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ダンジョン世界改変 〜ダンマスの私は日本を守りたい〜
ダンジョン世界改変 〜ダンマスの私は日本を守りたい〜
クラス
現代ファンタジー現代ダンジョン
2025年05月01日
公開日
2万字
連載中
 世界各地に人間だけを殺すダンジョンが発生。  数年後、老化研究用ドナーとして早期老化症の少女が、多くの計測機器と医師に囲まれ17歳でありながら老衰で死亡した。  少女は多数の死者の一人として時空の間に捕えられ、人類を1/10にするダンジョンマスターの役割を管理者に強制され、北海道札幌の森に送られる。  しかし、少女は日本の人口が1/10になると日本が壊れてしまうと考え、恩を返すために日本の生き残る道を探すことに。  サクラと命名されるダンジョンマスターは、日本の全ダンジョンを征服し世界と戦う。 昔に少数話出して削除した小説が元です、書き直して67話まであります。

第1話 少女の死



 時は20XX年、世界各地にダンジョンが現れ、多くのモンスターが湧き出し人を襲い殺す。


 人を殺しても死体は放置され次の人を襲う。

 犬猫が横に居ても何もせず、家畜を無視して人を殺す。

 ただただ人のみを殺すモンスター。

 そのモンスターを倒すと黒い霧になって霧散し、その場所に通称魔石と呼ばれる小さな黒い球体が残った。


 人々は人を殺すモンスターが湧き出すダンジョンを【殺人ダンジョン】と呼びはじめ。


 各国は軍によるモンスターの殲滅およびダンジョン破壊を目指すが近代兵器の効果が弱く、試行錯誤の結果モンスターに有効な攻撃方法が見つかる。

 そして、ダンジョン対策組織を作り殲滅を目指した。


 しかし、殺人ダンジョンを駆逐することができなかった。

 時と共にダンジョン数が増え始める。




============




 ーーー 感謝を捧げながら私の時は終わる ーーー



 ダンジョン災害発生から数年後。

 北海道にある高度医療研究病棟で17歳の少女が老衰で死を迎えていた。


 少女の病気は早期老化症、早老症と呼ばれる難病である。


 5歳の時に発症し、7歳で入院、10歳で国の高度医療研究所に引き取られ、17歳の今。老化による多臓器不全で危篤になっていた。


 場所は高度医療研究病棟の中。


 広さ10畳ほどの部屋の中央壁寄りに最新医療ベッド置かれ。

 その上に身長130センチの萎びた体が横たわる。

 まるで小学3年生ほどの小さな老婆が息も絶え絶えに仰向けに寝ていた。


 その体には、多くの医療ケーブルがつながっていた。

 早老症の死亡までの経緯や状況が詳細に記録される。

 もちろん難病対策もあるが、老化現象研究のため。

 そして、生命の究極命題である老化抑制、防止、不老、若返り等の研究ドナーとして。


 数人の医師と看護師が医療機器の前で作業をしつつドナーの状況を見ていた。

 担当女医がベッドの横で、悲しそうに老婆の右手を両手で包んで老婆の顔を見ていた。


 苦しそうにしていた老婆の顔が、ゆっくりを落ち着きを戻し、そしてゆっくりと目を開ける。


 担当女医にゆっくりと顔を向け、わずかにほほ笑む。


 部屋中の医師と看護師がそれを見て死の瞬間だと理解してしまい、息もできないほど静かになり、医療機器の音だけが響いていた。


 そして……


「今まで……、私を……助けていただき……ありがとうございました。

 お母さんも……お父さんも……妹弟も……助けていただき……ありがとうございました。

 私の……体は……すべて……国の……未来のために……使ってください……」


 小さい声だが最後の言葉が部屋中に響き渡る。

 担当女医は涙をこらえながら、うんうんと頷くばかりだった。

 小さな老婆はゆっくりと目をつむり、安らかな寝顔になる。



 数秒後、ピーーーーーーーと医療機器が警報を鳴らし少女の時は終わる。




……

…………

………………




 ===== そして時は流れ始める =====




 ーーー ここは死者が集められた時空の狭間 ーーー



 ざわざわ、ざわざわ、ざわざわ……


 多くの人が蠢く音が聞こえる。


 少女の意識が目覚め始める。


 少女は7歳から17歳まで長い時間を入院していた。

 最後の1年は寝たきりの老衰で死亡する。

 死亡するまでの友は小説、アニメ、漫画やインターネット等の病室でできる趣味しか無かった。

 しかし、7歳までは誰よりも前に走りながら遊ぶ行動的で明るく楽観的な少女だった。

 入院してからも想像の物語りの中で楽しく遊んていた。


……

…………


 ざわざわ、ざわざわ、物音に少女の意識が覚醒する。

 そして、少女は下を向きながら立っていることに驚く。


(あれ、私は老衰で死んだはず、立てるわけがない……)


