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第30話 狂ったマスター3


 ウェアウルフキングと会話が終わり、開始の合図をする。


『よし、ウェアウルフ軍団の準備が整った。

 今から20分後にダンジョン攻略を開始する。

 タケル、移動だ』


 と言ってタケルの背中に飛び乗る。

 おっとと、とタケルがよろけるが構わず転移。

 ダンジョンから20キロ地点につく。


『ここは敵ダンジョンから20キロ離れた地点。

 ここで時間まで待ち、時間が来たら敵ダンジョンの1キロ手前に転移。

 門からウェアウルフ軍団を出し、侵攻を開始する。


 今回はマスターが居ないのと、軍団規模の防御態勢が整わない奇襲侵攻となり、勝率が高く被害が少ないだろう。


 ふふふ、戦略的優位を戦う前に作るのです』


 と、腰に手を当て無い胸を突き出し言いきる。


『おk、あの軍団か…… あれは泣ける』


 タケルは自身のダンジョンが侵攻された時を思い出し、思わず震える。


……

…………


『時間になった、行く』


 タケルの背に乗りモンスターの居ない場所に転移。

 広域のダンジョン領域を作り、亜空間倉庫3の門を離れた場所に出す。


 門が開き始めると、先頭に居たウェアウルフキングが私を見つけて駆け寄ってくる。


 数メートル前に立ち、ビシリ直立して敬礼する。


「サクラ様、御膳に軍団を連れて参りました!」

「ご苦労!」


 そして、私の左隣に立ち門を見る。

 軍団のウェアウルフロードの中隊、ウェアウルフリーダー小隊が隊列を整え、駆け足で現れる。

 そして、私達の前に整列する。


 その規律ある行動に感動し。


「素晴らしい規律と行動だ、さすがキング!」

「有難き幸せ、皆に伝えます!」


 隊列が整い、素早く点呼が行われ、各ロードがキングに報告する。


「サクラ様、軍団が整いました!」


 その声と共に門を消してダンジョン領域を消す。

 そして、魔法で声を拡大して。


「私の誇りある軍団のみんな!


 今からダンジョン攻略を行う!


 敵の規模は不明、時間制限もある。

 だが、君達には出来る!


 ダンジョン侵攻を開始する!!!」


 爆発の様な雄叫びが響き渡る。


「タケル、キング、行くよ!」


 右にタケル、左にキングで敵ダンジョンに歩き始める。


 タケルが「これ、前より強くなってない?」


「訓練してたからね、連携を重点にね」

「うへーー、モンスターが訓練で強くなるなんて、初めて知った」


「タケルも飛行や隠密の訓練したでしょ?」

「確かに」


 隣のキングが嬉しそうだった。


 進行中、時々小数の敵モンスターが現れるがウェアウルフ達が瞬殺してた。


 ダンジョンの入口に近づくとキングが号令をかける。


「敵ダンジョン前を制圧しろ!」


 ウェアウルフロードとウェアウルフリーダーが高速で疾駆し、ダンジョン前のモンスターが瞬殺される。

 戦いを見る分には余裕そう。


「キング、あとは頼む!」

「はっ、了解です!」


 既に戦略がある様で、相談すること無く警備部隊が周囲に散開、ダンジョン突入部隊が隊列を作ってダンジョンに入っていく。


 敵ダンジョンを中心に周囲1キロ四方を私のダンジョン領域とした。


 私とタケルはダンジョンから少し離れて、ワゴン車を出し車内で休息する。


『状況連絡、現在敵ダンジョン前を制圧した。

 ウェアウルフ軍団がダンジョンを攻略中。

 20時間以内にコアルームまで攻略しろと指示してる。

 内部が不明なので攻略の時間予測は無理かな。

 のんびり待ちましょう。

 以上』


「タケル、何かある?」

「俺のダンジョン攻略も、こんな感じで待ってただけ?」

「時間指定以外は同じ、私は寝てたし」


 その答えにタケルはがっくりとうなだれた。

 俺の防衛体制と防衛の仕組みが…… とブツブツ言ってる。


『私は寝るね、何かあったらタケルに連絡して起こして。

 おやすみーー』


『おやすみなさい、お嬢様』

『おやすみなさい』

『ね、寝るのか…… おやすみ』


「タケル後はよろしく」

「おk……」


 椅子を倒して横になる、疲れてたのですぐに眠りに落ちた。


……

…………

………………


 数時間して目が覚めた。

 目を擦りながら起き上がる。

 ぱっと見た限りウェアウルフの外にいる人数は減ったが、まだダンジョン攻略をしていた。


「おはようタケル、何かあった?」

「おはよ、特にないかな。

 ダンジョンの出入りは多いけどね」


「そか、タケル寝ていいよ交代しよ」

「いや、このままか見てる。

 ウェアウルフも楽しそうだし」

「そか」


「サクラは参加しないのか?」

「私は正面攻撃はパス、得意な人におまかせ、タケルは?」


「俺も正面攻撃は無理かな、インドア派だし。

 でも、いざという時のために戦える力が必要だと思う」


「ふむふむ、うふふ。

 実は私も最近正面攻撃を鍛えた。

 それなりに強いと思う。

 でも、逃げるのがもっと強くなった。

 満信は出来ないけど、本気で逃げたら捕まえるのは困難だと思う」


「そうなのか、今度教えて?」


「うん、機会があったらね。

 タケルも、まず逃げる事を鍛えてから攻撃も鍛えよう。


 私の方針は、奇策、裏策、奥の手、隠し手を持って。

 正面はしない!

