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2/27:使い方

護衛で落雷と共に行動をしているメンバーはトレーニングをしている落雷についていき優吾と落雷と一緒にランニングをし、他のメンバーは周辺を散り散りになって辺りをパトロールしている。優吾は落雷と出会った時から気になっていたことを質問した。


「会ったときから思ったんですけど、落雷さんってトレーナーとかセコンドいないんですか?」


「……いないな。試合をする時だけ役割だけのセコンドは一人雇っているけどトレーナーは今までいたことないな。」


「百道さんはトレーナーとかセコンドとかいろんな人が周りにいるのを見たことがありますけど。」


落雷は百道のことをも知っている優吾に対し内心やっぱファンだろと思いつつ自分と百道を比較して分析する。


「そうだな…多分性格の問題だろうな。自分のやり方に文句を言われるのが嫌な俺と自分だけでは不安な百道…全く逆の性格をしているせいかもな。それより……」


落雷は優吾の戦闘を見て質問したことがいくつかあり、この話題を終わらせて逆に優吾へ語りかける。


「それより、俺からも君に聞きたいことがいくつかある。パンチは俺の真似をしたことにすぐ気が付いたんだが、あのステップは誰と誰のものを組み合わせたんだ?いや、何人のステップを盗んだんだ?」


優吾はその質問に黙り込み長考し始める。数分考えてそして全員思い出したのか口を開き始める。


「まずは、落雷さんと総合格闘技のアウザーとあとはジョン・ブライアンのステップも取り入れてます。あとはもう思い出せないですね。」


「言い当ててやろう、その三人のほかに、、フラッチ・アンドリュー、ヘグィウェイ・アンサーそして、俺のライバル百道 茜のステップも取り入れているだろ。」


「……なんで意図的に隠した百道さんの名前まで出てくるんですか……すごいですね。」


「当然さ。トレーナーをつけないってことは、それ以上にリサーチもしてるし、観察もしている。当然同い年のライバルのリサーチは長年近くで見てきたから脳裏にしみついている。」


「さすがですね……」


落雷はランニングを終えるとシャドーボクシングを始める。優吾はそのシャドーボクシングを間近で観察する。


「……そうだ。聞きたいことの続きだが、君のパンチの出し方…俺のクセを真似ているのは分かったんだが、拳を引くときのあの癖は誰のものでもないよね?君自身のクセか?」


優吾は突然の質問に言葉を詰まらせて答えに困る。落雷はそのまま優吾の答えを待つが、一向に口を開かない優吾へ実際に優吾の拳の引き方を見せる。


「こんな感じの引き方なんだけど……」


「……いや、全然気が付かなかったです。多分そのクセは俺の独自のクセですね。」


「そうか。独自の……」


落雷は拳を止めて汗を拭きながら優吾の隣へ座る。


「君のあのクセだけど…俺のパンチの止し味を完全に殺しているんだ。引き方を俺の真似ができれば君のパンチは世界をとれる……最後の質問だ。俺の拳の本当の使い方を教えようか?」


優吾はその言葉に思わず落雷の方へ顔を向ける。落雷は真剣な眼差しで優吾を見つめる。優吾はその視線に思わず首を縦に振る。それを聞いていたであろう近くにいた彩虹寺へ視線を向けた優吾は彩虹寺の答えを待つ。彩虹寺は呆れながら優吾たちの元へ近づき隣へ座る。


「試合が始まるまでは我々も落雷選手も護衛しないといけないからな。いいだろう。なにかあれば私が責任を負う。それに、君はいまとても貴重な体験をしようとしているからな。」


彩虹寺の言葉に落雷は優吾へと視線を向けて同意を募る。優吾は改めて落雷へ指導をお願いするため立ち上がって頭を下げる。落雷は優吾の頭をポンと軽くたたき頭を上げさせる。


「んじゃ、早速俺のスパークリングに付き合ってもらうよ。」


落雷は走りながら近くにあるジムを指さして走り出した。優吾も、もちろん他のメンバーもその後に続きジムへ向かった。優吾と彩虹寺、落雷はジムの中へ入っていき早速、落雷は優吾へグローブを渡してスパークリングの準備をする。優吾はプロテクターをつけて物理的な防御力を上げる。


「それじゃ、始めるよ。俺は感覚はだからさ、見て覚えてね。」


「はい?」


そのまま優吾は唖然としながら現役ボクサーの拳に手も足も出ずに何度も何度も倒れては立ち上がる。それでも落雷は自分が満足するまでスパークリングを続けた。約50分が過ぎるころ、優吾はやっと落雷の拳の速さに慣れて避けられるようになってきていた。そのまま次は落雷の拳の引き方を見る。また何度も倒れてさらに10分が経ち一時間が経とうとしていると優吾はやっと落雷へカウンターを入れることができた。汗だくの優吾を見て落雷はスパークリングを終了した。倒れこんだ優吾へ水を渡しながらリングを降りる。


「どうだった?使い方わかってきた?」


「……正直あんまりわかんないです。でもなんとなくコツはつかめてきたような……」


「いや、あんまり真似できてなかったよ?左拳をもう少し早く引いて右の肘と左の拳が重なることが無意識できるようにならないと。」


「……いや、説明できてるじゃないですか……」


「いや、あくまで感覚派だよ俺は。んじゃ今日はこのくらいだね。」


優吾たちは汗を流すためにホテルへと戻った。


2/27:使い方

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