『時間が無い、至急作戦を立て動くぞ!』
『おk。
と言うか、此処からモンスターが見えないけど?』
『問題ない、私は周囲のマップが見えモンスターの配置が分かる』
『え⁉』
『質問するな、秘密だ』
タケルは小さく了解と言いながらも、そう言えば俺の場所に直接転移した、何故できる?
と考える。
私は、詳細情報を表示したマップを見、作戦を考える。
確かに赤い三角錐が立っている、敵マスターだ。
モンスターは広範囲に散らばっている。
麻痺と催眠の範囲外にもいるな。
……
…………
『よし、作戦を伝える。
プランA、現場制圧作戦。
まず私が敵マスターの近くに転移して、範囲麻痺と範囲催眠を掛ける。
もし敵マスターに麻痺と催眠が掛からなければ、現場制圧作戦失敗になり転移でこの場所に逃げる。
そして、タケルの背に乗り遠くへ転移して逃げ出す。
その後プランBに移る。
タケル! いいか絶対に逃げるぞ、拒否権は無い!』
『了解しました……』
『よろしい、
敵マスターに麻痺と催眠が掛かったらタケルを呼ぶ。
私の近くに来て、麻痺の範囲外モンスターが来たら、麻痺と催眠をかけて眠らせろ。
2つ持ってるか?』
『有りますがLv低いです』
『よし、……今極めMAXに変えた、確認しろ』
『え? ………… 変わってる』
『私を2つの魔法で守れ!』
『了解!』
(ラビ、他者の状態異常を死亡時と同じように表示できるか?)
『出来ます』
(では、表示してくれ)
『了解』
ラビが優秀すぎ、これで常に相手の状態が分かる。
『これで現場制圧状態となる。
私は、敵マスターを蹴って起こして、麻痺状態で会話する』
『ちょ、話すんですか?』
『する、何故こんな事をしたのか聞きたい』
『分かりました……』
私の将来の為、真の目的を理解する為に、異常なマスターの原因と状況と状態は知るべきだ。
だから話をする。
『話した後、その後の行動を決める。
が、たぶん私が殺す。
以上だ、質問はあるか?』
『おk,無いです』
『お嬢様の思いのままに』
『有りません』
『よし、作戦を始める。
タケル準備はいいか?』
『おk』
『開始!』
私は敵マスターの近くに転移。
私を中心に最大の【範囲麻痺】【範囲睡眠】する。
バタバタとモンスターが倒れる。
注目する敵マスターの上に、麻痺と催眠マークが出て回転している。
そして仰向けに倒れる。
よし、かかった!
『麻痺と催眠成功、タケル来い! 私を守れ!』
『行く!』
タケルが飛んできて、周囲を警戒する。
私は周囲の安全を確認後、敵マスターに近づきよく見る。
何処にでもいる普通の30後半のおじさんに見える。
服装も普通のズボンにワイシャツ、人化しているんだろう。
しかし、その右手には血の滴ったアーミーナイフが握られ、服に血が飛び散っている。
頭を蹴飛ばす。
敵マスターが衝撃で目を覚ます。
ギョロリと目が動き、私を見た瞬間ニタ〜〜と笑い、普通のおじさん顔が狂気の顔になった。
私を獲物を見るような目つきと共に、恍惚の喜びが顔に張り付く。
思わず一歩後ずさり、寒気がする。
「お嬢ちゃ〜〜ん、おじさんと遊ぼう、とーーても楽しいよ。
木に縛ってナイフを刺すんだ。
楽しい歌声が聞こえるよ。
たーーのしい、楽しい、とーーーーても楽しよ。
エヘ、アハ、フハ、イヒヒヒ」
その言葉と共に、左右の目が違う方向を見る。
恍惚の顔からよだれが垂れる。
私は身震いして、この人から目を背け逃げ出したい思いがあふれる。
しかし、木に括りつけられた少女を指して聞く。
「何故、こんな事をする?」
右目だけがギョロリと動いて少女を見る。
「アハ、ネテルヨ、さっきまで歌ってたのに、ダメジャナイカ、刺して起こそう。
アレ体が動かない。
アハ、アハハハ、ナンデ?」
左目が私を見る。
「キミ、小さくてカワイイね。
君で遊ぼう、イヒヒヒーーーー」
『駄目だ狂ってる、話が成立しない…………』
『俺も鳥肌が立った、これ会話無理じゃね?』
念話している間も、嫌らしい笑いと聞くに耐えない言葉を発していた。
しばらく声を聞いていたが、話に意味が見いだせ無い。
『狂ってる……
処分して撤収する』
狂ったマスターに【デス】、1秒後にプツリと声が途切れ霧になって消える。
そこには光を反射しない真っ黒な魔石が有る。
物凄く嫌だった、触りたく無かった、しかしマスターの死亡をダンジョン対策部隊に知られたくない。
だから魔石を回収した。
言葉に出来ない嫌悪感を体中に感じながら、タケルの背中にもたれかかる。
『サクラ、現場はこのままか?』
『うん』
『少女や子供は? まだ生きてる様だし』
『私達に人間の怪我を回復させる治癒魔法はない。
だから、もうすぐ来るダンジョン対策部隊に委せる』
『そうか…… まあ俺ら敵だし、会ったら戦闘だしな。
帰ろう……
ほら、サクラ、しっかり捕まって』
『分かった。……じゃ転移』
数回転移して広島市から遠く離れる。
ーーーーーーーーーー
山の中、岩の上に腰掛ける。
隣にタケルが座る。
『こちらは、現場より遠く離れて山奥で休憩中。
まいった、今回は別の意味で心が恐怖した』
『アレは、仕方が無い。
元気出せサクラ』
『うん、ちょっと休憩する………………』
しかし、何故あそこまで狂う?