 逃げてからの逆襲だ!

 か弱い少女は正面に立たない!

 ですよ」


「か弱いのか…… ギク」


 横に振り向き「そこから先を言うと……」


「ヤベ、今の無し」


「よろしい。

 とにかく、とっても危険な私達は死んだら終わりなの。

 だから、何があっても生き残これる力を付けようよ」


「確かにそうだな、生き残ってこそ目的に走れる」


 タケルは、何かを決めたように頷き、正面を見据える。

 サクラはタケルの横顔を見ながら、可愛い顔が少しだけカッコよくなったと思う。


……

…………

………………


 その後、数時間過ぎた頃にダンジョン入口が騒がしくなる。

 そして、ウェアウルフキングがこちらに走ってきた。


「サクラ様、コアルームまで攻略しました!」


 すぐさまワゴン車を降りウェアウルフキングを迎えて、音声拡大魔法を使う。


「みんな良くやった! 私はみんなの活躍が誇らしい!

 すぐにコアルームに行く!」


 ウェアウルフの最強チームと私、タケルでコアルームを目指す。


 コアルームに入り、ダンジョンコアをサブコアにして闇収納する。

 外に出て、ウェアウルフ軍団を激励し、祭りの様な騒ぎの後、ウェアウルフ軍団を撤収した。


 静かになった所で。


「毎回これは疲れるな、でも必要なこと」

「だね」


『報告、敵ダンジョン攻略が終わった。

 皆お疲れ様。

 バックアップもありがとう。

 今日はこのまま休みにする。

 明日の朝8時に会議をするのでタケルの会議室集合!』


『おk』

『畏まりました』

『はい!』


『ミッション終了ーー』



「タケル、帰ろう」

「あぁ」


 タケルの背に乗り、連続転移でタケルダンジョンの洋館に行く。



ーーーー



 洋館の寝室に入り、ベッドに腰掛けて今後の予定を考える。


(ラビ今いいかな?)

『はい』


(今、手元に休止中のサブコアが2個ある。

 これをサブダンジョンにしたいがサブマスターが居ない。

 何か対策ない?)


『有ります、サクラが高知能持ちのモンスターを召喚してサブマスターにします』


(なんと、そんな簡単な方法が有るとは。

 お勧めのモンスターはなに?)


『そうですね、ハイエルフが知能が高くコスト的に良いと思います。

 ただし、戦闘力はあまり強くありません。

 Lvの高い魔法を多く覚えれば遠距離に強いですが、コストが高いです』


(問題ない、危険なら他のダンジョンに転移で逃げればいい。

 ラビありがとう)


