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第45話 『先へ』

「それで、志東さんの話は?」

「ドレダケアイツノ事ガ知リタインダヨ、惚レタノカ?」

「それは、ありえませんね」


 本気で心外だった。

 螺旋状の階段は、未だ続いている。


「ソウダナ、ソモソモ奴ノ年齢モワカラン」

「魔学の授業を受けて、それが中学校って言ってましたねそういえば、ということは…」

「ソレモ信用ニナルカドウカ」


 吊るされているランタンの、頻度が少なくなってきて。暗闇が徐々に侵食し始めた。

 暗い所は苦手だ、不安な気持ちになる。梟さんがそばにいるなら別だけど。


「奴ハ、二年前ノ雪国デノ抗争デ、親友ヲ一人失ッテイタナ」

「親友?」

「魔王ノ、タシカ最恐ダッタハズダ、魔王仲間ッテイウヤツカ」

「サイキョウ、ですか」


 魔王の最強、最強の魔王のことかな。

 そう自己解釈して、自己完結した。


「2年前の、冬…」

「ソウダ、マスクヲチャントツケテオケヨ」

「あ、忘れてました」


 思い出してカバンから取りだし、慌ててマスクをつけ直した。呼吸がしにくいから、取っていたのだ。

 直結式小型タクティカルガスマスク。

 名前が長い、けどなかなかにカッコイイ。


「似合ってます?」

「イインジャナイカ」

「どうもどうも」


 褒められて、悪い気にはならない。

 ガスマスクが似合うって、一体全体どういうことなんだろう。

 少し、師匠に似てるのかも。


「木菜」

「……はい」


 少し錆びた重い鉄製の扉が、ランタンに照らされて鎮座していた。

 静かだ。

 空気も重く沈んでいる。


「行クゾ」

「はい」

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