昔々あるところに、悪い魔王がいました。
魔王は、みんなに嫌われていました。
魔王は、たくさんの人を殺しました。
魔王は、一人ぼっちでした。
ある日、魔王は一人の白い少女に出会いました。
白い少女は、魔王に問いました。
「どうして、悪いことをするのが、そんなにも下手なの?わたしは少ししか生きれないけれど、あなたよりももっとたくさん悪いことが出来る」
魔王は、不思議に思いました。
魔王は、笑いました。
それから、白い少女に魔王は、自身の名を教えました。
魔王と白い少女は、とても仲良くなり。いつも、ふたりでいました。
いつか、二人でいることが当たり前になった頃。
魔王は、悪魔に出会いました。
悪魔は魔王に、呪いをかけました。
消して解けることの無い、深い呪いです。
魔王は毎日、悪魔と会う約束をしました。
それから、魔王と白い少女と悪魔は、たくさんの友達を作りました。
〇
それから、月日が過ぎて。
魔王は、神様を怒らせてしまいました。
神様は、魔王に言いました。
「どちらかを選べ」と、神様は魔王を苦しませる、その最良の方法を知っていました。
悪魔と白い少女。
どちらかを選ばないと、いけません。
少女は言いました。
「私はもう長くは生きれない、だからアグを選ぶべき」と。
悪魔は言いました。
「お前のことが好きさ、だからお前がどちらを選んでも、それは正しいのだろう」と。
魔王には、選ぶことは出来ませんでした。
けれど、魔王が選ばなければ。神様はきっと、全てを壊してしまうでしょう。
それは魔王自身も、友達も、白い少女も、悪魔も。
魔王は、選びました。
白い少女を。
けれどそれは、白い少女が、特別だからです。
白い少女は、たとえ死んでも魂は決して消えない。不死身の出来損ないだったからです。
必ず、またどこかで会おうと。約束を交わして。
白い少女は、神様に殺されてしまいました。
〇
魔王は、それから沢山の人を殺しました。
白い少女を、探しながら、何年も何年も、
そして、ようやく、白い少女を見つけました。
魔王は、笑って、けれど、涙を流して。
白い少女を、抱きしめようと、好きと伝えようと。
けれど、白い少女は。
約束を、忘れてしまっていたのです。
ひとつの魂では、ひとつの人生しか生きられません。
白い少女は、もう、魔王のことは覚えていませんでした。
それどころか、白い少女は、大切な家族を殺した
少女は、刃を握り、魔王を、大切な家族を殺した、魔王を。
殺そうとしました。
魔王は、抵抗しませんでした。
魔王は、後悔しました。
魔王は、少女に殺されるのならそれでいいと、そう思っていました。
けれど、少女は。白い少女は。憎いはずなのに、殺したいはずなのに。
少女には、魔王を殺すことが出来ませんでした。
少女は、諦めて。
自らの、心臓に刃を刺して。家族の元へ行こうと、しました。
けれど、白い少女の魂は。家族の元へ行くことを、許されませんでした。
魔王はまたとても後悔し、少女の亡骸を手にいつまでも泣き続けました。
それから魔王は、魔王をやめる決意をしました。
いつか、白い少女に会えることを夢に見て。