みんなと合流した後、調査や休憩、観光に数日ほど休息する。
私は、半日を個人行動にして数時間の飛行訓練をした。
高速飛行スキル状態でも問題なく飛行できるようになる。
短時間にトップスピードも問題無い。
曲線的な飛行より、できるだけ鋭角にカクカクと跳ぶ飛行を極めようと訓練し、いい線まで行ったと思う。
たぶん普通の動体視力では追えない。
もちろんゆっくりふわふわと飛ぶ訓練もする。
人の前にふわふわ飛んでいくのは紹介に良いし、弱そうだし、偽装に使えるし、奥の手が増えるし、カッコいいでしょ!
ふらふら〜〜〜、フワフワ〜〜〜 と人前で飛ぶ。
その機会があるか不明だが、多分必要。
その他、指定位置での急停止と急発進、体当りによる攻撃の習熟、多くの巨木を粉砕した。
その結果、羽が無くても飛べるのが分かりラビに聞く。
『羽は飛べるモンスターの象徴に必要、羽が有るから飛ぶと言うスキルを持ちます。
羽自体は飾りです、は言い過ぎですが羽を持つモンスターは羽を動かして飛行制御をしているので、羽が無くなると飛べますがある時と同じ様に飛べません。
ですがこの球体の羽は、羽が有るから早く自由に飛べるという定義の完全な飾りです。
壊れても羽を動かしたと言う内的意味があれば、飛行に変化はありません』
だそうです、きっと偉い人には…… ゲフンゲフン。
ーーーーーー
飛行訓練中にタケルから念話が届く。
『中国地方のモンスター被害ですが、最近襲撃現場に人を拷問した様な、甚振って惨殺した様な死体が複数見つかったようです。
ちょっとまずいかも、対策しましょう』
『分かった、1時間後にタケルの会議室集合、みんなに連絡して』
『おk』
ーーーーーー
会議室に4人が揃う。
インターネット情報を印刷した書類を広げ、タケルより全員に詳細を報告する。
内容は、以前は頻繁にモンスター襲撃が無かったが、ここ最近は襲撃回数が増えると共に犠牲者が増え、拷問をした様な残虐な惨殺死体が多数出ている。
木に縛られ切り刻まれた少女や子供がいたとネット情報が流れている。
ダンジョン対策本部は四国に居るダンジョン対策部隊を広島市周辺に移動、ダンジョン攻略の精鋭部隊も広島に入る。
説明の最後にタケルから、
「無差別殺人も問題だが、少女や子供の拷問の様な惨殺死体が俺には許せん。
未来ある子供を殺すのは日本にダメージだ。
このダンジョンマスターは排除すべき」
そう言ってみんなを見渡し、最後に私を睨む。
「私も賛成だ。
ただし、調査と準備がいる」
「俺を調査に参加させてくれ。
飛行も超高速飛行スキルを覚えた、インビジブルも覚えた。
飛行訓練や隠密も訓練した。
参加させてくれ!」
強い口調で私に詰め寄る。
よほど怒っているのだろう。
前回は断ったが、今回は参加させない訳にはいかないな。
「よし、今回はスピード重視で行こう。
高速飛行と隠密が出来るタケルと、転移と隠密ができる私の二人で現場に行く」
「おk、任せろ!」
「トウカとアサカは何かあった時のバックアップを頼む。
具体的には、インターネットカフェで常時情報を監視して緊急な情報を連絡。
たぶん、SNSや掲示板にリアルの情報が流れると思う。
特にダンジョン対策部隊の精鋭の情報が有ると良い、今は精鋭と鉢合わせはまずい。
ただ、ほぼ全てゴミ情報と思うが何かあるかもしれない。
何も無くても情報監視は重要だ。
情報収集の訓練になる。
二人ともいいか?」
「畏まりました」
「はい!」
アサカは初めての任務で張り切っている様だ。
「よし、眷属リンクの念話は常に4人に流れる様に。
行動開始だ!」
トウカとアサカは、二人で相談し行動を開始した。
「タケル、ちょっと待ってダンジョン攻略の可能性がある。
念話で下準備の打合せする」
「おk」
ーーーー
私の中にある亜空間倉庫3のウェアウルフキングに念話する。
『もしもーし、サクラだけど聞こえる?』
『はっ、サクラ様聞こえております』
部下の訓練を見ていたウェアウルフキングは、瞬時に立ち止まり直立不動になる。
それを見たウェアウルフロード等は、何かあったと静かにキングの動向を見る。
『ダンジョン攻略を頼む可能性がある、良いか?』
「『全く問題有りません!』」
緊張のため念話と声が同時に出てしまうキング。
それを聞き、サクラ様からの念話が来たと緊張する部下たち。
『前回は相手の規模がある程度予測して部隊を作ったが、今回は相手の規模が不明だ。
尚かつ、20時間以内にコアルームまで攻略が必須の条件になる可能性があり、前回の半分以下の時間だ。
やれるか?』
「『やって見せます!』」
『よろしい、部隊がすぐに出せるように門の前に準備してくれ。
そうだな、今から2時間以内に準備、24時間以内に出陣する可能性を考慮して待機。
待機時間が長い可能性を考慮してくれ。
良いか?』
「『はっ、了解です』」
『よし! 開始しろ!』
「『はっ!』」
念話が切れると、キングは両手を力強く握り、右手を突き上げると共に大声で叫ぶ。
「お前ら!!!
