異能力者が年々増え続けるこの時代。
やはりそれを利用した犯罪者も増えるもの。
その犯罪異能力者を殲滅するために結成された少数先鋭部隊BLACK D.O.G……
噂の噂とか、都市伝説とか言われているが、実際に実在していた。
元軍隊の大人二名を隊長、副隊長にしてほかは孤児院から引き取った子供を訓練して異能犯罪者を殲滅していた。隊員達が中学生卒業の頃の歳まで迫った時、BLACK D.O.Gは突然解散した。とある記事が原因である。
その嘘か誠か分からない記事のせいで俺らは遂に普通に戻ることを宣告された。
普通じゃないのに?
何も知らない奴らのせいで俺は……
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夏。
こんな珍しい時期に転入生が4人入ってくる学校があった。
私立井中高校。
異能力者を正しく育成するために創設された学校の一つ。異能力者をレベルごとにクラス分けしており
それぞれのカリキュラムも事細かに作られている。
ただ、それ以上に珍しいことはしておらずいわゆる普通の異能力者学校である。
そんな普通の学校に4人も転入生が入ってくるとなると学校中大騒ぎである。
「なぁ、転入生どんな奴らだと思う?」
「えー?そりゃお前、美女美女した可憐で乙女な女子だろー!」
「意味わからない言葉使うな要するに?」
「女の子がいいなってしかも美少女!!」
「んだよ……わかってんなお前~」
と、男子は妄想に耽る。
「ねぇねぇ、転入生どんな子かな?」
「女なら即刻死刑。男なら……んー!ウェルカム!!」
「えーでも、ブサイクだったどうする?」
「えーやだーやめてよ~」
女子は、現実と妄想に揺れ動く。
だが、現実はそんなに甘くなかった。
4人は、ひとつのクラスに一緒に入るし、1人はとある理由でしばらく来れず、しかも、全員男で異能レベル最底辺の"E"だと言われると大騒ぎだった学校が一気にお通夜並に静かになった。
「えーそれでは自己紹介お願いします。」
教室の前に並んだ3人の少年はそれぞれ気だるそうにダラダラと立つ者、背筋をピンと伸ばし軍隊のようにたっているもの、夏なのにピッタリとした長袖をまとっているものとそれぞれおかしい感じの3人組だった。
長袖を着ている少年が前に出て挨拶する。
「どもー!
燃が後ろへ下がり気だるそうな目の下のクマが酷い人が出てきてため息混じりに挨拶する。
「はぁ、
学校に何しに来てんだと全員が考えている中最後の軍隊のようなやつが挨拶を始めた。
「はい。元B…グッ!!」
十三が思い切り足を踏んづける。
「ん"ん"
次は燃が足を思い切り踏んずける。
「えー訳あってこちらに転入して来ました。よろしくお願いします。」
何か、異様な空気に包まれた教室は3人のクラス入りをとりあえず快く思うことにした。
「おま……気ぃつけろって……」
「まじでお願いしますよ。」
「すまない。どうも力が入ってしまってな。」
そんな会話が丸聞こえの中、昨日から異様な空気を放っていた四つの席に案内され3人はそれぞれ座る。3人が座ったのを確認すると教師はホームルームを始めた。
「えー、というわけで、転入生3人のために今日は一日中能力検査日にします。君たちも悪いが参加してくれ。」
能力検査日とは月1回に行われるこの学校の行事のひとつ。
能力がどれだけ成長したかを検査する日である。
とは言ってもこのクラスは何をどう足掻いても地獄でしかない。
3人が転入してきたクラスはEクラス。
異能力レベルの中でも最底辺のクラスである。
クラス全員はすでに検査を終了している。
三人はそれぞれ異能力の威力、耐久、影響持続時間をそれぞれ検査する。
対象が必要なら事前に機械人形で対応する。
まずは、燃。
グラウンドに集められたクラスメイトはそれぞれが興味なさそうにだべっていたり、眠っていたりする。
「おーいお前ら。ちゃんとしないと単位上げないぞ。」
その言葉を聞くや否やクラスメイトたちは黙り込む。
燃は着ている長袖を脱ぐと一気に汗をかき始めた。
クラス中はその光景におえぇとりリアクションするものがいる。
それもそのはず、燃は一般人がかくような汗の書き方ではなく滝のように汗をかいていたのだ。
いわゆる”多汗症”である。異能力のせいなのかそれともただ単に多汗症なのかは分からないが、生まれたときから多汗症としか医師からは診断されなかった。
だから何かというのは話はここからである。
