ようやくお部屋に戻れました。
ちょっとお行儀悪いですけれど、少しだけこのままベッドに倒れ込んじゃいます。
本当に……、本当に色々あって疲れました。
今日はもうお腹いっぱい食べたら早く寝てしまいましょう。
そう言えばお昼も食べていませんね……って、わたくしったら!
カルベとデートのはずでしたのに!
いつのまにかカルベをほったらかしに……!
……カルベ、ごめんなさい。
また今度埋め合わせはしますから、どうかお許しになってね。
自己嫌悪でさらに疲れちゃいました。本当はもうこのまま寝ちゃいたいんですけど……ダメ!
せめてお洋服を着替えなければなりませんわね。
ベッドから勢いよく飛び起きると、ベッド脇に据えられた姿見におめかししたわたくしの姿がどうしたって映ります。
「……やっぱりわたくしには似合いませんわね」
自分の醜い姿にため息を一つ溢して、でも、それじゃいけないと気を持ち直してもう一度姿見に視線を遣って――
「……はぁ」
――ダメ。似合わない。
むき出しになったこの
こんなバルクたっぷり筋肉のわたくしに、こんな可愛らしいお洋服が似合うはずもありませんね。
さきほど小脇に抱えたレミさんのような……、あんな華奢な女の子にこそこういった服が似合うんでしょうね。
――けれどロンは。
こんなわたくしに逢いに来てくれたと言いました。
――けれどアレクは。
こんなわたくしを好きだと言ってくれました。
あんな綺麗で美しい男性たちが……、こんなわたくしに……
「……ふふっ」
あり得ませんわね。
あり得ない事で頬を染めるなんてバカらしい。
ロンがわたくしに逢いに来たと言ったのは、きっとわたくしの両親の死に責任を感じていたから。
アレクがわたくしに好きと言ったのは、きっとまだご自分の
あり得ない期待なんて……、いえ、あり得ない幻想なんて抱かない方が良い。
そう言えば、あり得ないと言えば先ほどのレミさんこそあり得ません。
ロンを一目見て鼻血を噴くのは、まぁ分からなくもありません。
あれほど美しい男性はそうはいませんから。
けれど……、けれど――!
あり得ませんわ!
あ、あんな――、一目見て求婚だなんて!!
わたくしなんて十年ですよ!?
十年もの間、あの人を想い続けて……、
しかも……、もう逢えることもない、逢えたところでどうなるものでもないと、そう諦めようと思い定めたのが魔王が討たれた昨年の
それからたったの半年でまた姿を見せるなんて!
……いえ、分かっています。
こんなわたくしがレミさんに
分かってはいるんです。
けれど……、けれど……。
……女神ファバリンさま、わたくしは一体どうすれば良いのでしょうか――