「なぁ、どうしたらアビィ達を助けられる?」
リックはそう言ってアンに尋ねる。
「分からない……でも、私も助けてあげたい」
アンはアビィが眠る水晶を優しく撫でる。
100年、ここを見守り守ってきた……けれどアビィは目覚める事はなく、ただ時間が過ぎていくだけだった。
助けたい……今水晶で生きてるかは分からないが、眠っているアビィと聖域を守っているアビィ……2人を解放して自由に生きてほしい。
アンはずっとそう考えていた。
その事をアンはリックに伝える。
「俺もそう思う……けど、アン、君も自由になって欲しい」
「……私も?……いいのかな……自由になっても」
「俺はアビィ達もアンも自由になって欲しい!」
リックは強く言うとアンは少し驚いていた。
「……あなたは不思議な人ね。そうね、私も自由になって色んな世界を知りたいわ」
「俺も知りたいな……色んな世界。そしてアビィ達にも知って欲しい」
「うん。そうね」
その時だった。
水が揺れ始め、出てきたのはリーンだった。
アンはリーンの姿を見ると駆け寄っていく。
「リーン!」
「やはり、リックは入れたんですね」
「うん。思った通りだった……リーンは怪我とかしてない?大丈夫?」
ペタペタとアンはリーンの体を触り、怪我がないか調べていく。
見る限り怪我はなさそうだが、アンは心配でリーンを見る。
「大丈夫です。怪我はありません」
「良かった……」
「ただ、破られたことがない結界が破られたとなると、また奴らが来るかも知れません……」
リーンはそう言うとアンは考える……この要の聖域を守るために張った結界……張った時から破られたことがない……なぜ今になって破られたのか分からない。
けれど、あの一族の事だ……1度破った結界をまた張っても破られるだろう……また結界を張ろうにもこの100年で力も弱まり、強い結界は張れない。
この聖域はまだ破られてはいないみたいだが、いつ破られるかは分からない。
どうしようかと考えていた。
「アン?」
リックが急に黙ってしまったアンを心配になり名前を呼ぶ。
「あ、ごめんなさい。結界どうしようかと思ってね」
「結界?また張る事は出来ないのか?」
「うん。私の力が100年かけて弱くなってしまって……一から張るとなるともう強い結界は無理なの」
少し悲しそうにアンは言う。
「そうなんだ……この要の聖域は結界大丈夫なのか?」
「それは分からない……今の所、破られてはいないみたいだけど……でもいつ破られるか……」
ここは要……破られたら……聖域がますますあの一族の思い通りになってしまう。
「もしここがあの襲ってきた人達に渡ったら……」
「えぇ、そうね……聖域は完全にあの一族の物になってしまう」
「なぁ、一族って言ってるけど、どんな一族なんだ?」
アンはそう聞くリックに今度は聖域を我がものとする一族について語り始めた。