目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第31話 ザンガ


 その後十数日使い、近畿地方、中国地方、四国地方の刑務所を襲撃した。

 しかし、囚人がほとんど居なかった。

 他の場所に移したようだ。


 暴力団はこの地区に多く、アサカの情報収集能力が高いため多くの場所を襲撃し、活動資金を入手する。


 その後、調査の名目で各地を全員で観光し鋭気を養う。


 老執事が保護者、美女がなぜかお姉さんと言い張り。

 小学生低学年の小さな女の子と男の子。

 タケルは最初は「子供にするな!」とプリプリしていたが、私と一緒にはしゃいで遊んでいた。

 やっぱり勇者タケルである。




 次の標的、九州のダンジョンを調査する。


 九州のモンスター被害は鹿児島、宮崎、熊本の広大な範囲にあり、大きな白狼の単独襲撃だった。


 襲う場所も時期も周期もバラバラで、見かけても野山を高速で走るため、全く追跡が出来ない。


 足跡も途中で消え行方がわからず。

 上空からの監視も効果が薄く、ダンジョン対策部隊の探索も見つけられなかった。



 4人で会議をしたが、あまりに広範囲のため私一人で転移捜索にした。

 ワゴン車に食料や水とキャンプ用品を積め、闇収納して九州に出かける。


 私の作ったダンジョン領域を眷属に転移許可をすれば、眷属を呼ぶ転移が可能なのを知り、今までの苦労に泣いた。

 しかし、一緒に行動する時は私しか転移できないため抱っこは必要だった。


 十数日賭けて九州全域を捜査しダンジョンを見つける。

 明日の朝に九州ダンジョンに訪問する事を3人に連絡する。

 それまで遠くに移動してワゴン車で寝た。


 9時頃ダンジョン前2キロに転移、相手は既に気ずいているだろう。

 ダンジョンに向かい歩いていく。


 ダンジョンに近づくと、ダンジョン前に背の高い白髪の男が立っていた。

 更に近づくと、頭の上に尖った耳とお尻に尻尾が揺れていた。


 身長190ぐらいで、よく見ると白では無く白銀の長い髪、顔はイケメンで刃物の様な鋭利な目、ジーンズのジャンバーにジーンズのズボンと山岳シューズ。


 よく見たくて更に近づき6メートルほど近づく。


 思わず「じゅ、獣人だーーーー!」と叫ぶ。


「ちげーよ、そんなチャチな者じゃねーよ」


「で、伝説のヤンキーだーー、初めて見る!」


「ヤンキーじゃねーよ! 伝説でもねーよ!」


 私は目をギラギラさせ手を上げてにぎにぎした。


「耳と尻尾を触っていい?

 ね触らせて! ね、ね! 触らせて!

 夢にまで見た伝説のもふもふだ!

