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【タイトル】 SPは24歳、女子高生始めました。
【タイトル】 SPは24歳、女子高生始めました。
ゆる
現実世界青春学園
2025年05月01日
公開日
1.9万字
連載中
24歳、セーラー服で潜入任務中――!? 民間警備会社《セキュリティ・アテナ》所属のSP、服部倉子と真田真子。 次なる任務は、名門お嬢様学校に通う令嬢・久遠澪のボディガード。 だがその方法がまさかの「同級生として潜入して護衛せよ」という無茶ぶりで―― 「無理があるって自覚してるの!?」 「え、セーラー服? ブルマ!? 聞いてない!!」 年齢ギリギリ、体力ギリギリ、羞恥心マシマシで贈る、 ちょっと過酷で、かなり笑える“女子高生SP”潜入コメディ!

第1話 入学初日、コスプレじゃないです


「第一章:転入初日、いきなり波乱




 ――制服を見た瞬間、私は静かに絶望した。




「ちょっと待って、これ……ブレザーじゃなくてセーラー服なの?」


「うんっ! 可愛いでしょ? あたし、テンション上がってます!」


 元気よく返してくるのは、私の相棒・真田真子。

 同じく民間警備会社セキュリティ・アテナ所属、年齢は私と同じ24歳。


 だが見た目は正反対。彼女は小柄で童顔、制服が完璧に似合っている。ツインテールまで揃えて、本人もノリノリだ。


 一方の私は――服部倉子、24歳。長身、落ち着いた顔立ち、言うなれば大人の色気が出始めてる系。




「いや、無理あるでしょこれ。誰がどう見てもコスプレよ」


「先輩、言い過ぎっスよ~。むしろ似合ってますって! 昭和の女学生って感じで!」


「……褒めてるの? それ」




 私は鏡の前で、セーラー襟のリボンを結び直しながら、深くため息をついた。




「ねえ、これってさ、もし道ですれ違った人に『AVの撮影ですか?』って言われたら、私はどう返せばいいの?」


「……“殺されたいのかしら”って睨めば黙ると思います」


「それ、自分の命で保証してくれる?」


「うわ、ごめんなさいっ!」




 任務は今日から。護衛対象は氷室財閥の一人娘・氷室澪、16歳。


 数件の不可解な事故が彼女の周囲で起こり、父親が極秘で私たちを学校に送り込んだ。

 澪と同じクラスに転入し、自然なふりをして護衛を行う。つまり――制服姿で、女子高生として振る舞わなければならない。




(……本当にやるの、これ)




* * *




 始業式の朝。


 校門をくぐると、視線が一斉にこちらに向けられた。

 そして、その視線が明らかに私と真子で温度差があるのを、私は痛いほど感じる。




「あの子、かわいくね? 転校生?」


「その隣……え? あれも生徒? いや、どう見ても先生じゃ……」


「え、保健室の先生が制服着て遊びに来たとか?」


「うわ、それAVで見たことあるやつだわ」




 殺気混じりの視線を向けると、男子たちは一斉にそっぽを向いた。




「おはようございます、先輩っ!」


 明るい声とともに、真子がぴょこぴょこと隣に並ぶ。




「だから“先輩”って言うな。今日からは同級生でしょ」


「でも心の中ではずっと先輩っスよ?」


「……“先輩”って口に出してる時点でアウトなのよ」




 制服のスカートをそっと引っ張り下げながら、私は覚悟を決めた。




(いざ、地獄の転入日)




* * *




 ホームルーム。


 私たちが教室に入ると、空気がピタリと止まった。




(予想通りね……)




 注目の視線が集まる。ざわざわという小声が飛び交い、担任の水無瀬先生(21歳・社会人1年目)は緊張で声が裏返っていた。




「えーっと、新しい仲間が二人、転入してきました! ……自己紹介、お願いしますっ」




 私は前に出て、無駄に注目を浴びながら簡潔に頭を下げる。




「服部倉子です。よろしくお願いします」




 一拍の沈黙の後――




「……おばさんじゃん」




 唐突に教室の空気が張り詰めた。




「……まだ24よ!」




 思わず口を突いて出た言葉。

 その瞬間、クラスがざわざわと騒がしくなる。




「マジで24?」

「えっ、やばくね?」

「いやいや、それもうおばさんじゃん」




 どこからともなくため息が漏れ、クスクスと笑いも起こる。




「ま、待ってください!」

 水無瀬先生が慌てて割って入った。




「服部さんは……あの、病弱で、15歳から9年間休学していたんです!」




「……え、じゃあ本来は同い年だったんだ?」


「でも9年ってすごくね? 社会出てるやん」


「もはや“人生の先輩”で草」




 私は笑顔ひとつ見せず、静かに席へ戻る。




「うーん、ちょっと“年齢”は言わない方がよかったかもっスね~」


 真子が隣でこっそり囁いてくる。




「……だから学校で“先輩”言うなって言ったのよ」


「でも先輩、怖い顔してても美人だからセーフっス!」


「褒めてるのか煽ってるのか、どっち?」




 騒ぎの中、席に挟まれているのが――


 護衛対象、氷室澪(16歳)。


 完璧な姿勢、美しい顔立ち、控えめな目線。それなのに、表情だけがぎこちない笑顔を貼り付けている。




(どうしましょうこの状況)




 彼女の心の中の声が、全力で叫んでいた。




(誰か大声でツッコんでよっ!! 年齢的に無理ありすぎでしょ!)




 こうして、“女子高生に見えない二人”による潜入護衛生活が、波乱の幕開けを迎えたのだった。






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