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第57話 「疾風」

「オマエも新たな力を手に入れたようだな」


連はもう一度幻日をくらわせようとするが、次の瞬間、ティエラをみるとすぐにそれを解除した。


そう、ティエラは、“構えていた”。


そして数秒後、ティエラは消えた。


「ッ...!いちかばちか...!」


連は“能力”で幻日を棒状にする。


ティエラは“ソレ”を見て、目をカッと開いた。


連の目の前で砂埃が立つ。


「!!」


今だ。


連は棒を自身の前に出した。


すると次の瞬間、ティエラの剣と連の棒がぶつかり合い、その衝撃で2人とも地面を滑った。


2人とも数秒沈黙を貫いてきたが、ティエラがそれを破る。


「ふざけるな...貴様...それは...」


「...?」


「それは......!俺の能力(チカラ)だッ!!!!」


ティエラは青筋を立て、物凄い剣幕で連に怒鳴りかかった。


それは、連をも圧倒するほどであった。


「......やはり貴様は許せん。殺す!」


ティエラは斬りかかる。


連は棒状の幻日を今度は刀の形にし、ティエラの斬撃を防いだ。


互いの刃が押し付けられ合う。


「どこまでも俺を愚弄するか...連!」


「残念だったな。というより、この能力は元々オリジンのものだ。もとよりオマエのものでは...ないッ!!」


連はティエラを弾き飛ばした。


その後、連が大地に拳を打ち付けた。


すると次の瞬間、大地が“うねり”を起こした。


「まさか...」


ティエラが動揺している間をうかがい、今度は連が斬りかかった。


「くっ...!」


ティエラはそれを防ぐ。


と、次の瞬間、ティエラは大きな衝撃とともに吹っ飛ばされた。


ティエラは自分を吹っ飛ばしたものの正体を目にする。


それは、巨大な岩の腕。


ユピテルの能力...カオス・ガイアだ。


(やはりそうか...!ユピテルの能力まで...!)


ただし、顕現している岩の腕は一本だけ。


ここでティエラは一つ仮説を立てる。


(“型落ち”している...?)


以前のソレイユの幻日も、たった一つずつしか出せないことを考えると、元の使用者ほど、能力を使いこなせないのが彼の能力の欠点のようだ。


次にティエラは即座に拳銃を取り出し、発砲する。


連はそれをタカの神速でかわした。


(...やはり、か)


ティエラは不敵な笑みを浮かべる。


「連、お前に一つ大失策があったことを伝えておこう」


「...何?」


「それは...」


ティエラがあるものを投げる。


手榴弾だ。


連はジャンプでかわすが、着地した次の瞬間、真横に現れたティエラがきりかかってきた。


連はそれをなんとか幻日の刀で防ぐ。


「バリアを奪えなかったことだ」


「!!」


次の瞬間、手榴弾が爆発を起こす。


土煙で周りが見えない。


と、そのときだった。


パァン!!


そんな音とともに、連の脚に激痛が生じた。


「ぐっ...!」


連は痛みに顔をゆがませながら跳び、土煙の空間から脱出する。


連は自身の脚が被弾したことを確認すると、陽の力でその傷を治そうとする。


すると...


「そうはさせんぞ」


ティエラは再び発砲する。


連は陽の力を解除し、それを神速でかわす。


(やはりそうか。コイツ...陰陽道と特殊能力は併用できない)


「ティエラ...オマエは遠距離から好き勝手するつもりなのだろうが、そうはさせん」


そう言うと、連は掌から幻日を顕現させる。


「来いよ」


ティエラは刃を連に向ける。


幻日が発射された。


ティエラは幻日をかわす。


しかし...


「ッ!!ここまでとは...!」


その衝撃波で大きく吹っ飛ばされた。


地面を転がりながらも、その顔は笑っていた。


「どうした...!もっと狙いを定めろ」


ティエラは連を煽る。


連はすかさずもう一発を発射した。


ティエラは全速力で後退し、ジャンプでかわす。


しかし、また同じように衝撃波の影響で吹っ飛ばされた。


(そうだ連。それでいい)


吹っ飛ばされ続けた結果、ティエラは荒野を抜け、森の中へと入っていた。


連も神速でティエラに追いつく。


その後、2人は森の中を駆け抜けながら攻防を繰り返した。


連が隙を狙って幻日を放ち、それをティエラが斬り裂く。


その繰り返しだ。


それによって、森のあちこちでは大爆発が起こっていた。


その後、森の奥深くまで来たその時だった。


ティエラが突然立ち止まる。


連は反応に後れ、少し体勢を崩した。


「連。お前はやはり『素人』だな」


「...なんだと?」


「分からないのか?お前は今、鳥かごの中なんだよ」


そう言うと、ティエラは“構えた”。


「全ては計算通り...こここそが、俺の“舞台装置(フィールド)”だ...!」


ティエラは不敵な笑みを浮かべ、“消えた”。


「!!」


連はすぐに幻日を棒状に錬成し、防御に入る。


次の瞬間、ティエラが目の前に迫る。


連はなんとかティエラの攻撃を防ぐ。


が、


なんと、ティエラはそのまま連を素通りしていった。


すると、次の瞬間、ドウンという音がどこかから響いた。


連はその音の源を見た。


それは木だった。


するとその数秒後、再び連の目の前にティエラが現れる。


タカの危機回避の力により、なんとか攻撃を防ぐ。


しかし、その後、再びティエラは連を素通りしていった。


すると、そのすぐ後にまた別の木から轟音が響いた。


その後、再び目の前にティエラが現れる。


このとき、危機回避が機能しなくなり始めた。


その後も同じように木から木を伝い、ティエラは何度も連に襲い掛かった。


そして、その速度は音速と似て非なるものにまで達し、その後、ついにティエラが背後から攻撃をまともに命中させてきた。


連は体勢を崩しながら、それをなんとか防ぐが、“それだけ”である。


激突の衝撃により、連は森の中を土煙とともに吹っ飛んだ。


その際に、いくつもの木が倒壊した。


連は片手で身体を支えながらなんとか立ち上がろうとする。


「まさか...!最初から...!?」


連は気づいた。


そう、あのとき、ティエラが連の幻日をあえてかわし、吹っ飛ばされていたのは、自身の『逃走経路』に連を誘導するためだったのだ。


「やっと『素人』のお前でも気づいたようだな」


土煙からティエラの声が聞こえてきた。


すこしずつ、ティエラの足音が近づいてくる。

それとともに、彼の姿もあらわになってきた。


「...!!」


「俺はな...大体初めからお前が気に入らなかった。なぜだかわかるか?」


「......」


「イライラするんだよ......もう一人の自分を見ているような気分だ...!」


そう言うと、ティエラは周辺の木を斬り倒した。


「...もう一人のオマエだと?」


「自分を演じ、いつしか本当の自分を失いつつある」


「...!!気づいていたのか...!?」


連は自分の“演技”を見透かされていたことに驚愕した。

しかし、ティエラが自分と同じであることは、連も分かってはいた。


「ああ、初めて会った瞬間からな」


「......」


「だからお前が気に食わん」


「...なに?」


「俺は、お前を葬ることで今の自分を否定する。お前を殺すことは、俺にとっては今最も意味がある」


「.........あいにくだが、オレも同じだ」


「さあ、立てよLiar(嘘つき)。今日がお前の“最後”の日だ」


「言ってろ、Faker(偽物)。消し飛ばしてやる」


こうして、死闘は佳境へと突入するのだった。

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