とある地下施設。画面を見つめ大きくため息をついた人物は天を仰ぎ、近くの職員を呼ぶ。耳打ちで職員に話し、よろしくと言って再び画面を見つめる。画面の中には瓦礫の中で血だまりで膝をつく少年を見つめる。
「困るよ…№103000……まぁ、施設分の費用にはなってもらうか……」
画面を切り替え
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血だまりに映る自分の顔。
今、僕は何をした?
自分の真っ赤な手を見ながら立ち上がり惨状を見渡す。瓦礫の山と血の海。その中に自分は立っている。これはまずい。このまま僕がこの場にいれば、間違いなく僕は警察に捕まる。
急いで校外へ出る。どこか遠くへ、それか身を隠せる場所に……走っていると声をかけられる。だが、僕は恐怖のあまり後ろを振り返ることができず走るが、銃声と共に僕の足が打ち抜かれる。銃声が鳴った方へ目を向けると防護服に身を包んだ人物が僕に銃を向けている。
「ちょっと~困るな~呼び声には反応してもらわないと~」
「だ、誰ですか……」
防護服の人物はマスクを外し顔を見せる。やせ細った血色の悪い男性。目の下にはクマもあり、今にも倒れそうな雰囲気だ。
「私はね…害虫駆除業者だよ。君がそこの害虫がいるであろう学校から出てきたからね。呼び止めたけど、その必要がなくなったからね。足を撃たせてもらった。」
意味が分からない。そう思い僕はふと自分が来たであろう道を見る。赤い足跡がこちらまで続いており、僕は男性と目を合わせて首を横に振る。
「ち、違います。僕は何も、襲われたから……逃げてきただけで……」
「嘘だね。」
一言バッサリ切られると男性は銃口を僕に向ける。
「さて、君の処遇は……ん?」
引き金に指までかけていたが男性は僕の顔をまじまじと見て銃を降ろす。
「君はもしや
「は、はい……」
男性は僕の名前を確認すると誰かに連絡を取り始めた。
僕はその隙に逃げ出した。
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『今朝のニュースです。芽吹市の高校OWL創立 薬師寺高等学校にて生徒、教師含め謎の大量殺人が行われてしまいました……』
月下琥珀はテレビに視線を向ける。OWLが創立した高校で生徒と教師の大量殺人が行われてたのだが、容疑者不明で校内は何者かに爆破された痕跡があると報道されている。校内はテレビでは映せないほどの惨状になっているという。月下は顔をしかめてテレビの情報を確認する。
「芽吹市か……」
OWL創立と言うのもあり月下はニュースの高校に向かうと決めベルトを持ちコートを羽織った。庭に出るとカバーを被せているバイクに手を伸ばす。カバーを取りホコリがかぶったシートをさわりホコリをなぞる。
「久しぶりに乗るか。」
挿しっぱなしのカギを回しエンジンを始動する。赤いボディのガスガスパンペーラ250が起動するとアイドリング音が庭内に響く。月下は近くに放置していたヘルメットを手に取り中のホコリや汚れを取り頭にはめる。顎紐をしめてスマホをホルダーにセットしてマップを起動し行き先を「芽吹」に設定し、エンジンが温まったバイクのアクセルを吹かして家から出発した。
月下の家から芽吹市までの距離は案外遠く、マップが表示していた時間は60分。月下はその時間を見て悩んだ末に山道へと入り、マップが案内する道とは別の道へ入りマップで表示できない山道を走っていく。道を飛ばし飛ばしで進んでいくため、マップの音声案内は諦めたように黙る。そして30分後、月下はやっと山道から抜け出しマップ内の道へ戻る。それを確認してか、音声案内は再びナビを始める。そして、10分後には芽吹市へと到着していた。高校までの道を入力しているのでそのまま高校まで走る。高校に近づくに連れて、警察やテレビ関係の仕事の人が多く見え始める。速度を落としながら、高校の近くの路地裏にバイクを止めて誰にも見られずに高校に入る術を探す。校門だと大勢の人に見られて目立つ。それならばと裏門へと向かう。その途中、男子高生とぶつかった。月下は体幹が強いのでそのまま男子高生を飛ばしてしまい、尻餅をついた男子高生へ手を伸ばす。
「大丈夫か?」
男子高生は私の手を振り払いそのまま顔も見ずに走り去って行った。何があったんだろうと月下はそのまま裏門へ行こうとしたが、男子高生が走ってきた道を見ると血が伝っていた。
「まさか、あいつが?」
月下は踵を返し少年の後を追おうとしたが呼び止められる。振り返ると、防護服を着た男性が息を切らしながら月下の前に来る。
「こ、あ、今、男子高生とすれ違ってないかい?」
「あぁ、あっちへ走っていったが……」
「そうか良かった。よし、救援要請しよう。」
男性が誰かに連絡をしながら走るのを月下は呼び止める。
「待て。」
「何だい?」
「君の仲間にカラスマという男はいるか?」
「あぁ、いるよ……まさか、君はカラスマが言っていた影虎かい?」
月下が短く返事をすると男性は再び連絡をする。
「……そうだよ。そう、その人、あぁ頼んだよ……さて、影虎とやら。協力してくれ。依頼料は私が出そう。」
「いいだろう。内容は?」
「あの少年を捕まえる。ただ、殺しはなしだ。あくまでも保護が目的の捕獲だ。」
「わかった。いいだろう。」
月下と男性は一狼の血の跡を追いながら住宅街を離れた。
続く。