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境界ノ守護者 ― Code:Guardian ―
境界ノ守護者 ― Code:Guardian ―
鳴海真央
現代ファンタジー異能バトル
2025年05月01日
公開日
2.5万字
連載中
21世紀になり科学技術が日進月歩する世界。 古代に封じられた悪鬼『狂戦鬼』とその配下の『禍影』。 悪鬼たちを封じた世界と人間界の境界が徐々に崩れ始めていた。 人知れず境界を守ってきた”境界守護者(ゲート・ガーディアン)”の血を受け継ぎ、古から伝えられた力である『鎮護八葉力』を持つ少年、神代(かみしろ)マサムネ。 聖竜の力を持つ聖剣を受け継ぐ少女、龍神(たつがみ)ユキミ。 科学技術により、読心能力を持つ少女、石神(いしがみ)ミツキ。 魔の力を持ちながらも、人間に味方した竜を親に持つ少女、神流(かみな)アマネ。 運命の導きにより選ばれた四人の少年少女は、開きかかった境界から現れた悪鬼たちに立ち向かうことを決意する――。

第1話

 息が切れる。足がもつれる。

 それでも、俺は夜の街を、全速力で走るしかなかった。

 俺が必死に逃げる理由。

 それは、背後にいる存在のせいだ。

 気配なんていう曖昧な言葉では説明しづらい。

 夜の闇と同化しているような『ヤツ』は、俺を執拗に追いかけ回す。


「キシャァァァ」


 ヤツの鳴き声が聞こえる。


「くそっ……! なんで、俺が……!」


 追われる理由もわからない。

 今日だって、普通に学校に行って、普通に帰るはずだった。

 けど気づけば、いつもの帰り道は血の匂いと異形の咆哮に満ちていた。


 ――殺される。

 直感ではなく、確信である。

 このまま、終わって、たまるか。

 ヤツが俺の命を刈り取ろうとしたその瞬間だった。


 巨大な刃が俺の体をすり抜けて、背後にいたヤツの身体を斬り裂いたのだ。

 その後、俺の目の前に、銀色の髪で氷のように澄んだ瞳を持つ少女が現れる。

 その手には大きな剣を携えていた。

 刀身は、月の光を受けているからか、淡く光り続けている。


「ここから先は行き止まりだよ、禍影かえい


 少女は両手で大きな剣の柄を持ち、目の前にかざしている。

 淡く光を放つ刀身が、一段と輝き、近づいた禍影と呼んだバケモノが一瞬にして消滅した。

 他の禍影が彼女のもとに吠えながら近づく。

 耳をつんざく異音とともに、空間が歪む感覚を覚えた。

 それでも彼女は、微動だにしなかった。


「――ハァッ」


 薙ぎ払うように剣を振るうと、さっきの大きな刃が禍影たちを斬り裂いていく。

 斬り裂かれた禍影たちは、悲鳴のような鳴き声を上げて、夜の闇へと溶けて消えた。


「大丈夫だった?」


 聖剣を背中に直した彼女は、優しく俺に言う。

 さっきの凛々しさが嘘のように感じてしまい、俺は頷くことしかできなかった。


 ▲▽▲▽▲▽


 ――気がつくと俺は、真っ暗な空間に立っていた。


 そこがまるで宇宙であるかのような空間であるように感じる。

 ただひとつ、確かにのは、燃え盛る巨大な炎だった。

 しかし、この空間には燃やすものがなかった。

 その炎は揺れているが、風が吹いているわけでもない。


 ――燃え盛る巨大な炎の中心に、大きな男が立っている。

 炎に包まれた髪。猛り狂うような瞳。表情は忿怒の形相と呼ばれるものらしい。

 片手に剣、もう片方には縄のようなものを持っている。

 その姿は恐ろしいものがあるが、俺が感じたのは恐怖ではなく安心だった。


「『鎮護八葉ちんごはちよう』の力を持ちし末裔よ」


 声が直接脳に響いた。


「お前にはかつてのの血が流れている。

 お前が出会った禍影という物の怪は、悪鬼が現れる前兆に過ぎぬ。

 その悪鬼の名は『狂戦鬼きょうせんき』と呼ばれる者たちだ」


 その言葉とともに、頭の中に直接イメージが流れ込んでくる。

 黒い炎のような鬼。

 無数の目。

 嘲笑う声と禍々しさを感じる咆哮。

 崩れていく街に泣き叫ぶ人々。


「悪鬼を封じた境界が崩れようとしている。今こそ目覚めのときだ、末裔よ。

 我が名は不動明王。我はお前に力を授けよう。

 守るのだ。境界を。そして――人々を救うのだ」


 次の瞬間、不動明王と名乗った男の腕が俺の中に入っていく。

 抗いがたい強い力を感じる。

 それを受け入れた瞬間。


 ――俺の目に見慣れた天井の映像が飛び込んできたのだ。

 そこは紛れもなく自分の部屋の天井である。

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