サクラ様よりダンジョン攻略の指示が来た!!!
日頃の訓練成果を見せる時だ!!!
まず、全員を門の前に集合!
そこで詳細を説明する!
全員に連絡だ! 走れーーーーーーーー」
オォーーーーーーー、の叫びと共に全員が走り始める。
ーーーー
「よし連絡は終わった、タケルは私をおんぶでよろ」
「え? おんぶ?」
「私の荷物か私が荷物にならないと一緒に転移出来ない。
おんぶが嫌なら置いてくよ」
「うぉ、知らなかった。おんぶします」
いや既にトウカにおんぶされて転移してるだろ、と指摘したい。
私より少し背が高いタケルの背にしがみつき転移する。
まずダンジョンの管理領域に転移、その後ラビの安全を確認の上、広島県の端の山奥まで連続転移する。
そして広島市の北東の山奥まで、ダンジョン管理領域にモンスター、マスター、ダンジョン、人がないかを慎重に確認しながら、15キロ単位で転移する。
探査条件が多く、1回の転移に時間が必要だった。
なかなか進まない距離がもどかしい。
しかし、何かに鉢合わせが最も危険だ。
『現状を連絡する、広島市から北東の離れた山奥に到着した。
ここまではモンスターもマスターもダンジョンも発見していない。
バックアップチームがは何かある?』
『アサカです、ダンジョン対策部隊の精鋭は既に広島市内にはいり活動中、活動場所は不明です。
その他は、広範囲に警戒状態です』
『了解、引き続き頼む』
『はい』
『こちらは、二手に別れて捜査する。
タケルは、上空300メール以上をインビジブルの隠密で飛行し、モンスター襲撃の現場及び民家と森が接する辺りを広範囲に上空から捜査、いいか?』
『おk』
『絶対に見つかるなよ、見つかったら逃げな!
それと、何を見ても手出し禁止、遠くで監視しろ。
私を待つこと、いいな』
『分かってる』
『私は、中国地方の山奥を広範囲に転移しながらダンジョンを探す。
たぶん、ダンジョンは現場から遠い場所にある。
以上、行動を開始する』
さて、今回はスピード重視、タケルも心配だし。
私一人なら球体の高速飛行で逃げれるし、最悪倒されてもエイリアスが消えるだけ。
10日のクールタイムも過ぎたので、何時でもエイリアスを作れる。
多少無理した転移で探索する。
残されたタケルが倒されたら困る。
その為にも二手に分かれたんだけどね。
それに、ダンジョンを先に見つけないとダンジョンマスターを倒した後にダンジョン攻略は危険だ。
24時間以内に代替わりやダンジョンが増えて後手に回る。
何処に出るか分からないダンジョンを探すのは不可能だ。
絶対に避けたい。
私は最大30キロの転移を使い、中国地方の山の中を捜索している。
捜索対象が多いため、一回の転移で時間が掛かる。
もう何度も転移しているがモンスターは見つけたがダンジョンは無い。
何かするにしても相手のダンジョン位置が判明してからでないと危険だし、奇襲が絶対に必要。
タケルが勇み足で動くのが心配だ。
ダンジョン管理領域の長い探査時間がジリジリと私の心を焼いていく。
……
…………
………………
『サクラ! モンスター襲撃現場跡を見つけた。
周囲を調査して、現場から数キロ離れた森の中にモンスター集団発見。
クソ! 女子供を木に貼り付けていたぶってやがる!
多分あれがマスターだ!
周りにモンスターが多い100以上いる』
『分かった。
遠く離れて監視しろ!
絶対に手を出すな!
敵ダンジョンを見つけるのを優先する。
少し待て!』
『分かった…………』
くそ、タケルが先に見つけたか。
もう少しダンジョンを探して駄目なら現地に行く。
(ラビ! 探索をダンジョンだけにして高速化しろ)
『了解』
モンスターや人に遭遇は無視する!
……
…………
『サクラ! まだ見つからないのか!』
『まだだ、待て!』
……
…………
『サクラ! まだ……』
『よし見つけた! 今から行く!』
『それを、待ってたーーーー』
(ラビ、眷属だけ探索しマップに表示。
それ以外は転移先の安全だけ探査!)
『了解』
私の眷属のいる方向が感覚的に分かる。
それに向かい転移を繰り返す。
マップにタケルの位置が表示された。
『タケル、安全な位置に降りてインビジブルを解除』
『おk』
タケルが降りるのを待つ。
『アサカです、モンスター襲撃現場にダンジョン対策部隊が向かっている情報が掲示板に出ました。
あまり時間が無いかも知れません。
お気をつけくだだい』
『了解』
くうーーーー、時間が少なすぎ。
タケルの降りた位置に転移。
『タケル、後にいる』
『うわ、びっくりした』
慌てて後ろを振り向くタケル。
『時間が無い、至急作戦を立て動くぞ』
『おk』