 足元を見ると裸足で立っていた。

 服は薄緑色した前を紐で止める患者用の簡素な服。

 床を見ると、50センチ四方の黒と白の硬そうなタイルをチェク柄に敷いた床。

 冷たくはなかった。


 顔を上げると、数メートル間隔で大人が立ってる。

 それもすごい人数で見渡す奥まで人で埋まり先が見えない。

 右を見ても左を見ても同じ人人人の人ばかり。

 上を向けば青空。


 よく人を見ると、口や顎が動いているので喋ってるようだが何も聞こえない。

 しかし、ざわざわとした動く音は聞こえた。


 私は背が低いのでどこを見ても人の壁しか見えない。

 その先が見たくて何かできないかと右に居る人を見る。


 隣には背が高く人が良さそうな顔のお兄さんが周りを見渡して思案顔で遠くを見ていた。


 (よし!)と気合を込めてお兄さんに近づき、袖を掴んで話してみる。


「あのー すみません」


 お兄さんはビクリと驚き、私を見下ろして。


「え! 話せる?」と驚きながら答える。


「みたいですね」


 とニッコリと見上げてお兄さんに話しかけると、お兄さんは思案顔から優しい顔になり。


「うーーん、近いから話せる? 触れてるからかも?」

「で、ですかね? ところでお兄さん、背が高いから人の向こうに何か見えますか?」


 お兄さんはその質問に、どうかなーと言いながら、背伸びをして周りを見始めた。しかし見えるのは人の頭ばかり。


「人の向こうは……人だらけかなー」


 その言葉に私は首をかしげて、「え?」と漏らす。

 お兄さんは、伝わらないかなーと呟きながら。


「高くから見たほうが早いから、肩車しよか?」


 その唐突な提案に。

(なんと! 夢にまで見た肩車! お父さんの思い出)

 私は花咲く様な笑顔をお兄さん向けて、「肩車、お願いします!」とお兄さんの袖を強く握った。


 お兄さんは目を見張って私を見た後、照れ笑いをしながら横に顔を向けて、「よし!」と言いながら私に背を向けてしゃがむ。


「背中から乗って、乗り方わかる?」


 お兄さんの肩に手を当てて乗ろうとした瞬間、疑問に固まる。


(あれ?

 こんな事できる体力無いけど、なぜ普通に歩ける?

 なぜ自然に肩が掴める?

 なんの疑問もなく動いている。

 こんなことできるはずないのに……)


 手を見るとスラリとして色白で健康的な小さい手が見える。

 元はシワだらけでひび割れ、所々硬化した白色と鬱血した斑模様の死にそうな老婆の手がない。

 それに、動きに何も問題なく普通に動ける。

 まるで早老症が発病する前のまま成長した様に。


 しかし、身長は生前のまま低くくて小学生ぐらいなのが理不尽と思ってしまう。

(17歳なのに……17歳なのに……)

