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第4話

4話 アサシン、正式に志願をする。


 この国は、何もかもが元の国とは違い、魔法なんて要らないようだった。

 リモコンと言う物を使えば、部屋を明るく出来るし、部屋を暖かくも出来るし、涼しくすることも出来るらしい。

 テレビやパソコンやスマホと言う、摩訶不思議まかふしぎ娯楽ごらくを楽しむ物もある。

 俺は何回も裏を見たが、誰も居ないのに、人が話をして何かをしているのが映っていた。

 俺の行動を見て玄人げんとと美空は笑っていたが、俺からすれば呪文や魔法を使わずに、こんなことが出来ているのが、全く理解をすることが出来なかった。

 それに食べ物だ! なんなんだよ~この国は? 人をとりこにするような、うまい食べ物ばかりだ。

 元の国では、自白食としても使えそうなぐらいだ。

 玄人げんとの焼きイモもうまかったが、美空が用意していた、ちゃんこ鍋と言う具がたくさん入ったスープも最高だった。

 体も温まるし、最後に食べた玉子入りのおじやと言う食べ物が、最高にうまかった。


★★★★


 風呂と言うのを勧められたので、風呂にも入ったのだが……なんと! 体を洗う石鹸と髪の毛を洗うシャンプーと言う液体があり、使い分けるそうだ。

 石鹸は石鹸で、シャンプーはシャンプーで、とてもいい匂いがしていた。

 使った後の俺の体からも、いい匂いがしていた。


(水浴びしか知らない俺には、なんと言うか……とても幸せを感じる時間だった)


 風呂から上がり、玄人げんとが用意してくれた服を着て、濡れた髪を拭いていた。


「バート、ドライヤーの使い方は分かる?」


 ドライヤー? なんだそれ? 俺は返事を返せないでいた。


「バート、服は着ている?」


「ああ、着ているぞ」


「なら、入るよ」


 マジか! 美空がドアを開けて入って来た。


「うわ~、綺麗きれいな銀髪だ~。アサシンスーツも着ていたし、ウィッグかと思った」


 俺を椅子に座らせて、ドライヤーと手で髪の毛を乾かしてくれている。

 機嫌がいいのか? 美空は鼻歌をかなでながら、楽しそうに俺の自慢の銀髪を乾かしてくれていた。


「はい。バート乾いたよ~」


 ドライヤーを止めて鏡の前に置いたので、もう終わるようだ。


「本当に綺麗きれいな銀髪ね~。バート、ドライヤーの使い方は分かった?」


「分かったぞ、美空。ありがとうな!」


「明日から自分でするんだからね! 分からなかったら手伝ってあげるから言ってね。美空がお風呂から上がったら、後でアイス食べようね」


 俺が笑顔で美空を見ると、美空は顔を赤くして、ニコニコ顔で出て行った。

 髪の毛をまと纏めて、脱衣所だついじょから出て、俺もリビングと言うところに向かった。


★★★★


 リビングから車を見ると、玄人げんとが何かをしているのが見えた。


玄人げんと、風呂、ありがとう」


「おお、大丈夫だったか?」


「ああ、大丈夫だ。玄人げんとは何をしているんだ?」


「美空が明日の準備をしてくれているんだ。これを車に積んでおくんだよ」


 俺も車のところに行き、玄人げんとを見習い、イモを車に積み、まきも車に乗せた。

 準備中に明日、美空が学校と言うところに行ったら、話しがあると言われた。


「バート、アイス食べるよ」


 美空に呼ばれているようだ。

 俺は玄人げんとに背中を叩かれ、2人でリビングに向かった。


★★★★


 リビングのテーブルの上には、売れ残りの焼きイモを切ったような物と、アイスクリームと言う物が用意されていた。


「焼きイモはね~、こんな食べ方もあるんだよ! 修行の1つとして覚えておくといいよ。食べてみて」


 美空から2つの皿を出されたので、まずは知っている焼きイモを……あれ? つ、冷たい……。

 俺には分からないモーイなので、少しだけ食べてみた。

 これはミツがタップリで、ネットリとする食感で、甘くて、うまい。

 玄人げんとと美空は、俺の反応を伺っているようだ。


「う、うまいし、悪魔的あくまてきにうまい甘さだー。玄人げんと 美空」


 2人は俺のリアクションを見て、ニコニコしている。

 美空が説明をしながら、俺にアイスクリームを差し出した。

 出されたアイスクリームは、俺にも分かる牛のミルクを冷やして、固まらせた物らしい。

 スプーンですくい、口に入れた。

 口の中でアイスクリームが溶けていきながら広がる、濃厚でまろやかな甘みに、俺の心も溶けていくような感覚になっていた。


 幸せな状況に、ニヤニヤと崩れていく表情の俺を見て、玄人げんとと美空に言われた。


「バート、顔が面白過ぎるぞぉ~。笑」


「イケ面が台無しだよぉ~、バート。笑」


 美空が最後に、冷やした焼きイモとアイスクリームをうつわに入れて混ぜている。


 仕上がったようで、ニコリと微笑んで、俺に差し出した。


「バート、耐えられるかな? この美味しさに!」


(耐える? ヤバイ物なのか?)


 覚悟を決めて受け取り、大きく深呼吸をして一気に口に入れた。

 頭を突き抜ける衝撃的しょうげきてきなうまさに、俺の意識は飛んでいた。


「バート! おい、バート」


 俺は真剣な顔をしてから、2人に土下座どげざをして、正式に弟子でしい入りを志願した。



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