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興味を抱く国王

 俺の前にこの世界に転移して王族に仕えていた日本人は、この世界での役割を果たしたとして、元の世界に戻って行った事から、多分俺も何かしらの条件を満たす事で元の世界に戻れると推測されるがその条件が何かは分からないが、習得したスキルを見るに多分リハビリに関する事だと思う。


 ゴルさんが王様に進言してくれた療養施設の建設にはまだ開発用地の確保の問題がある為、簡単には返事をしてくれないが、真剣に考えてくれることは伝わってきた。


「療養施設の件はひとまず保留にはしておくが、バートンには余から直接命じておく」

「ありがとうございます」

「コーロでの療養施設での効果が期待できればやがては、他地方で教会のない地域や街にも建設のお触れを出せればとは考えておる」

「もう、そこまで考えているんですか⁉正直自分は1つ1つ考えるのが精一杯で……」


 まさかもう、この先の事まで見据えているなんてなんてな、そのすごさに俺が感心していると王様は俺に自分の考えを話してくれた。


「ユーイチ・ミヤシタよ、あのザリアンの弟子であるゴルがじかにそなたがこのコーロ地方のキッコの街に住む者の暮らしをより良きものしている話は聞いておる」

「王様……」

「王たるものは民の暮らしをより良くする責務があるのだ。この地域で効果があった事を国中に拡げる事は当然の事だ」


 まだ若いのに王たる資質をしっかりと備えているな、教育もあるかもしれないが、この人は信頼できる筋からの情報とはいえ、得体のしれない、それも異世界人とふんでいた俺との直接対話を望んだのも民の暮らしをより良くする為の手段と考えていたわけだな。


「しかし、ザリアンですらたどり着けぬ領域のリハビリとやらにこれほど精通しているとは、少しそなたの世界の話が聞きたいな」

「え、リハビリの教本を読んだんじゃないんですか?」

「本を1冊読んだだけで理解した気になるほど、余は愚かではないぞ、そのリハビリとやらを元の世界ではどのようにやっていたか聞かせてはくれぬか?」

「そうですね、それじゃあまずは……」


 俺は自分が元の世界では理学療法士というリハビリ専門の職業に就いていた話をして、病院ではいろんな職種が細分化してリハビリに関わる事を話すと、王様はいたく感心していた。


「ほほう、そなたはスキル1つで後遺症を取り除いたり大きく緩和しているようだが、中々に手間もかかっているようだな」

「ですが、それぞれに専門家がいますし、情報の共有さえ上手くやればスムーズにいきやすいですよ」


 まだ王様はこの病院のシステムについて聞いてくるので俺はまだ説明を続けた。

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