異能力のレベルは以下の通りに決められる。
レベルA 自分の思うままに異能力を操る
レベルB Aよりは劣るが、異能力は操れるほう
レベルC 普通に異能力を扱える
レベルD 練習が必要なくらい
レベルE 絶望的、思うように能力を操れない。
また、一切異能力が使えない
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グラウンドに一人の少年が背筋を伸ばした状態で直立している。
担任の合図と同時に軍隊のように手を上げ声高らかに少年は発する。
「
その言葉にクラスメイト達はどよめく。
その発せられた言の葉に担任は感情を忘れたかのように淡々と続ける。
クラスメイトはその異常な担任の態度にさすがに止めようとしたがそれでも担任は黒瀬に続けるかどうか確認し始める。
「あいつは気にするな……黒瀬、続けるか?」
「もちろんです。武器の使用許可をください。」
担任は一瞬顔を変にゆがめると渋々許可した。
許可をとるや否や黒瀬はどこからか出したか、銃を構える。
その光景にクラスメイト達はさらにどよめく。
「先生!あいつ大丈夫なのかよ!銃とかやばいんじゃないの?」
騒ぐ生徒達に誤解のないように黒瀬は試しに発砲する。
もちろん耳をふさぎ目を瞑る生徒達はその無音に恐る恐る目を開く。
都度、黒瀬は引き金を弾くが校庭には何の音も響いてはいなかった。
「お前ら、黒瀬が持っているのはゴム弾しか撃てないカーボン製の銃だ」
全て発砲し終わると黒瀬はポケットからゴム弾を取り出し装填する。
そして、誤解も解けたところで黒瀬は改めて無能力であるとこを言い放つと同時に動き出した機械人形が黒瀬にとびかかる。正面から1体。左右から計4体迫ってくる。
正面の1体、それを機械と認識してか否か黒瀬はまず一撃、膝蹴りを顔面に叩き入れる。
フレームには傷一つついていないが内部に異常があったのか、おかしな機械音と共に機械人形はその場でへなへなと倒れ込む。残り4体、黒瀬は間髪入れずに右2体のうちの1体に手に持っている銃を顔面に思い切り投げつけこちらも内部を壊す。残り1体が手から離れた銃に照準が向いた瞬間に左2体の組み付きをかわし、右にいた残りの1体に思い切りパンチを叩き込む。こちらは顔面に打撃痕が残るくらいのへこみができて
ばたりと倒れる。
殴った当人も負傷したがそんなことは気にならないのか組み付いてきた2体に向きなおりぶつけた銃をとり構える。向けられた銃口は機械人形には威嚇にも何にもならないが黒瀬は間髪入れず向かってくる無機質な人形に息が上がりながらも1体にゴム弾を額の位置に見事命中させる。
機械音を鳴らしながら機械人形は倒れるかと思いきやそのまま明後日の方へと走り出す機械人形の足の関節部にゴム弾を発砲。ゴム弾はそのまま機械人形の膝裏の駆動部分に引っ掛かり顔面から地面に飛び込む。
なおも機械人形は走り出そうと倒れた後も右足だけを動かしている。
その機械人形を一旦放っておき動ける2体目と目を合わせると向かってきた機械人形を近接格闘を開始した
向こうも近接格闘モードになったのか拳を構える。黒瀬も同じように構えると向こうから拳を打ち出してきた。その拳を腕ごとからめとると黒瀬は肘関節を普通は曲がらない方向へと曲げる。すぐに二撃目を繰り出そうとする機械人形の頭を持ち、動かなくなるまで膝蹴りした。そして、銃を持ち直し、地面に倒れ込んでいるもう1体に近づくと人間でいう後頭部に銃のマガジンの角部分で一撃で鎮める。
最後の一体が機械音を立てながら止まった。この3分間、クラスメイトは開いた口がふさがらない者や真面目に動きを分析する者、おびえる者……様々だった。
「どうですか先生。」
「おう、動きはよかったぞ。でも、無能力者なんだろ?レベルとか評価とかはあんまり変わらんぞ。」
「いえ、たまには体も動かさないと持っている実力が腐るので。」
溜息を共に担任は改めてクラスの生徒達を集めて授業を終わる。
そして、転校生三人はまだやることがあると担任を見てグラウンドを後にした。
「ってことで、お前ら次の授業の準備忘れずにな。んじゃこいつらと俺はまだやることがあるから先戻ってなさーい。」
無言でクラスメイト達は教室へと戻る。
その様子を見守った担任は転校生に向き直り、医務室へ向かった難場と合流して別室へ来るように促した。
「てことで、よろしくな~」
「了解でーす」
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体操服から制服に着替え三人は担任が指定した教室へとついた。
進路相談室と書かれた看板を見て三人は教室へと入る。
明るくなっている部屋にすでに担任の我楽がいた。
先ほどとは違った表情で三人を座らせる。
溜息と共に担任及び”新隊長”我楽は立ち上がる。
「どうされましたか、隊長殿。」
黒瀬がそういった瞬間、我楽のため息がもっと大きくなった。
「どうしたも、こうしたもお前らちょいとやりすぎ。」
「えぇ……でも、一応全力出していいって、隊長が言ったんじゃん?」
燃がばつが悪そうにふてくされる。
「限度があるだろうに……難場は仕方ないこととして、燃と零はやりすぎ。特に零。」
「何か問題が?」
我楽は瞼をぴくぴくと動かし、我慢できずに大声でツッコミを入れる。
「大ありだよ!なんだよ機械人形5体をゴム弾を肉弾戦で制圧する無能力者高校生って!それはもう異力者と変わらんの!わかる!?普通=機械人形にボコボコにされるの!」
「大変申し訳ございません。」
「あと、高校生はそんなしゃべり方しない!もう少しなんというか、燃くらい緩くていいの!」
「そうなのか?」
「しらね。」
巻き込まれたくないのか燃はそっぽを向く。
そして、外からコンコンと他の先生が我楽の大声に驚き確認しに来た。
「我楽先生?大丈夫ですか?大きな声が聞こえたのですが……」
我楽はあわてていつもテンションで謝り締め直すと再び同じ位置に戻り、三人に向き直る。
「はあ……とにかく。君ら”元”BLACK D.O.Gはここでは普通にしていてくれ。任務のためだ。」
その言葉に三人は改めて気を引き締める。
BLACK D.O.Gは解散したことになっているが、政府より高校入学するかしないかの時に召集がかかった。
高校に入学し普通の学校生活を送れると同時にここ、私立井中高校から大量に異能犯罪者を出さないように監視を任されたのだ。
なぜか?それは政府に所属している未来視系異能者が未来視で私立井中高校から歴史上最多40名の異能犯罪者が出るという未来を見たそうだ。
「それで、その未来視はどこまで信用できるの?」
「全部信用していい。だが、それは君ら次第だ。」
「”普通”の高校生なんてしらないのに?」
難場がひねくれたように言う。
それに我楽は難しい顔になり謝る。
「すまないな。本当に君らには普通に暮らしてほしいのに。」
「すでに、普通ではないがな。」
黒瀬のその言葉に我楽は目線を落とし何も言えなくなる。
そして、無言で出ていこうとする三人に言い聞かせるように我楽は言い放つ。
「いいか?絶対他の生徒や先生には口外するなよ?」
「わかってますよ~もう行くぜ?俺ら。」
「行きましょう。零。」
「あ、あぁ…では、俺らは、これで。」
「あぁ……頼んだぞ。」
三人が教室から出ていくと我楽は頭を抱えた。
「本当にすまないな。」
その顔は教会の懺悔室にいるような顔になっていた。
Ep2:FIN