皆様、ごきげんよう。
♪(作者名)です。
なんとなく思いつきで、新連載を始めることにしました。
私は子どもの頃からゲーム好きでして、ゲームを買うために働いていると言っても過言ではありません。
そんな私がかつて遊んだゲームの中から、『当時は面白かったけど、今考えてみると相当クソゲーだな』と思えるものを毎回紹介していこうと思っております。
古いものでは1980年代からになりますので、最近の若い方は存じ上げないものばかりかもしれません。
ですが、『へえ、そんなやべえクソゲーがあったのか』と笑っていただけたら幸いです。
記念すべき第1回に取り上げるのは『デゼニランド』です。
このゲームは1983年にハドソンから発売されたパソコン用のアドベンチャーゲームです。
この当時のアドベンチャーゲームはコマンド入力方式が基本です。
しかも、何故か英語入力なので和英辞書片手にゲームをすることになります。
なんだか面倒くさい仕様ではあるのですが、『英語の勉強になるよ』と親にねだりやすくなるメリットもあったとか。
私の記憶が正しければ、最初に発売されたアドベンチャーゲームは『ミステリーハウス』という、屋敷に隠された財宝を探すという、今で言うところの脱出ゲームみたいなものでした。
ありがたいことに、マニュアル内に使用する英単語が全て載っているので、全部入力してみればクリアは可能でした。
『デゼニランド』の目的は『テーマパークのデゼニランド内に隠された三月磨臼(みつきまうす)を探し出す』というものです。やべえ。
今なら恐ろしくて、とてもゲーム化なんて出来ないような内容ですが、何と言っても当時は昭和。これくらいの権利侵害なんて日常茶飯事です。
まあでも、せいぜいタイトルくらいなんでしょ、中身はあまり関係なかったりするんでしょ?
そう思った貴方、昭和を舐めています。
用意されたアドラクションは、『インターナショナルバザール』、『瀬戸内海の海賊』、『ジャングルクローズ』、『ホラマンション』、『スペースリバー』、『梅下館』となかなか攻めております。
ちなみに当時のグラフィックスは、線を描いてその中を指定した色で塗りつぶすというものです。
この塗りつぶし時間が重たいため、機種によっては1枚あたり30秒ほどかかることもあったのです。これはこれで味がある絵なので個人的には好きです。
さて、このゲームですが、1万本売れたらヒットと言われていた時代に5万本売れています。
アドベンチャーゲーム界のパイオニア的存在なのですが、断言します。クソゲーです。
『ミステリーハウス』は使用する単語が示されていましたが、このゲームはノーヒントなのです。
MOVE とか LOOK みたいな簡単な単語ばかりなら良いのですが……。
当時あまりにも有名なシーンがあります。
『部屋の中央に棺桶が置かれていて、そこに十字の穴が空いています。そして、持ち物には十字架があります』という状況です。
となれば、やることは1つです。そう、『棺桶に十字架をはめる』ですね。
日本語なら簡単です。でも、英語のみの入力です。
SET かな、それとも INSERT? PUT? そんな感じで入力をするのですが、どういう訳か受け付けてくれません。
思いつく言葉を辞書でひき、全て入力してもダメで、毎日遅い時間まで友達とひたすら入力を続けていました。
この難関はとても有名で、雑誌の質問コーナーに頻繁に掲載されていました。
答えを直接載せる訳にはいかないということで、『Aで始まる単語』というヒントだけが出てきたのです。
※ 最後に答えを書きますが、皆様もAで始まる単語を考えてみてください。
棺桶とにらめっこすること3ヶ月、ついに解決する日が来ました。
私たちは学校が終わると集合し、皆で辞書片手に『Aで始まる単語』を順番に入力する作戦を採用しました。
一応、動詞だということは分かっているので、若干絞れるものの、それは膨大な量の単語でした。
コマンドが通った瞬間、全員で『やったああ』と大騒ぎです。
しかし、その直後、『いや、この単語はおかしいでしょ……3ヶ月返してくれよ……』と急に我に返った訳です。
青春の無駄遣いですね。ゲーマーなら一度は通る道です。はしかみたいなものでしょうか。
棺桶のシーン以外の難関ポイントは、中央に柱が不自然に立っている部屋があります。この部屋は単語が分からないというより、やることが分からない系ですね。
友達はみんな『?』って顔をしていましたが、私は一瞬で分かりました。
「POLISH PILLAR じゃね?」
「えっ、なんで?」
「ほら、『三月磨臼』って名前だからさ、どこかで『磨く』って単語を使うような気がするんだよ。もう終盤だし、使うとしたらここかなって」
「すげえ、全然気付かなかった……。えっと、POLISH PILLAR っと。おっ、なんか出てきた!」
ということで、無事に『三月磨臼』を入手し、三ヶ月ちょっとの戦いは終わったのでした。
そんな感じで、毎日イライラする時間泥棒な作品でした。
その後にハドソンが作成した『サラダの国のトマト姫』は日本語での入力が可能になりましたし、ファミコンでもアドベンチャーゲームができるようになると、選択式になってきたのです。
もしかしたら、『デゼニランド』が無ければ、『オホーツクに消ゆ』も『かまいたちの夜』も無かったのかもしれません。
そう思うと、なんだか誇らしい気分なのです。
最後に、『Aで始まる単語』を発表しましょう。『ATTACH』です。
『ATTACH CROSS』がそのシーンで使うコマンドでした。
さあ、みなさんご一緒に。
『分かるわけねえだろ!』