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第26話 エリート・オフィスレディの後悔



 私は東○を卒業したエリート、勉学だけでは無く私自身も磨き上げ、美人だと自負している。


 誰もが羨む大手総合商社に入社、社長や重役等のサポートを行う秘書課に入る。

 給料も高くステータスも高い。


 最初は本社の受付や各種イベントの秘書としてサポートを行う顔となる。


 そして、重役の専属秘書となり。

 国際的な会議の通訳も務める。


 数年後、社長専属の秘書に抜擢され、世界中を社長と回る。

 実力を認められ、頼られ、信頼された。


 多くのいい男が私に話しかけ、誘われ、お話をした。

 浅い付き合いは普通にしたが、私は仕事に生きがいを感じ、仕事に生きた。


 私の黄金時代であった。


……

…………


 十数年後には、秘書課のトップになり、数十人の秘書の采配を行う。

 責任ある仕事を采配し信頼される上司となる。


 しかし、40代になると外見上の年齢が隠せなくなる。

 もう男は誰も声を掛けない。


 影でお局様と囁かれ始めた。


 そして、度々配置転換の噂が流れてくる。

 仕事に何の問題も起こしていない、全て順調だ。

 なのに噂は消えない。




 ある日、人事部長に呼ばれ配置転換を言い渡される。

 地方にある工場の工場長秘書。

 ここは総合商社だ、確かに工場もそれなりに持っている。

 だが、ここは総合商社だ。




 私は何を間違えた?


 いったい何を間違えた?


 理解できない!




 仕事一筋が駄目だったのか?


 いい男の求婚を受ければ良かったのか?


 愛嬌のある仕草が必要だったのか?


 男性の様に厳しさを仕事に求めた事が駄目なのか?


 でも、甘い顔で上司は出来ない!


 仕事は回らない!


 理解できない、理解できない、理解できない。






 後悔してももう遅い、40代の元エリート・オフィースレディに声をかける人は居ない。


 私は一人だ、一人になってしまった。


 あの頃の栄光はもう何処にも無い。


 何が違っていたのか?





 最悪の気分を忘れるため、行き付けの銀座高級BARに一人で行く。

 高級酒をこれでもかと飲みまくる。


 フラフラになりながら店を出て深夜のビルの谷間を歩く。

 気持ち悪くなり、ビルの隙間に入り、嘔吐する。


 寒い冬の日だった。酔で寒さを感じなかった。

 酩酊が酷くそのまま立ち上がれず横になる。




……

…………

………………




 私は立っていた、酔も無く、頭もはっきりしている。

 白黒のチェックの床が見える。

 顔を上げれば人が等間隔に並んでいた、とても多い。

 空は青空。


「ここは何処ですか?」


 返事は無い。

 しばらくすると管理者という者の声が聞こえる。


 死んだ記憶がある?


 私に死んだ記憶は無い。


 管理者が色々言ってるが、私は死んでない。





 空にタイマーが出て、カウントダウンする。


 カウントが0になると意識が闇に沈む。


 気が付くと森の中に居た。


 これは夢だ、光る玉と会話している。


 まあいい、このまま玉の話に合わせよう、目が覚めるまで…………



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