目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
クソゲーに愛を!
クソゲーに愛を!
onpu
文芸・その他雑文・エッセイ
2025年04月28日
公開日
2,228字
連載中
作者が実際にプレイしてきたクソゲーたちを、思い出とともに解説します。 クソゲー、それは青春の1ページであり、まさしく愛そのものなのです。

第1話 デゼニランド(1983年 ハドソン)

 皆様、ごきげんよう。

 ♪(作者名)です。

 なんとなく思いつきで、新連載を始めることにしました。


 私は子どもの頃からゲーム好きでして、ゲームを買うために働いていると言っても過言ではありません。

 そんな私がかつて遊んだゲームの中から、『当時は面白かったけど、今考えてみると相当クソゲーだな』と思えるものを毎回紹介していこうと思っております。

 古いものでは1980年代からになりますので、最近の若い方は存じ上げないものばかりかもしれません。

 ですが、『へえ、そんなやべえクソゲーがあったのか』と笑っていただけたら幸いです。



 記念すべき第1回に取り上げるのは『デゼニランド』です。

 このゲームは1983年にハドソンから発売されたパソコン用のアドベンチャーゲームです。


 この当時のアドベンチャーゲームはコマンド入力方式が基本です。

 しかも、何故か英語入力なので和英辞書片手にゲームをすることになります。

 なんだか面倒くさい仕様ではあるのですが、『英語の勉強になるよ』と親にねだりやすくなるメリットもあったとか。


 私の記憶が正しければ、最初に発売されたアドベンチャーゲームは『ミステリーハウス』という、屋敷に隠された財宝を探すという、今で言うところの脱出ゲームみたいなものでした。

 ありがたいことに、マニュアル内に使用する英単語が全て載っているので、全部入力してみればクリアは可能でした。



 『デゼニランド』の目的は『テーマパークのデゼニランド内に隠された三月磨臼(みつきまうす)を探し出す』というものです。やべえ。

 今なら恐ろしくて、とてもゲーム化なんて出来ないような内容ですが、何と言っても当時は昭和。これくらいの権利侵害なんて日常茶飯事です。


 まあでも、せいぜいタイトルくらいなんでしょ、中身はあまり関係なかったりするんでしょ?

 そう思った貴方、昭和を舐めています。

 用意されたアドラクションは、『インターナショナルバザール』、『瀬戸内海の海賊』、『ジャングルクローズ』、『ホラマンション』、『スペースリバー』、『梅下館』となかなか攻めております。


 ちなみに当時のグラフィックスは、線を描いてその中を指定した色で塗りつぶすというものです。

 この塗りつぶし時間が重たいため、機種によっては1枚あたり30秒ほどかかることもあったのです。これはこれで味がある絵なので個人的には好きです。



 さて、このゲームですが、1万本売れたらヒットと言われていた時代に5万本売れています。

 アドベンチャーゲーム界のパイオニア的存在なのですが、断言します。クソゲーです。


 『ミステリーハウス』は使用する単語が示されていましたが、このゲームはノーヒントなのです。

 MOVE とか LOOK みたいな簡単な単語ばかりなら良いのですが……。

 当時あまりにも有名なシーンがあります。


 『部屋の中央に棺桶が置かれていて、そこに十字の穴が空いています。そして、持ち物には十字架があります』という状況です。

 となれば、やることは1つです。そう、『棺桶に十字架をはめる』ですね。


 日本語なら簡単です。でも、英語のみの入力です。

 SET かな、それとも INSERT? PUT? そんな感じで入力をするのですが、どういう訳か受け付けてくれません。

 思いつく言葉を辞書でひき、全て入力してもダメで、毎日遅い時間まで友達とひたすら入力を続けていました。


 この難関はとても有名で、雑誌の質問コーナーに頻繁に掲載されていました。

 答えを直接載せる訳にはいかないということで、『Aで始まる単語』というヒントだけが出てきたのです。

 ※ 最後に答えを書きますが、皆様もAで始まる単語を考えてみてください。



 棺桶とにらめっこすること3ヶ月、ついに解決する日が来ました。

 私たちは学校が終わると集合し、皆で辞書片手に『Aで始まる単語』を順番に入力する作戦を採用しました。

 一応、動詞だということは分かっているので、若干絞れるものの、それは膨大な量の単語でした。


 コマンドが通った瞬間、全員で『やったああ』と大騒ぎです。

 しかし、その直後、『いや、この単語はおかしいでしょ……3ヶ月返してくれよ……』と急に我に返った訳です。

 青春の無駄遣いですね。ゲーマーなら一度は通る道です。はしかみたいなものでしょうか。



 棺桶のシーン以外の難関ポイントは、中央に柱が不自然に立っている部屋があります。この部屋は単語が分からないというより、やることが分からない系ですね。

 友達はみんな『?』って顔をしていましたが、私は一瞬で分かりました。


「POLISH PILLAR じゃね?」


「えっ、なんで?」


「ほら、『三月磨臼』って名前だからさ、どこかで『磨く』って単語を使うような気がするんだよ。もう終盤だし、使うとしたらここかなって」


「すげえ、全然気付かなかった……。えっと、POLISH PILLAR っと。おっ、なんか出てきた!」


 ということで、無事に『三月磨臼』を入手し、三ヶ月ちょっとの戦いは終わったのでした。

 そんな感じで、毎日イライラする時間泥棒な作品でした。


 その後にハドソンが作成した『サラダの国のトマト姫』は日本語での入力が可能になりましたし、ファミコンでもアドベンチャーゲームができるようになると、選択式になってきたのです。

 もしかしたら、『デゼニランド』が無ければ、『オホーツクに消ゆ』も『かまいたちの夜』も無かったのかもしれません。

 そう思うと、なんだか誇らしい気分なのです。



 最後に、『Aで始まる単語』を発表しましょう。『ATTACH』です。

 『ATTACH CROSS』がそのシーンで使うコマンドでした。


 さあ、みなさんご一緒に。

 『分かるわけねえだろ!』

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?