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第44話 ダンジョン対策部隊に捕まる


 時が少し戻り。


 目標NO2の日本に不利益を行う者を調査している時期。

 アサカより緊急連絡が入る。


『すみません、ダンジョン対策部隊に捕まりました……』

『え! 今どこ?』

『都内のビルの地下室だと思います』

『分かった助けに行く、それまで頑張れ!』


 ザンガと一緒に転移で日本に戻る。



 日本での暗躍が始まると共に、アサカは人間のLv保持者として精力的に動き回ていた。


 何処かで行動を見らていたようだ。

 そして、捕まるまでの経緯を聞く。


 有力な情報を入手したので、関係ある政治家の調査のために接近した時。


 油断し過ぎていた。

 人通りが少ない道でワゴンの近くを歩いた時、結界が張られ周囲に隠れていたダンジョン対策部隊に気づく間もなく、一瞬に目隠しされ捕縛と共にワゴンに載せられ、ビルの地下室に連行される。


 アサカは人間に扮している為、無闇に力は使わなかった。


 目隠しが取れた時には部屋の中で椅子に縛られていた。


 転移不可の結界と、外部に対する魔法が妨害されて魔法ができず、脱出が出来ない。


 体内に対する魔法は問題が無いので、物理や魔法防御系や各種補助魔法は切らせずに掛けている状態だった。


 何故すぐに殺さないのか不思議だが理由があった。

 アサカはダンジョンマスターに協力する人間と思われていたのだった。




 なるほど、ダンジョンマスターの協力者の情報はインターネットの何処にも無かった。

 しかし対策本部や部隊の中では知られている秘匿情報の様だ。

 これ以外にも多くの情報が秘匿されているだろう。

 対策部隊の情報は侮れない。

 事実、私達も魅了と眷属で人間の協力者を作っている。




 アサカは壮年の男に強い口調で尋問されている。


 何を協力しているのか?

 どこでマスターと会うのか?

 ダンジョンマスターの情報を吐け!


 そして強く聞かれるのが、北海道の刑務所襲撃から日本の被害内容が突然変わった、その理由を話せ、と尋問されてるらしい。


 アサカには一切の情報を出さない様に念を押す。

 私がでは無く、管理者がアサカを消すから。


 ダンジョン対策本部も馬鹿では無い。

 被害の状況を分析し、ダンジョンマスターがどの様に動くかを理解し、次の動きを予測して罠を張ったのか。


 まあ、これだけ派手に動けばバレるか。


 東京のダンジョンコアルームに転移して、アサカのいる方向を感知する。

 高Lvの眷属魔法には、眷属のいる方向を感知する。


 ダンジョン管理領域視点を感知方向に向かって飛ばすが、結界により見えなくなる。

 直接行って場所を特定するしかない。


 私は高硬合金の金属球に憑依して、パペットドールを闇収納する。


 ザンガとの模擬戦以降何度もザンガと模擬戦をした、それもエンシェントフェンリルになった以降も。


 もう、防御の薄いエレメントでは無い。

 高硬合金に【物理強化】(極)の強化魔法、それにインパクトハンマーを付与した金属球の攻撃力。

 過去の恐怖を糧に、今できる最高の防御と正面攻撃力を得た。

 なおかつ体内魔法は有効であるため、私の正面戦闘力に不利が無い。


 でも、あの時の恐怖を思い出すと、今だ震える。

 その恐怖を感じたダンジョン対策部隊に会いに行く。

 私が見えた巫女の精鋭部隊だろう、今でも怖い……

 いつかは対峙すると思っていた、それが今日だった。

 覚悟を決めよう、私の目的のために。


 決意も新たに【物理防衛強化】【魔法防御強化】で防御を高め【インビジブル】で消えて管理視点が切れる手前の上空に転移。

 アサカのいる方向へ進み結界に入る。

 そのまま進み、数回アサカの方向を探知してビルを特定。

 ビルの外から周囲を周り三角測量の方法で、アサカの場所を探知で特定した。

 やはり地下1階のようだ。


『アサカ、近くに来ている。気が付かないようにしろ』

『はい』


 私は2センチの金属球、ビルの空調施設の隙間を強引に広げ入る。

 迷路の様な空調ダクトを何度も行き来してアサカが囚われている部屋に到着した。


 空調設備の隙間から部屋を見ると、中にいる巫女衣装の若い女性が空調設備を既に見ていた。

 やはり、インビジブルをしても私を感じている様だ。

 しかし、他の人間は気づいてない。


 だが、巫女は不思議そうに空調の出口を見ている。

 確信が無く、気になる感じで見ている。


 巫女は一体どの方法で私を感知する?




(ラビ、なぜ私だけ感知する?)


『確信は有りませんが、サクラの持つ魔素濃度かコアの存在を感知している可能性があります』


(コアは遠くにあるけど?)


『コアのAI情報体はサクラの意識と共にここに居ます。

 コアの外見は、ここにコアが有りますと言う魔素でできた飾りです』


(アレ、飾りなんだ…………

 何か深く考えると寝れなくなるよ)




 部屋は約20畳の大きさ、四隅に何やら札の貼った装置がある。

 あれが魔法を外部に使用できない様にしているのか?

