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55.5『エリザベータ・アイトーロル③』


 皆さま……エリザベータにございます。


 この様な姿でございますが、わたくしはこの、トロルの国アイトーロルの姫、エリザベータ・アイトーロルにございます。


 我々トロルにすれば美しくもない、この様な姿となりましたのは、全てわたくしの意思なのです。



 わたくしは十年前、ある事から人族が言うところの『美しい』を美しいと思うようになり、そしてわたくしの姿を醜いと思うようになってしまいました。


 トロルは皆、筋骨隆々の逞しい体を持っていますが、わたくしは、わたくしもである事を毛嫌いして生きてきました。


 何度となく自問自答を繰り返し、わたくしはトロルなのですからそれはおかしいと、何度も何度も言い聞かせましたが……


 ……ダメでした。


 わたくしは人族の娘の様な、華奢で可憐な姿に憧れることを、どうしてもめられませんでした。


 頭では分かっているのです。

 これは『異常』で『おかしい事』だと。


 けれど、わたくしの頭がどう理解しようと、どれほど恋焦がれようと、わたくしはトロル。


 叶うはずもない思いだったのです。




 長くなり申し訳ないですが、もう少し、お付き合いくださいませ。



 わたくしには今、想いを寄せる男性がいます。


 その方は元々のわたくしを好きだと仰ってくれましたが、わたくしはどうしても、元の姿でその方の隣に立つ事が許せませんでした。



 しかし今、現にわたくしの姿はこのように、トロルと人族を足したような不可思議なもの。


 方法は明かせませんが、とある姿を変えるすべを用いて、生憎あいにくと色々あって今の不思議な姿になったのですが、わたくしはこの不思議な姿を、悪くない──


 ──いえ、正直に申しまして、素敵だとさえ思っていますの。


 けれどその方は、わたくしの姿の方が好きだと仰います。

 だからわたくしは……だからこそわたくしは……『今のこの姿』のままで、その方と添い遂げたいと考えるのです!


 だから……姿を変えるすべを使えば、再び元の姿に戻れますが──わたくしは




 ……そ、その男性はその身を粉にして、この世界の平和の為に戦っておられます。


 わたくしも平和の為にその方と共に魔王討伐へ、なんてカッコ良く言えたら良いんですが……、正直に申します。

 わたくしがその方と一緒にいたいが為に、勇者認定が欲しいのです。



 わたくしの我が儘なのは分かっています。

 けれど……どうかわたくしに勇者認定を与えて下さいませ!



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