『いえ、何時でもどうぞ』



ーーーーーーーー



 翌日の朝8時に会議室に集合した。

 私の前にトウカ、タケル、アサカが並んでいる。


 私は皆の前、大きな会議机の上に小さな座布団を2個出す。

 その上に2個の水晶球の様な透明なダンジョンコアを闇収納から出す。


「これは休止中のコア」


 少し沈黙し、3人が休止中のコアを見るのを待つ。

 そして右のサブコアに手を差し出し。


「これが今回ゲットした中国地方のダンジョンコア」


 そして、ゆっくりと左のサブコアに手をかざす。


「こちらは皆んなに会う前、北海道に有ったダンジョンの物 だ。

 そのダンジョンマスターは私が殺した」


 3人が驚きに目を見開く。


 トウカは思う、私に会う前にダンジョンと戦い倒していた。

 初めて会った時を思い出す。

 あの時の能面の様な顔と殺気を感じた微笑。

 真実の一端がここにある。


 タケルは心の底から震えた。

 一歩間違えたらその隣に俺のコアが並ぶ幻視が見えた。

 ヤバイ、死ねる。


 アサカも心の底から震える。

 殺し殺される現実が、圧倒的実感として目に前にある。

 過去の常識などここには無いと心から理解する。

 うかつな事をしたら今度こそサクラは私を捨てる。

 この際倫理は棚上げ、いや消す。

 私の知識や技術でサクラのサポートに徹しよう。

 心の底から決める。



 サクラは単に休止中のサブコアを出して演出し、秘密の事と、使い道を話すためだけだった。

 3人の驚き過ぎの顔に心の中で首を傾げた。


 3人が落ち着くまで待つ。


 そして話し始める。


「ここに有る様に、私には秘密がとても多い。

 私の秘密を推測したり予測等の考える事はいい事だ。

 タイミングよく聞いたり推論を披露するのもいい。

 話す時もあれば秘密の時もある」


 少し時間を開け続ける。


「問題は、信用や信頼等のキレイな理由で問正す奴を私は信用しない。

 秘密を気にしない奴は秘密を聞いてもさして気にしないし、聞いたら「いや聞かない方が良かった」とすら言う。


 だが、秘密を気にする奴は秘密を聞いて更に奥やその他の事を気にし、疑心が募る。

 秘密を気にし過ぎる奴は信頼できない。


 最悪なのは、秘密とも思っていない事を秘密にしたと攻め立てる奴だ。

 一番信頼できない人の出来上がりだ。


 何が言いたいかと言うと、秘密を考え推論する事はいい事、相談もいい。


 だが必要以上に問いただす事や、秘密を理由に何かをすることは危険、マジ危険、死の危険だ。


 理解したか?」


 3人が真剣な顔で答える。


「了解しました、お嬢様」

「分かった」

「当然です」


 3人の顔を一人ずつ見て「よろしくね」と笑顔で答える。

 3人が少し震えた気がしたが気にしない。




「次に、この休止中のサブコアの使い道だが、一つは中国地方にサブダンジョンを作る。

 もう一つもサブダンジョンがいいと思うのだが、私の奥の手として活用を考えている。


 ここで問題が出る。

 新しいサブダンジョンのサブマスターは誰か?」



 そして、席を立ちドア付近に立ち、ドアに向かって声をかける。


「ニイイチ入れ」

 ドアの向こうから「はい」と返事がする。


 ドアのノブが回され人が入ってくる。


 銀髪の長い髪に翡翠の瞳、長い笹の葉耳、映画スターも裸足で逃げ出すような美人が入ってくる。

 身長は160程のスレンダーな少女とも大人とも見える綺麗な女性だった。

 服装は動きやすそうだが優雅な民族風のドレス。


 ドアを閉めてサクラの横に立ち3人に向く。


「ニイイチ、挨拶しろ」


「皆様初めまして、サクラ様に召喚されたハイエルフのニイイチです。

 よろしくお願いいたします」


 と言って優雅なお辞儀をする。

 さすがハイエルフ、マナーも立派だった。

 3人も立って簡単な挨拶をした。


「ニイイチが中国地方のサブダンジョンのサブマスターになる。

 席に座ろう」


 私が3人の対面に座り、その右隣にニイイチが優雅に座る。


「ニイイチはハイエルフで知能が高い、サブマスターの役目を十分に行う。

 今後、マスターの無いサブコアには私が召喚したハイエルフに担当してもらう」


 アサカに向き強い調子で呼びかける。


「アサカ!」

「はい」


「アサカには重要な役目を命令する。

 今後、ハイエルフのサブマスターが数百、数千、数万と増える。

 その管理をアサカにしてもらう」


「はい……」


 アサカは何をするのか不安で、返事に力が無く顔も戸惑いを浮かべた。


「今は、何をするか不明で不安だろう。

 だが、心配するな。

 徐々に組織は作っていく、する内容も徐々に決まっていく。

 組織を0から私と共に一緒に作っていく。

 だから心配はいらない。


 今必要なのは覚悟だ!


 今後、数千数万のサブダンジョンとサブマスターをまとめる覚悟だ。

 その覚悟を示せ!」


 不安そうだったアサカの顔が徐々に決意の顔へと変わっていく。


「了解しました! このアサカがやってみせます」


「よし!

 今アサカに眷属使役(極)Lv MAXを追加した。

 アサカ、ニイイチ立て。

 ニイイチをアサカの眷属にしろ!」


 アサカとニイイチがその場で立つ。

 そして、アサカの手がニイイチに向けられ【眷属使役】の魔法が行われた。

 アサカが私に向き。


「眷属にしました」


「よし、これでアサカが管理するハイエルフと眷属リンクで連絡や会議を行え。

 ただし、アサカは私の眷属であり、アサカの眷属も私の眷属になる。

 アサカの眷属を何でも自由に出来る訳ではない。

 より上位の私の命令が優先される。

 それだけは忘れるな、いいな」


「はい、肝に命じておきます」


「よし、二人とも座ってくれ」


 その後いろいろ説明や相談と雑談をし、タケルと共に中国地方に行きダンジョンを最適な場所に生成。

 ニイイチとトウカとアサカを呼びニイイチをサブマスターに登録。

 そしてダンジョンをみんなで作る。


 集合部屋は、小さな洋館と庭だけの物とした。


 深夜には九州を除く全国にリトルダークウィスプを放出した。



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