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雲の上の音楽家
雲の上の音楽家
菊池まりな
文芸・その他童話
2025年04月30日
公開日
954字
完結済
むかしむかし、ある小さな村がありました。その村には、音楽が好きな少年、カケルが住んでいました。カケルは毎日、自分の古いリコーダーを吹きながら、村の川辺や森の中で友達と遊びました。しかし、彼の夢は、空に浮かぶ雲の上で素晴らしい音楽を奏でることでした。

第1話

 むかしむかし、ある小さな村がありました。その村には、音楽が好きな少年、カケルが住んでいました。カケルは毎日、自分の古いリコーダーを吹きながら、村の川辺や森の中で友達と遊びました。しかし、彼の夢は、空に浮かぶ雲の上で素晴らしい音楽を奏でることでした。


ある日、カケルは川のほとりで不思議な老猫に出会いました。その猫は、ふわふわの白い毛を持ち、目は深い青色で輝いていました。「君の音楽は素晴らしいね。でも、もっと高い場所で演奏してみたいなら、私をついておいで」と老猫は言いました。


カケルは驚きましたが、興味を持って猫について行くことにしました。猫は彼を山の頂に導き、そこからは、雲が手の届くところに浮かんでいました。

「さあ、雲に飛び乗ってごらん」

と猫は促しました。


カケルはドキドキしながら、跳びかかりました。すると、彼は驚くべきことに、雲の上に着地しました。雲の上には、色とりどりの楽器を持った動物たちが集まっており、音楽を奏でていました。ウサギがバイオリンを弾き、リスがドラム、そしてフクロウが歌を歌っていました。


カケルはその場の雰囲気に心を奪われ、仲間になりました。彼のリコーダーの音色は、雲の上の仲間たちに響き渡り、みんなで美しいメロディを奏でました。カケルは、高く高く響く音楽の中で、幸せに満たされました。


しかし、夕暮れ時になり、カケルは村に帰らなければならないことを思い出しました。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいました。

「またここに来る?」

と、リスが尋ねました。カケルは大きく頷きました。

「必ず戻ってくるよ!」


カケルは老猫に感謝し、雲から飛び降りて村に戻りました。それ以来、彼は毎日リコーダーを吹きながら、雲にいる仲間たちのことを思い出しました。そして、彼の音楽は村中に広がり、村の人たちも音楽を愛するようになりました。


カケルの夢は、村の人たちに音楽の楽しさを伝えることでしたが、彼には一つの特別な秘密がありました。雲の上の仲間たちとの友情と、それぞれの楽器から生まれる素晴らしい音楽のことを、心の中で大切に育て続けました。


村は音楽に満ち溢れ、カケルはいつかまた雲の上で音楽を奏でることを夢見て、今日も元気にリコーダーを吹き続けていました。そして、空にはいつも、彼を見守る雲たちが漂っていました。


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