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カタラレヌ・クロニクル
カタラレヌ・クロニクル
河鹿虫圭
現代ファンタジー異能バトル
2025年05月01日
公開日
21.2万字
連載中
【神使の鉄則】 神、魔族、天使、妖怪・・・総ては人間創り出す『〇〇』である。 その『〇〇』を修正するのが、『我々』である。 1、『〇〇』は、無慈悲で残酷である。故に、『〇〇』を見つけ次第早急に『』に送るべし。 1、『我々』は、『△△』であり、それ以上でも以下でもない。 1、『我々』は、人間とのかかわりを持ってはならない。が、その世界の主人公は必ず、助けるべし。 1、『〇〇』を『』へ送れる制限時間は最大で10年までとする。それを過ぎることあれば、直ちに抹消もとい、概念破壊を実行すべし。 1、『我々』とかかわった人間の記憶は主人公においても消さなければならない。 破ノ章 魂の花 輪廻転生の仕組み 人が現世で死ぬ→魂の持ち主と魂に分離→持ち主は天国か地獄の判決を受けてそれぞれの場所へ→魂は神界へ転送して持ち主の記憶と知識を洗浄→魂の再形成→保管。 ※現世に前世の記憶が残った人間がたまに出るのは洗浄作業の際にキレイに洗浄できずに魂が使用されたため。前世の記憶が残った人間が出るとその日の管理係にペナルティが与えられる。 ※歴史的な偉人などはリストに載っているため洗浄や再形成などは行わない。 ロキの悪戯により、偉人の記憶を保存している五輪の魂の花が現世に落とされてしまった。 「今回はこちらのミスだからね。各世界の主人公の英霊貸すから花の破棄ヨロ」 神の指令により修正係 布田 龍兎と抹消係 無田皆無の二人は召喚された五人とともに魂の花を破棄するために再び現世へ降り立った。 カタラレヌ・クロニクル 破ノ章 魂の花編。始動! 急ノ章 終末論 突如現れたもう一人の|無田《むでん》 |皆無《かいむ》。万能の花を手にした彼は言い放つ。 「今より、|終末論《エスカトロジー》を始める。」 そして始まる”世界の終焉の歪み”|終末論《エスカトロジー》。歪みが溢れかえり無数の世界が終わりを迎えようとしている。 神使の二人は過去と向き合いながら終焉を食い止めるために立ち上がる。 カタラレヌ・クロニクル 急ノ章 |終末論《エスカトロジー》編 あなたは今、終わりの始まりを目の当たりにする──────。

空白

『神』とは、傍観者である。


幾度の生と死を経験し、悟りを開いた訳でもなく左目を代償に魔術知識を手に入れたわけでもなく・・・

人間が、「これを望むので、無償で叶えてください。」と天に願ったその時に生まれた都合の良い存在。

それが、『わたし』である。挙句の果てにわたしは乗り越えられる試練しか与えていないそうだ。



        理不尽だ



生み出しておいて、無償で欲望を叶えろ?都合が悪くなったら直ぐにわたしのせいにするくせに?


総ておいて、都合のいい存在。それが、神である。


私は総てにおいて、傍観しかしていない。歴史過ち神話噓っぱちも見てきた。


『空白』のこの場にも人間が追いやったのだ。

ここは何もない場所だ。強いて言えば、ありとあらゆる人間の主観、感覚が見れ、感じ取れる。


破綻、恋愛、営み、怒り、憎悪、喜び、日常etc.・・・


気分が悪くなる。


吐き気を催す程に。


だが、それももう慣れた。


怒りは諦めへ、涙は枯れて、喜びは無関心へ、楽しみは無気力へ。


この現実を痛いほどに受け入れてた。


扉の開く音を聞き、光が差す方へと視線を移す。入ってきたのは、ボロボロの七分丈の白い服に黒い長ズボンを身にまとう、くすんだ赤い瞳の白髪の少年と前部分全開の黒いトレンチコートの中に白いタートルネックを着た青い瞳の黒髪の青年の二名だ。

白髪の少年が私の顔を見るなり、口から毒を吐く。


「考え事か?顔が不細工だぞ。」


この子の毒舌これは今に始まったことではないが、それでも何というかため息が出てくる。


「はぁ、君は上司に向かってそんな口をよく聞けるね。」


「こいつのこれは今に始まったことじゃないでしょう。」


黒髪の青年は親指で雑に少年の方向を指す。少年はそれが気に食わなかったのか少しばかり乱暴に青年の手を振り払う。


「うるせ、それよりも今回はなんだ?また、内輪揉めならやめろよ?」


「そんなことじゃないから難しい顔をしていたんだろ。考えろ阿呆。」


「はぁ?」


「んん?」


また、始まった。この二人は顔を合わせるといつもこうだ…だが私は神なので、決して怒ったりしない。

二人をまじまじと見つめ、終わるのを待つ。遮ったり、口をはさんだとしても二人に巻き込まれるだけだからだ。

二人は違和感に私の方を見つめる。


「喧嘩は終わったかい?」


「「は、い」」


改まった表情を見るに二人は私が怒ったと勘違いしているのだろう。

なら、都合がいい。それよりも…………


「さて、話すのが遅くなって済まない。本題だが、憤怒、嫉妬、色欲、暴食、怠惰、傲慢の計6概念を司る魂が現世に降り立ってしまったようだ。これら、七大罪概念に該当する魂は中心にて欲を満たすだろう。」


黒髪の青年が挙手し、質問してきた。


「強欲は?」


「奇跡的に強欲は出ていないが、恐らく現世で強欲に該当する人間か魔族が何らかの手段でこの六魂を呼び出したのだろう。他には?」


「該当する魂の詳細は?」


「色欲 クスィ=アロンナ、嫉妬 スラウ=システィーナ、暴食 グラン=グラトニーグラトニー、怠惰 ベルフェゴル、憤怒 ガー=フラムフェルズ、傲慢 ルシファーだね。」


「おい、約二魂原初の悪魔と堕天使いるんだが?」


「すごいね、召喚した人はかなりの恩恵を受けているだろうね。」


二人からの質問が途絶えると改めて指示を出す。


「六つの魂で計60年以内だね。では、【修正係フィックス布田 龍兎ふた りゅうと。【抹消係イレイザー無田 皆無むでん かいむ。双方は求年以内に魂を獄門へ送り返すこと。」


「わかりました。無田 皆無むでん かいむ、使命を全うします。」


黒髪の青年はトレンチコートを音を立てて翻す。その姿はあっという間に消え少年と神だけの空間になった。


「はぁ・・・布田 龍兎ふた りゅうとがんがります。」


扉に向かって白髪の少年は歩き出す。


「あぁ、二人とも頑張って・・・」


私はそんな背中を見送りつつ、先の未来を見通す。


この物語は決して歴史でも、神話でも語られることのない物語である。

そして、二人の咎人の贖罪の物語でもある。


カタラレヌ・クロニクル 序

零;空白 

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