 夢の異世界はここに有った!!」


 男は後ずさる。

「おま、お前はヤバイ奴か?」


 走り寄って抱き着こうとした、が避けられヘッドスライディング。

「ひどい!」

「いや、わけ分かんねーし、何しに来たんだ!」


「よし! 分かった、眷属だ!」

「何だよそれ?」


 スクッと立ってパンパンと服に付いた枯れ葉を叩き、真面目な顔で。


「私はサクラ、君を配下に勧誘に来た!」

「へ! お前みたいな幼女は帰って寝てろ!」

「私は17歳だ!」

「マジか?」

「マジ」

「どう見ても幼女にしか見えん」


 男に指を突きつけ。


「お前を倒して私の配下にする!」

「かわいい宣言だなおい、親は何処だ? 迷子か?」

「ダンジョンマスターと分かってるだろ、親も居なければ迷子でも無い!」

 男は頭を掻きながら。

「あーーマジか、女、それ以上に幼女とは戦えないぜ」


 私は両手を上げて小さい握り拳を作りファイティングポーズをとる。

「よし、今からこのパンチをお前の顔に当てる!」

「無理だ…………」


 即座に【催眠】男はバタリと前向きに倒れ、10秒待つ。

 近づいて思いっきり右頬にパンチして、そのまま頬を押してグリグリする。


 男は倒れて顔が横に向いたまま目をパチと開ける。


「オラオラオラ、頬を叩いたぞ、グリグリグリ」

 拳をぐりぐりする。


「え? マジか! 油断した」

 男は、すかさず立ち上がりバックステップで離れる。


 私は左手で右足を指しながら。

「次はこの足でお前を踏む!」

「バ…………」

【催眠】前に倒れ、10秒後に頭を思いっ切り踏みつける。

「オラオラオラ、跪け!」

「ちょ、何で!」


 すかさず立ち上がりバックステップ2回で男が離れる。

「マテ! タイマンだ! タイマンで負けた方が配下だ!

 ただし睡眠は無しだ!」

「よし、受けた!」

 この獣人は脳筋でバトルジャンキーだ、ちょろい。


 50メートルほど離れて向き合う。


「オレの本当の力を見せてやる! 【獣化】」

 男の輪郭が崩れて大きく脹らむ。

 輪郭が戻った時には、高さ3メートル強、幅2メートル、奥行き8メートルの白銀の狼が現れた。

 何故か変身時に服が消える謎仕様だった。


(ラビ種族何?)

『神獣種のフェンリルです、種族変更にDPをほとんど使たと推定します』

(睡眠耐性無かったしね)


 私は【物理防備強化】【魔法防御強化】をした。

 そして石を拾い。

「この石が落ちたら開始でいいかな?」

『良いぞ』と渋い神秘的な声が響く。


 私は石を上に投げる。

 大きく上がって落ちてきて、地面についた瞬間【麻痺】

 フェンリルは地を蹴る瞬間の形で固まり、ゆっくりと横に倒れる。

 私はトテトテと歩いて行く。


『ちょ、お前卑怯だ!』

「睡眠は使ってません」


『タイマンは拳で戦うものだ!』

 私は手を見せる。

「こんな小さな手に拳って、それでも男?」


 フェンリルの顔に近づき拳で何度も叩く。

 しかし、ダメージが無い。

『そんなヘッポコ拳をいくら当てても、オレは倒せないぜ!』


(ラビ何とかならない?)

『インパクトハンマー付与の金属バットでダメージが出ます。

 込めた魔力の分だけ衝撃を増加させます』

(それ出して)


「やっぱりこの手じゃ駄目ですね。これ使います」

 小さなダンジョン領域を作り、金属バットを出して右手に持つ。

 次に、回復と各種補助を持ったハイピクシーを召喚、ダンジョン領域を削除する。

『へ、そんな棒でオレは傷もつかないぜ』


「いくよーー」

 インパクトバットを両手で持ち、顔を左右に滅多打ち。

『ブハ、がは、グホ、…………………………』

「降参?」

『これぐらいで負けるか、ぺっ』

【麻痺】

「魔力調節が難しいな、多すぎて殺したら困るし。

 脚で試すか?」


 と言って脚に向かい思いっ切りブチ当てる。

 ズゴーーン、と衝撃と共に足が折れる。

 残り3本も続けて折る。


「降参?」

『負けん、オレは負けん!』

【麻痺】

「あんまりやると死ぬから困る」

『オレは死んでも負けん!』


「ピクシー怪我の治癒をこの狼に」

「はーい、任せてー、【治癒】」


 【麻痺】4脚折る、【治癒】

 【麻痺】4脚折る、【治癒】

   :

 【麻痺】4脚折る、【治癒】


『マテ!』


 【麻痺】4脚折る、【治癒】

   :

 【麻痺】4脚折る、【治癒】


『分かった、負ける』


「そうか、私に屈服してすべてを捧げるか?」

『負けは認めるが、屈服するか!』

 【麻痺】4脚折る、【治癒】

   :