コアAIが精神誘導したのは間違い無い。
多分KPが減り、KPを増やすよう精神誘導する。
結果マスターの精神が狂い始める。
そして、破滅へ。
元の人間があの狂気を底に持っていて、それが表面化したのか?
コアAIからすれば結果的にKPが増え、期待出来ないマスターの代替わりができる。
次はダンジョンの数が2つになったかもしれない。
KPが少ないからダンジョンが増える以外にもダンジョンが増える理由や方法があるかも知れない。
ダンジョンが増える理由をお兄さんの攻略本しか見ていない、だが攻略本は初期情報から作られてる。
完全と考えては駄目だろう
ダンジョンが増える増えないはコアAIかその上が決めてる、単純に理解するのは危険だ。
日本のダンジョンは外国に比べとても少ない、だが初期1が現在は多分7で7倍に増えてる。
一度増え始めて処理が追いつかないと、ねずみ算式に増えるかも、怖いな……
とにかく、日本のダンジョンを征服してコントロールされた間引きを行う。
ダンジョンも増やさないし、狂うダンジョンマスターも出さない、それが第一の目標だ。
ここのダンジョンコアもサブコアにする、休止サブコアが2つになる。
速く休止をやめてサブダンジョンにすべきだろう。
休止のまま持つのは危険な気がする。
よし、動こう。
座った石から立ち上がりみんなに話す。
『お待たせ。
次はダンジョンの征服だ。
24時間以内に征服しないとダンジョンが消えて代替わりする。
更に増える可能性もある。
ダンジョン攻略の開始だ!』
『おk、元気になって良かったよ』
『ウェアウルフ軍団に連絡する、待ってて』
『おk』
ーーーーーー
『もしもーし、準備はできてる?』
門の近くで突如直立不動になるウェアウルフキング。
周りが一斉に注目する。
そして、キングの念話と声が同時に出る。
「『はっ、サクラ様、いつでも行けます!』」
『よし、今から20分後に門を開けてダンジョン攻略を開始する。
その手順を話す。
敵ダンジョンの約1キロ手前で門を開き、全軍団を出せ。
その後、敵ダンジョンに進みダンジョン入口を制圧。
後は前回と同じくキングに任せる。
20時間以内にコアルームまで制圧しろ。
門が開く前に全員に予定を周知しろ。
敵の規模は不明だが、お前達なら出来る
私はお前達の勝利を信じている。
開始の準備をしろ! 以上だ!』
「『了解!!!』」
握り拳を両手で突き上げ、全身で喜びを表すキング。
静かに拳を下ろし、無言で門横にある壇上に向かう。
周りは既にサクラ様より指令が来たと理解している。
ウェアウルフロード達もキングに続く。
壇上に登ったキングは、軍団全を見渡す。
ズバン!!!
と音が出る速さで両手を広げ、最大の音量で軍団に向けて話す。
「お前ら! 20分後にダンジョン攻略開始だ!!!!!!」
爆発したような雄叫びが巨大な部屋の中に響く。
ハイピクシーが光の粒を振りまきながら舞踊り、ハイダークウィスプが飛び回る。
その雄叫びと情景をウェアウルフキングは全身で受け止め、武者震いに震えていた。
落ち着いた頃、ウェアウルフキングはダンジョン攻略の開始手順を軍団に話し。
迅速に軍団が動ける様、計画通り部隊を配置していく。
そして門が開くのを、今か今かと待ちわびる。