シンボルが「神代山」という大きな山という以外に何の特徴もない町。
以前は、凄腕の猟師さんなんかが多くて一時期話題にもなったが、それはそれで迷惑にもなった。
シンボルの「神代山」は「式守家」という人たちが管理していて今でも一般人は山の中にすら入れてもらえない
そして、そんな式守家に生まれたのが、私、優菜である。祖父の
山の警備活動をしている。父曰く、おじいちゃんは本当は男の子が欲しかったそうなんだけど、
私が初孫なのもあってか今は、何も言われていないそうだ。
山の警備のため、学校には通っているものの、おじいちゃんの歳が歳なので、時々学校を休んでいる。
そのせいで、私はクラスから少々…いや、だいぶ浮いた存在になっている。
別に、浮いているのが嫌とかそんなことは気にしたことはないけど、友達は作りたい・・・と思っている。
思っているのだが・・・
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6/6(金)夕方6時──神代山。
私は、明日が休みなのもあり、一日中山の警備をするべく、学校を休んだ。学校を休むのは大体金曜日が多い。おじいちゃんもそれを承諾してくれている。もちろん毎週休んだら周りもよくは思ってくれないはずなので、学校自体はあんまり休まないようにしている。
山の警備はどんなことをしているのかというと・・・その前に、「神代山」がどうして「一般人がはいれない山になっているか」から説明しようと思う。
神代山は簡単に言えば「聖域」「禁足地」というものに分類されている。
その昔、
そして、死にゆく前に桃源が残した言葉が『あの山には神が宿っている。誰にもおかされてはならぬ。更生に語りつがれる山ぞ。必ず、未来永劫、守ってくれ。』と言われたのが、私たちのご先祖様らしい。
ところが、テレビでこの町が特集されたとき、いわゆる「バズりたい」人たちのせいで、ごみ問題が出てきた。そもそも、入ってはいけない場所だと言っているのになぜ来るのかが理解できなかった。
今でも一般人がはいろうとするので山の中腹付近にある見張り矢倉から注意喚起をしている。
そもそも、整備されてない山なので道などない。
夕日がだんだんと沈むにつれ街灯がつき始める。ビルの多いところになるにつれ、美しい夜景が現れていった
そんな中、山の中に黄色い光がぽつんと一つ。昼間もずっと監視していたはずなのにあれはきっとテントの明かりだろう。放送すれば、町中に響き渡り迷惑にもなるので、私は矢倉を降り、さらに山を下る。
黄色い明りがだんだんと近くなっていき、虫の鳴き声と同時にテントからも音が聞こえる。女の人の喘ぎ声?のようなものが聞こえてくる。生々しい。というか、キャンプに来てまでヤるとは・・・世の中いろんな人がいたものだ。私は恐る恐るテントの入り口をめくる。
生臭いむせ返るような臭い。熱気が頬を撫で、身体全体の力が一瞬だけ緩む。眼前の光景で緩んだ力は一気に元に戻り、すぐさま臨戦態勢に入る。
床に転がる男性。ヤることをヤろうとしていたのか、上半身が裸である。だが、様子がおかしい。人の肌というのは、ふつうふっくらとしているものだ。肌の色は違えど皆みずみずしいはずだが、倒れている男性はまるで魚の干物のような状態で、泡を吹きながら仰向けに倒れている。眼球からも水分が抜けているようで、植物の種のようにになっている。そして、男性は一人ではなく三人。同じような状態で全く息をしているようには見えなかった。
「・・・っ!」
こちらに気づいた女性は、ニコリと微笑み歩みを進めてくる。女である私はその引き寄せられるような表情、しぐさに恋心とは別の感情に襲われる。
「あら♡意外と堕ちるのが早そうね♡私ってば、女の子もイケちゃうのよね♡」
完全に力が緩み、腕をだらりと下へ降ろしてしまう。吸い込まれそうな目をずっと見つめながら、次第に近づく顔に唇を尖らせる。相手の手は胸と股ぐらに入ってくる。心地のいい感覚に包まれ飲み込まれそうになったその時・・・
「俺とも遊んでよ。」
私の真後ろ、そこから男の声が聞こえた。それと同時に不思議な感覚から覚め、我に返る。後ろを振り向く瞬間、何か長い塊が私の頬を綺麗に通り過ぎた。その横を通り過ぎる感覚、風圧と共に、肉と骨のつぶれる音が聞こえた。再び女性の方を振り向くと、女性の顔面に映画やアニメなんかで見る西洋風の刀剣が刺さっているのが見えた。返り血と共にテントの中は赤く染まる。いまだ止まるのを知らない鮮血は私の頬へと跳ねる。
「・・・えっ?」
人間驚いたらホントにそんなリアクションしかできないんだなと分かった。しりもちをつきその場にへたり込んでいると、刀剣を投げたであろうメカクレの白髪の20代前半もしくはもう少し若い青年が歩いてきた。
「大丈夫か?」
こちらにしゃがみこんできて顔を見る。
「あ、あれ・・・」
「あれは、今気にしなくてもいい。死にたくても死ねねぇから、それよりも怪我はねぇか?」
「は、はい大丈夫です。」
それならよかった。と青年はテントの中へ入っていき剣と抜き取る。さっきよりも、グロイことになるのかと思っていたら、鮮血はだんだんと茶色になっていき次第にテントのなかは泥臭くなっていくのがわかった。
「また、外れか・・・」
青年は、死体?を確認してそんなことを言う。そして、干からびた男性三人を綺麗に寝かせて再びこちらへと向かって歩く。手を伸ばしてもらい立ったはいいものの、何を聞いていいかわからず、ただボウと立っている自分がいた。
「ん?もしかして、枯れ専?好きに使っていいと思うけど病気とかやばそうじゃね?」
「枯れ専ってそういう意味じゃないと思いますけど!」
「お、よかった。意識はあったみたいだな。」
「あなた、一体なにものなんですか?」
「いい質問だ。式守 優菜さん。俺はね、神様の使い、
これの挨拶を皮切りに私の長いようで短い一日が始まった。
色欲の章 土傀儡