 知らない情報が多いな……

 飛行や付与は内部の魔法、問題なく機能する。


 室内の中央に縄で椅子に縛られた人間姿のアサカが居た。

 その前に壮年の男がアサカに大きな声を上げて「話さねば殺す」と脅迫している。


 その近くに巫女の女性が立っている。

 その他、6人の剣や盾や杖を持った男女が周辺に散らばり警戒していた。


 私は、空調の隙間を抜けて部屋に入る。

 今は見えないので巫女の女性以外気が付いていない。

 巫女の女性も何か居ると目で追うが見えないため、緊張のまま視線だけが私を追う。

 巫女の正面1メートル離れて顔の高さに浮き。


「やあ、こんばんは」


 と小さな少女の声で話し掛け、インビジブルを切る。

 その声に反応して室内にいる全員が瞬時に私を見る。


 そこには僅か2センチの金属球に2対4枚の笹葉形の半透明な羽を持った金属球が浮いていた。

 ほぼ全員が驚愕の表情で金属球を見る、室内は静まり返り誰も声を出さなかった。


「私の前に居る巫女の女性が、この結界を張っているのですか?」


 壮年の男はゆっくりと私から離れていく。

 剣を持った男が前にでて、瞬時に剣を抜き斬りかかろうとする。

 金属球は瞬間加速で消え、剣の横に方向に行きカクと軌道を変えて剣の腹にインパクトハンマーを当てる。

 剣はバキンの音と共に柄の近くから折れ、剣先がくるくると回って壁に刺さる。

 剣の男は強烈な衝撃で手が痺れ、剣の柄がゴトリと落ちる。


 誰一人金属球の動きが見えなかった。

 剣の男の前に静止している金属球はゆっくりと巫女の前に戻りながら話す。


「私に攻撃行動をしなければ、今のところ攻撃はしません。

 宜しいですか?」


「お前は誰だ!」と壮年の男が怒鳴って聞く。


「モンスターです」


 壮年の男は少し離れた位置から怒鳴る。

「怪物は死ね! 命令だ! 全員かかれ!」


 金属球は一瞬で消え壮年の眉間に当たり、パンの音と共に壮年の後頭部が弾けて後ろの壁に脳梁が飛び散り、壮年の男は焦点の合わない目で崩れ落ちる。


 息を呑む声と、女性の小さな悲鳴が聞こえる。


 壮年の男の顔が有った位置に静止している金属球はゆっくりと巫女の前に戻りながら話す。


「もう一度言います。

 私に攻撃行動をしなければ、今のところ攻撃はしません」


 物音一つ無い、静寂に包まれる。

 巫女の前に戻り話を続ける。


「私はダンジョン対策部隊を殺したくありません。

 近い将来、日本は大変な状況になるでしょう。

 その時、日本を守れません。

 力ある日本人が多く必要です。

 だから、私は力あるダンジョン対策部隊と戦いたく無い。

 結界を解除してください」


 巫女が聞く。

「何故?」

「答える事ができない」


 私は内心ヒヤヒヤだった、いつ管理者に消されてしまうかと。

 消されてしまえば私の目標が潰える。

 恐ろしい程の恐怖が私を襲う。

 しかし、私は目的のために話す。


「あなた方には2っの選択がある。

 結界を解除して開放するか、私が貴方を殺して結界が消えるか。

 選んで下さい」


 巫女は悩み始めた、周囲の仲間を見て悩んでいた。

 杖を持った男が部屋の四隅にある装置に近づき手をかざす。

 札がひらりと落ちて杖を上げる。


 金属球は一瞬で消え、杖の男の腕をインパクトハンマーが無い状態で貫いた。

 杖の男は貫かれた威力でドンと腕と体が後の壁にぶつかる。

 そして腕を押さえて呻きながら壁からずり落ちる。

 全員が杖の男を見た。


 少し血で汚れた金属球が巫女の前に戻りながら。

「対策部隊は殺したく無いが、次は殺すよ」

 とても冷たい声が室内に響く。


 巫女の前に浮遊して。

「さあ決断を」


 巫女は勝てないと思い知った。

 周囲も同じ様に勝てないと感じていた。

 なればこそ、ここは生き延びることを巫女は選ぶ。

 巫女は顔を上げて金属球を睨み。


「分かりました、結界を解きます」


『アサカ、そのまま動かず人間の様に』

『はい!』


 私はゆっくりとアサカの右肩に乗り、巫女に別れの言葉を送る。


「今後、二度と会わないのが最良の選択です。

 ではさようなら」


 椅子に縛れたアサカと共に、透明な羽がある金属球が蜃気楼の様にフッと消え、部屋が静寂に包まれる。

 全員が元椅子が有った空間を見ていた。

 しばらくして、巫女がハッと気が付き。


「今の録画してあるよね?」

「有ります!」

「全員で分析するわ!」

「「了解!」」


 死体の処理と杖の男の対応は職員に頼み、情報室に飛び込み記録映像、記録音声すべてを回収してダンジョン対策本部に急ぐ。

 杖の男は病院に行くため、今回の事件は上司の判断を仰ぐまで秘匿を指示する。




ーーーー




 このモンスター襲撃事件は、日本で初めて意味のある会話が出来た事件であった。


 この映像が分析された結果。


 会話をしたのは、ただのモンスターでは無く、北海道に誕生した件のダンジョンマスターではと推定する。


 世界中から集まるダンジョンの秘匿情報では、ダンジョンマスターのみ会話があったと記録があり、モンスターの会話記録は無い。


 かねてより疑問だった、日本をまるで助ける様なダンジョンの行動が、ダンジョンマスターの口から実際に日本を守る、と話された。

 しかし、その理由は不明であった。


 近い将来、日本が大変な状況になる。

 その言葉から、何かの原因で日本にモンスター災害が発生すると予測された。


 したがって、将来のためにもダンジョン対策部隊の増強と一般人のLv獲得とLv上げの支援を決定する。


 最後に、「答える事ができない」の発言は、まるで誰かに強制されている様に受け取れる。


 ダンジョンマスターを制限する存在とは何か。

 新たなる疑問が発生する。


 この内容は日本に深く関わる情報であり、明確なメッセージを残して消えた事、その重要性を判断して日本国の最高機密情報として秘匿された。





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