 と心の中でブツブツ言ってしまうのも仕方がない。


 戸惑っている私にお兄さんは声をかける。


「うん、どうした?」と聞かれ。

「うんん、何でもないです」と答える。


 そしてお兄さんの肩を掴み、お兄さんの背に登れるのが嬉しくてニコニコしてしまう。

 楽しそうにお兄さんの肩に跨がり頭に抱きつく。

 お兄さんは肩に登る小学生ぐらいの少女をサポートしながら、肩に跨ったと同時にしっかり足を押さえる。


「よし、上げるよ、しっかり頭を抱えてて」

「ハイ!」


 元気よく返事をすると、お兄さんはゆっくりと力強く立ち上がる。

 徐々に視線が上がって行き、頭の上を超え、誰よりも高い位置で周りが見えてくる。


 そして、一面に広がる頭の波、右も左も前も後ろも頭の波しか無かった。

 いったいここに何人居るのか、何千何万人居るのか。

 頭の途切れた位置がわからず、その上には空しか見えない。

 お兄さんから声がかかる。


「どうだ、なにか見えるか?」

「あーーその、前も後ろも右も左も頭の波しか見えない。何人居いるのか、何百何万人なのか、兎に角たくさん」

「上から見ても同じか……」


 諦めたような声がお兄さんから漏れる。

 私はただただ驚くばかりだった。


 その時、突然空から世界全体に轟く重低音の声が響く。


『静かに、静かに、私の話を聞け、いいかな?』


 ザッと音が出る程全員が一斉に上を見る。

 数秒ほど世界が止まった様に静けさに包まれる。


『君達をこの空間、時空の狭間に呼んだのは私だ』


 私とお兄さんは天から響く声を一言も漏らさぬ様に聞く。

 目の端の方には、手を突き上げ問い詰める様に騒ぐ人がいた。

 次の言葉を待っていると。


『現在の状況を知るために、冷静に情報収集する知的な人が好ましい』


 その言葉と共に、手を突き上げて騒ぐ人が消えた。

 言葉はつづく。


『君達は既に死んでいる。死の瞬間の記憶が有るはずだ』


 その言葉とともに、驚愕する人、肩を落としうつむく人、泣き始める人、喚き始める人、手を振り回し騒ぐ人。


『死を冷静に受け止める人が望ましい』


 その言葉と共に何人も人が消えた。

 それを見て、これは選別だと直感で理解した。

 背中に冷たい汗が流れるのを感じ、思考が冷たく静かに沈む。


 私の足を支えるお兄さんの手が少し強くなり、小声で真剣に話しかける。

「静かに冷静になれ」

「理解しています」と冷たい声を返した。


 世界が静寂に包まれる。


……

…………


『よろしい、


 私は地球の管理者だ。


 お前達の言葉では、神の概念に近い。


 人類は近い将来、自滅的に終焉を迎える。


 その後僅かな生き残りが居ても技術が衰退し、寒冷化、氷河期よって絶滅する。


 その根本の原因は人類が増え過ぎたためだ。


 滅亡を回避するため、人口を10分の1以下にすることを決めた。


 戦争や争いでこの数にすると、多くの地球資源が浪費され知識や技術が消え文明も衰退する。そして人類が生きる環境も破壊される。


 災害で10分の1にすると致命的な環境破壊と文明破壊が起こる。その後生存場所を求め戦争に等しい争いが起こる。


 これらの方法は適切ではない。




 遥か遠い星で、自然に無理なく知的生命体が間引かれ、長い歴史と文化と技術を持ち、星間国家に至った知的生命体が居る。


 その環境を地球に持ち込む決定をした。


 お前達はダンジョンマスターになり人類の間引きと新たな環境を作るきっかけになる。


 ダンジョンでモンスターを生成して地上に放ち、数十年から百数十年で人類を間引く。


 今の環境のまま人類を徐々に減らす事で文明の致命的破壊を回避すると共に自然環境も保存と拡張と修正がされる。


 君達には、90%以上の人類を殺す使命を与える。


 10人中9人を殺すのだ、強い強い覚悟がいる。


 使命を正しく行う者が望ましい。


 お前達には、ダンジョンコアとそのAIが与えられる。詳しい内容はコアAIに聞け。


 以上だ、五分後にコアと共に地球の各地に送られる。


 覚悟を決め!


 使命を果たせ!』


 その言葉と共に空には分と秒のタイマーが大きく多数表示され、カウントダウンが始まる。


 静寂が終わりザワザワ、ザワザワと動き始めた。

 その後も、パラパラと人が消えている。

 私はその状況を見ながらお兄さんの耳に近づき、小声で話す。


「お兄さん、これ選別です」


 お兄さんも厳しい表情で答える。


「分かっている、今も選別中だ、生き残るぞ……

 もう死んでいたがな」


 と言って苦笑いを顔に貼り付けて私を見る。


「向こうに行ったら会おう。

 子供は守られるべきだ、私が君を守ろう」


「え、こんな外見ですが17歳ですよ」


 お兄さんは驚き顔で私を見上げ。


「道理で会話が大人っぽい」


「これでも私は本やネットが大好きで、想像の設定や知識は最強だと思っていますよ。

 普通の知識も多いけど読むだけの知識ですが」


「なるほど想像の知識か、今の状況に合ってる。

 頼もしいな。

 時間が少ない、君の望みや、やりたい事が有るかい?」


「あります。

 親兄弟が日本に助けられました。

 私もすごくすごく助けられました。

 たとえどんな思惑が国に有ったとしても、助けられた事実は消えません。

 恩は返します。

 だから、日本の未来を守りたい」


 サクラは、医療研究所に入った時から死ぬ瞬間まで、私は国の未来のためにできる事は何でもすると決めていた。

 約7年間その思いは一度も途切れず、時と共により強く育っていく。

 死を前にしても、その思いは死の恐怖を超えていた。



 私の決意を聞いてお兄さんは焦って私を見つめ。


「待て! それを言うと消さ……れ……る?


 消えない……


 そうか、殺す使命と守ることは必ずしも背反しない。

 良い情報を得た。

 その決意、さすがだ」


 焦り顔のお兄さんが驚愕のあとに目線を落としてブツブツと言い始めた。


「待て、背反しないとしても限度がある……

 使命が最重要で反しない範囲なら何かを守ることも可能……

 その見極めが必要だ……

 情報が足りない……

 コアAIに聞くことが多すぎる……

 ・・…… ・…… ・…… ・……」


 ブツブツが終わったあと、私に笑顔を向けて。


「あははは、こんな事を考える時点で消されるはずが消えない。

 そこに答えと未来がある」


「ですね、頑張るぞーー」


 私も笑顔で答え、「お兄さん、名前は何?」と聞いて驚く、私の名前は何? と自問自答する。

 お兄さんも答えようとして声が止まる。


「名前は…… あれ、おかしいな?

 名前が分からない。

 親兄弟が居たのに顔も名前も分からない。

 友人が居たのにそれも分からない。

 使命のために記憶が消されたか……

 やるな管理者。

 よほど使命が重要と見える。

 迂闊な事はできない」


「私も、個人関係の記憶が無い、でも他は覚えてる」


「個人を特定するのは他の記憶からできると思うが、消した目的を考えると調べるのは止めたほうがいい。

 いいか?」


「はい」


 お兄さんは空を見上げ。


「もう時間が無い、向こうで会って話そう」


「はい、向こうで!」


 空にあるカウントダウンが終わると、肩車したまま私の意識は眠る様に消えた。





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