燃は機械人形にその汗のついた手で触れる。
その都度、周りにも汗が飛び散る。そしてわずか数秒もしないうちに汗の跳ねた箇所、触れた箇所が”発火”していた。そして、本人も燃えていた。
クラスの生徒達はその姿にどよめく。
「そうだ、異能力名聞いてなかったな。」
落ち着いた様子の先生がそう言うと火だるま状態の燃がため息か息切れか呼吸交じりに息を整えてその異能名を口にする。
「
その多汗を生かせる最大の異能名
自分の毛穴や口内など穴という穴から出る体液が発火する異能力。
本人はその熱や痛みを感じないが他人からすればただの炎になる。
ただ、この異能力は、自らでコントロールができないのである。
なので、対象物はもちろん自らも含め燃えたままである。
「だれか、消火してやれ~」
先生の落ちついた声に水系の異能力者たちが燃に水をかける。
そして、女子生徒の一人が手を挙げて慌てて先生に叫ぶ。
「先生待って!!そいつ今全裸になって……んじゃ?」
水をかけられた燃は燃える前の体操服をそのまま着用していた。
よく見ると、燃の体操服だけ他の生徒とは違う色で素材のものとなっていた。
「なんでぇ?」
「なんでって、政府にちゃんと書類を提出したからな。特殊な素材の体操服で日用品や部屋に至るまで全部特注品だけしか使ってねぇよ?」
クラス一同はぁ?とどよめく。
それをすぐさま先生は、いさめてそれ以外の説明をしない燃は次の十三へとバトンタッチする。
グラウンドの真ん中に出てきた十三は一呼吸置くと先生のところへと向かい、何かひそひそと話している。先生はうなずき、指をパチンと鳴らす。するとグラウンドは大きな音をたて砂埃を上げ始める。
やがてドーム状の屋根が付いたグラウンドには機械人形と十三の組とクラスと先生の組に分かれた。
「せんせぇーなんで”緊急用”のドーム起動したんですか?」
「それはあいつの能力の影響を受けないためだ。まぁ、見てなさい……ほら、異能名。」
その声に十三はびくりと一瞬震え、唇をもごもごとさせてその異能名をつぶやく。
「な、
その異能名をつぶやくや否や攻撃モードにしていた機械人形が突然、ジジと電気をほとばしらせ壊れる。
その光景に生徒たちは頭上に?を浮かべる。
「先生、機械人形壊れちゃいましたよ?やりなおしじゃね?」
「いいけど、次はだれかあいつと戦ってくれる?俺は判断できない。」
その言葉を伝えると一人の金髪のいかにもな生徒が前へと出た。
「おい、虎が行くってよw」
「まじぃ?あいつ終わったわ。」
そういわれて出てきたのはクラスカーストの上位のヤンキー ”金色の虎”こと
最近いじめていた生徒がついに不登校となったので虎は遊び相手を探していたのだ。
十三の前に立つとがんを飛ばす。
「よろしくね?」
「はい。」
だが、おびえた態度なのは変わらないのに目の前のこの転入生に違和感を覚える。
虎は距離をとるとその体をみるみる大きく毛深くどう猛にしていった。
うなる虎は一気に丸腰の十三へ飛び掛かる。当然十三は身をひるがえし逃げる。
ヤンキー集団はその様子にげらげらと笑うが、十三はその異能力を持ってしまった為に身に着いたことがある。
と、先に十三の異能力についての説明をしよう。
そして、その異能力のせいで十三が身に着けたことは”不幸探知”である。
自分がどう行動すればどんな不幸が起こるか予想ができてしまうのだ。
「あいつさっきから動きおかしくねぇ?」
そう一人がつぶやくがみんなはげらげらと笑うだけだった。
十三が逃げたその先には先ほど壊れた機械人形が転げまわっていた。
「僕にとって今、この状態も十分に不幸だけど……」
そうつぶやくと十三はその”漏電”した機械人形へと身を投げる。
不幸探知のおかげで意図して”不幸”へと飛び込むことができる。
故に
十三はその電気に感電した。それに飛び掛かった虎も同様に感電した。
その様子に先生はため息をつき自らの異能力で機械人形を崩す。
担任:
対象物に自分の”指紋”のついたものを投げることで発動する。
その指紋から破壊エネルギーが流れ込み、ありとあらゆるものを破壊する。
黒焦げになった両者はともに倒れたままかと思ったが十三は何事もなかったことのように立ち上がり零へとバトンタッチした。
その様子にクラス中はどよめく。
「不幸中の幸いって言葉があるよね?つまりそういうことなんです。」
そのふわっとした説明で十三は医務室へと向かった。
そして、迎えた
零は一礼した後、声を発する。
「
Ep1:FIN