 【麻痺】4脚折る、【治癒】

『負ける! 屈服する! 許してくれーー』


「あと1万回ぐらいやるかなーー」

『止めてくれーー 全てを捧げるからーーーー』

「そうか、嘘は無いか? 誓うか?」

『無い、誓うから、止めてくれ!』

「私が本気出すと、君は1秒で死ぬからね。

 嘘をついたら10万回のお仕置きですよ」


 殺意に溢れた能面の様な微笑をフェンリルに向ける。


『分かった、分かったから、絶対嘘はつかない!』

「よし、ピクシー治癒と状態異常解除おね」

「はーーい」

 完治して麻痺が消えてもフェンリルはそのままブルブル震えていた。


「私の前に正座!」

「はい!」


 獣人形態になり正座する。何故か服を着ている謎の仕様だが、魔法が有るのだ、フェンリルスキルに服自動脱着が有ってもいいと納得する。


「名前何?」

「ザンガ」

「ダンジョンのコアまでは近いの?」

「近いです」

「モンスターは?」

「居ません」

「ちなみに聞くけど、獣人と獣化ってフェンリルのスキルで服等は自動に着れるの?」

「はい、フェンリル種族スキルです。

 服は魔素で出来ていて、コアの出した物は勝手に着ています」

「それは凄い!」

「はい、便利です」


「君は私の眷属になる。

 君はダンジョンマスターから私のモンスターに変わり、生殺与奪権は私が持ち、私の命令には従ってもらう。

 私が死ぬと君も死ぬ。

 いい?」

「はい」


「では眷属の魔法を使うので、頭の中で眷属の了承が聞かれ、それに了承と答えて」

「はい」


 私はザンガに右手を向け【眷属】の魔法を使う。

 頭の中に《眷属の魔法を使いました》そして《相手が眷属を受け入れました》と響く。

「しました」

「よし、コアまで案内して」

「こちらです」


 ザンガの案内で短いダンジョンを進みコアルームに着く。

 ほんとに短くモンスターも居なかった。

 始めたばかりの感じだ、それも一人でKPを稼いでいた。

 よく今まで生きていたと思う。


「コアをサブコア化するのに10分かかるので待て」

「はい」


 コアに手を当て【サブコア宣言】と発言する。

 頭の中に《サブコア宣言が発動されました10分お待ちください》とアナウンスが流れる。


「一人でやってたの?」

「はい、DPをフェンリルに使い過ぎて……」


 私は肉弾に特化した人やモンスターと正面から戦ったことが無い。

 元々とコソコソが私の重要戦略だった。

 でも、最近の経験でこの戦略が崩され飛行球を得た。

 重要なコアも隠してある。

 今後のために正面戦闘力も鍛えよう。


 正面戦闘が強いザンガと模擬戦をすれば鍛えられる。

 ザンガと肉弾で戦って勝てる様になれば最高だ。

 試そう。


「肉弾に限定したらザンガに勝てるかな?

 試してみたいな、今度模擬戦しよう、いい?」

「ぜひ! お願いします」


「私は、正面戦闘より隠密暗殺超特化のピーキー仕様なの。

 ちなみにマスター番号は157ー23279て言ったら分かる?」

「げっ、チョウヤバイ番号、マジ?」


「マジマジ、数十万人殺してるよ」

「アカン、マジモンの危険人物、逆らったら死ぬ。

 姉御と呼び、御使いいたします」


「好きにしていい、ただし後でモフらせて、拒否権はない」

「ぐふっ、分かりました人肌脱ぎます。

 しかし、姉御の容赦の無い行動とあの怖い微笑が理解できた」


 10分後、ゴゴゴゴと音と振動が響きコアルームの入口が消える。

 コアは透明な球体になり休止状態となる。

 すぐにコアを闇収納する。


「これで、全日本制覇だ!」


 後ろでザンガがその言葉に震えた。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?