リックが最初に寄った所はいつも薪を売りに来ている街だった……これから薪を売りに来れないと伝えるためだ。
「リック! 昨日はどうしたんだ? 来ないから心配したぞ」
リックに話しかけてきたのは、いつも薪を買ってくれるおじさんだった。
おじさんは、いつも来ていたリックが昨日来ていなくて、心配していたらしい。
「昨日は色々あって……それと、ごめん……これから薪を売りに来れないんだ」
「そうなのか? なんでだい?」
リックはまさかアビィを助けたいから旅に出ようかなんて言えなくて、アルテッサにも言ったら大騒ぎになるだろうから、本当に信頼でいる方以外には口止めされていた。
優しいリックで良くしてくれるおじさんに本当のこと言おうかと思ったが、なぜか言わない方がいいと思い至った。
「……旅に出ようかと……」
「旅!? なんでだい?」
「自分探し? かな……」
おじさんは驚いた顔でリックを見る。
あのリックがなぁ……と感じでおじさんはリックを見る。
「だから昨日来れなかったのか?」
「まぁ……」
まさか、死ぬ一歩前まで痛め付けられ、聖域まで連れていかれ、まさかあの誰も中に入ったことない水の聖域に入り傷を癒し戻ってきたなんて言えるはずもなかった。
なぜか言わない方がいいと思ったのもあるが。
「自分探しか……そっかそっか寂しくなるな……まぁ頑張れよ!」
「あぁ、ありがとう……おじさん!行ってくるな」
「あぁ、行ってらっしゃい」
リックが次の人に挨拶するために、おじさんと別れる。
別れた後、おじさんがポツリと呟く。
「自分探しか……まぁこれからあのボウズから薪を買わなくて良くなったな」
そのおじさんの顔はリックが旅立つ寂しさよりリックから買っていた薪代が浮いて喜んでいる顔だった。
その頃リックは自分の薪を買ってくれた人達や街の人に挨拶周りをしていた。
小さな街だったので、すぐに挨拶周りが終わった。
リックは街の門の前へと来る。
「よし、地図も買ったし……行くか!」
リックは歩き出す。
まずはアルテッサの地図と買った地図を見ると、どうやら次の街らしい。
だが、距離はかなりある。
リックはまずそこの街へと行き、アルテッサ呪いで行けなかった情報がどんななのかと見るためだ。
暫く歩いていくと昼から出て街に挨拶周りもしていたせいが、すぐに辺りは暗くなり夜になってしまった。
「仕方ない……まだ距離はあるし野宿するか」
寝らされそうな場所を探し、丁度良さそうな場所があり、その辺に落ちてた枝や木を集め、木は小刀で割いて並べそこに火打石で火を付ける。
火が付き、とりあえず一息付く。
「……お腹空いたな、まずは腹ごしらえしないとな」
リックはリュックの中を見る。
干し肉とリンゴが2個。
その内の干し肉を取ると、木の枝に刺し、そのまま焼く。
パチパチと辺りに肉の焼ける匂いが漂っていく。
焼けると、リックはそのままかぶりつき、少しして食べ終える。
「後はリンゴ2つか……次の街に着いたらまずは食料買わないとな」
とりあえず腹ごしらえもし、魔物避けに火は付けっぱなしにしてリックはそのまま眠りに付く。