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世界を世界たらしめるのは……

世界の存在、概念、基準、その他etc.……。それを確定、確立させるのは、いつでもどこでも世界が選んだ主人公である。


────────────


黒い球体はその殺気に気付くとすぐに警戒する。そして、その殺気が自分に向けられていないと気付くと、その殺気の方向へと向かい始める。距離にして約10㎞。殺気は二つあることを理解するとそのままその殺気を喰らおうと捕食モードへと移る。木々と地面を抉り、食らいながら進むと数分で二つの殺気は消え、こちらへと矛先が向いた。


『来る。』


球体の確信と自信に満ちたその判断は見事的中する。視線の先にはコートの青年と一瞬男と見まがうほどの少女が並んでいる。魂の臭いと形で青年がこの世界の人間ではなく、自分を追ってきている神の使いだと瞬時に理解する。


「神の使い……」


「……どうやら、顔は割れているようだな。」


「魂の形だ。お前の魂の形……この世界ではなく、また別の世界の魂の形をしている。」


恐らく指を差しているであろう球体の口調だが、姿がうまく見えないのでどこを見て、どこを指さしているか分からない。


そのため、いくらでも奇襲できる。


話を終えると球体は、無田へいきなり突進攻撃を仕掛ける。無田はその速さをギリギリ目でとらえ、四夜華をかばいながら避ける。その際、コートの端が球体へと吸い込まれてしまう巻き添えを避けるため、コートをそのまま脱ぎ捨てる。


「惜しかったな……神の使いの肉はどんな味か喰えるかと思ったんだが。」


「こいつ…異常な魔力量だ。」


四夜華は球体の異常な魔力量に驚愕している。纏っている黒い靄もそうだが、その内側に巡る魔力量は人間に換算すると、約1万人分。術式と魔力の使い方を知っていれば大魔導師が何人束になって鳴かろうと勝てない強さを誇るだろう。


「大丈夫か。四夜華。」


四夜華は静かに頷くと無田の横に並び球体の様子を見る。が、球体はすでに二人が避けられないほどの距離におり、ターゲットになっているのはもちろん無田である。

無田は自分が標的になっているのを理解した上で即刻で実力行使に出ることを決め、能力を使用する。

抹消無効ゼロ


抹消無効ゼロ。異能的なもの、者、物の効果、効能を無効化する能力。しかしながら、制約を神と結んでいるため一部、数分しか持たない。

抹消無効ゼロを受けた球体の黒い靄は飛散し、球体の中からはトカゲの怪人が出てきた。やせ細った身体をさすると、トカゲ怪人は細い頬を怒りで吊り上げ、二入を睨む。

その殺気が二人を包み込んだが、そんな中一番先に動いたのは四夜華であった。


鉄糸式魔法術てっししきまほうじゅつジャグリングショット!!」


赤、青、黄色、緑、紫、橙、白。の七色の火の玉を出し、そのままトカゲ怪人へと狙いを定めて射撃する。七色の火炎弾はトカゲ怪人へ向かうが、怪人はそのことごとくを避けると、四夜華の首を掴む。


「ぐっ……!」


「余計な事をしないでくれ。ワタシが喰らいたいのは神の使いただ一人。」


「俺が狙いならば、その手を放せ。」


怪人の頬に無田の拳がめり込む。トカゲ怪人はそのまま地面へとバウンドすると二人から距離を取り、抹消無効ゼロの効果がなくなったのを確認すると、再び自分の能力を発動させる。


暴食の繭ブラックホールグラトニー


空気か渦を巻くと、やがて最初の黒い球体へと姿を変えた。


「自己紹介でもしておこうか。七つの大罪 暴食の罪………g」


「大罪みーっけ!!!」


名前を言おうとした暴食の暴食の繭ブラックホールグラトニーに関係なく真上から人影が降ってきた。その影は何か光るものを手に持ち、暴食の暴食の繭ブラックホールグラトニーへと吸い込まれる。吸い込まれそうな身体をギリギリで離すことができ、無田の方へと跳躍した。無田はその姿を見ると、溜息をつきあからさまに嫌そうな顔をする。


「布田。お前、バカだろ。」


「お互い様だな。皆無さんよぉ……で、そっちは説得成功したのかよ。」


「協力しているんだ。分かるだろう?お前は?」


「あー?俺だってほら、説得成功したぜ?」


親指で後ろを差すと、目視できる程度の遠い距離にはヘロヘロになりながらも走っている晴山大介がいた。


「おい、あれ……」


「あー、はいはいそうですね~これは俺が悪かったよーっと。」


大介の様子を見た龍兎はひらひらと手を振り、二人の前に出る。そして、虚空から剣を出し暴食に向かい切っ先を向ける。


「さぁて、暴食の大罪。有るべき場所に還してやるからおとなしくしろよ?」


「君も神の使いか……おいしそうだ。」


暴食は舌なめずりすると、黒い渦をさらに加速させた。


続く。

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