力でその傷を治そうとする。
すると...
「そうはさせんぞ」
ティエラは再び発砲する。
連は陽の力を解除し、それを神速でかわす。
(やはりそうか。コイツ...陰陽道と特殊能力は併用できない)
「ティエラ...オマエは遠距離から好き勝手するつもりなのだろうが、そうはさせん」
そう言うと、連は掌から幻日を顕現させる。
「来いよ」
ティエラは刃を連に向ける。
幻日が発射された。
ティエラは幻日をかわす。
しかし...
「ッ!!ここまでとは...!」
その衝撃波で大きく吹っ飛ばされた。
地面を転がりながらも、その顔は笑っていた。
「どうした...!もっと狙いを定めろ」
ティエラは連を煽る。
連はすかさずもう一発を発射した。
ティエラは全速力で後退し、ジャンプでかわす。
しかし、また同じように衝撃波の影響で吹っ飛ばされた。
(そうだ連。それでいい)
吹っ飛ばされ続けた結果、ティエラは荒野を抜け、森の中へと入っていた。
連も神速でティエラに追いつく。
その後、2人は森の中を駆け抜けながら攻防を繰り返した。
連が隙を狙って幻日を放ち、それをティエラが斬り裂く。
その繰り返しだ。
それによって、森のあちこちでは大爆発が起こっていた。
その後、森の奥深くまで来たその時だった。
ティエラが突然立ち止まる。
連は反応に後れ、少し体勢を崩した。
「連。お前はやはり『素人』だな」
「...なんだと?」
「分からないのか?お前は今、鳥かごの中なんだよ」
そう言うと、ティエラは“構えた”。
「全ては計算通り...こここそが、俺の“舞台装置(フィールド)”だ...!」
ティエラは不敵な笑みを浮かべ、“消えた”。
「!!」
連はすぐに幻日を棒状に錬成し、防御に入る。
次の瞬間、ティエラが目の前に迫る。
連はなんとかティエラの攻撃を防ぐ。
が、
なんと、ティエラはそのまま連を素通りしていった。
すると、次の瞬間、ドウンという音がどこかから響いた。
連はその音の源を見た。
それは木だった。
するとその数秒後、再び連の目の前にティエラが現れる。
タカの危機回避の力により、なんとか攻撃を防ぐ。
しかし、その後、再びティエラは連を素通りしていった。
すると、そのすぐ後にまた別の木から轟音が響いた。
その後、再び目の前にティエラが現れる。
このとき、危機回避が機能しなくなり始めた。
その後も同じように木から木を伝い、ティエラは何度も連に襲い掛かった。
そして、その速度は音速と似て非なるものにまで達し、その後、ついにティエラが背後から攻撃をまともに命中させてきた。
連は体勢を崩しながら、それをなんとか防ぐが、“それだけ”である。
激突の衝撃により、連は森の中を土煙とともに吹っ飛んだ。
その際に、いくつもの木が倒壊した。
連は片手で身体を支えながらなんとか立ち上がろうとする。
「まさか...!最初から...!?」
連は気づいた。
そう、あのとき、ティエラが連の幻日をあえてかわし、吹っ飛ばされていたのは、自身の『逃走経路』に連を誘導するためだったのだ。
「やっと『素人』のお前でも気づいたようだな」
土煙からティエラの声が聞こえてきた。
すこしずつ、ティエラの足音が近づいてくる。
それとともに、彼の姿もあらわになってきた。
「...!!」
「俺はな...大体初めからお前が気に入らなかった。なぜだかわかるか?」
「......」
「イライラするんだよ......もう一人の自分を見ているような気分だ...!」
そう言うと、ティエラは周辺の木を斬り倒した。
「...もう一人のオマエだと?」
「自分を演じ、いつしか本当の自分を失いつつある」
「...!!気づいていたのか...!?」
連は自分の“演技”を見透かされていたことに驚愕した。
しかし、ティエラが自分と同じであることは、連も分かってはいた。
「ああ、初めて会った瞬間からな」
「......」
「だからお前が気に食わん」
「...なに?」
「俺は、お前を葬ることで今の自分を否定する。お前を殺すことは、俺にとっては今最も意味がある」
「.........あいにくだが、オレも同じだ」
「さあ、立てよLiar(嘘つき)。今日がお前の“最後”の日だ」
「言ってろ、Faker(偽物)。消し飛ばしてやる」
こうして、死闘は佳境へと突入するのだった。