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【昇陽】狼、虎に咬み付く

動植物異常活性細胞。以降をセル=ディウスと称する。

病気や怪我をたちまちに完治させる「万病に作用する究極の薬」。1960年代に発見されて以降、製薬会社OWLがその研究を続けている。

冒頭に言ったように病気や怪我を完治させる効能があるが大きなデメリットがある。

人の細胞がバケモノの細胞へと変わるのだ。セル=ディウスは人の病気(弱った)細胞を食べてそこへ新たな細胞として入り込む。そこまでは人間にとって有益な細胞だが話をここかだ。取り込んで一週間するとセル=ディウスは周りの細胞へと浸食を始める。そして二~三週間もすれば、体全体にセル=ディウスが行き渡り後遺症が出る。


第一段階。頭痛、吐き気、腹痛。


第二段階。異常な空腹、食欲の急上昇。


第三段階。人知を超えた怪力、五感の全能感。


最終段階。食人衝動、バケモノ化。


そして、人は人を喰らう食人バケモノ。「ディウス」となる。


「……と言った感じかな……解説はどうだったかな?少年。」


明星 一狼は八雲 藤四郎の解説を聞き首を縦に振る。理解した様子を見ると八雲はそのまま話を続ける。


「それで、そのセル=ディウスを悪用しているのが製薬会社OWL…君がいた学校も作っていた会社だ。」


「なるほど。それで僕は、一体なぜそのこんなことになっているのでしょうか?」


「それは分からない。だが、一つ言えることは…おっと、着いたようだ。」


車が停車すると八雲はゆっくりと降りてボロボロのビルの地下へと足を踏み入れた。ワンボックスカーはそのまま走り去ってしまう。


「えっと、車は……」


「あぁ、大丈夫だ。あれは創立者さんの使いの人だから大丈夫。」


疑問に思いつつも一狼は八雲の後ろへついて行く。階段を下っていくとボロボロのドアに「なんでも屋 LWO」の看板が見えた。その看板が掛かったドアを開けると冷房とともにお酒の匂いが鼻孔をくすぐる。BARのような雰囲気の部屋内にはそこに似合わないスーツの男性と筋トレをしている大男と読書をしている落ち着いた雰囲気の女性がいる。ドアの音に反応し八雲の方へ視線が集中する。一狼は思わず八雲の後ろに隠れる。


「どうしたんだい?怖いかい?」


「いや、そうではないんですけど……」


八雲は一狼を前に出すとスーツの男性と会話を交わす。


「この子でも違いないかな?カラスマ。」


「…あぁ、この子だ間違いなく。この子だよ。ありがとう藤四郎。」


カラスマは一狼へ手を差し伸べて歓迎した。


「明星 一狼くん。ようこそLWOへ。」


一狼は困惑気味にもカラスマの手を取り握手する。


「よろしくね。さっそくだけど自己紹介だね……僕はカラスマ。この会社の創立者の一人だ。そこのマッチョは大沢。あっちにいる子は櫻井ちゃんだね。」


一狼は大沢と櫻井へ目を向ける。マッチョの大沢は白い歯を見せて「よろしくな」と元気にあいさつし、読書している櫻井は一狼と目を合わせると無言で会釈する。一狼もそれぞれに会釈しカラスマに改めてようこそと歓迎される。


「さて、自己紹介もこの辺に僕らの仕事内容とかもろもろ紹介していこうかな。」


カラスマが一狼を連れて歩き出そうとしたその時、ドアが思い切り開きカラスマはどつかれて踏まれる。入ってきたのは、これまたこの場に似合わないワインレッドのドレスを着たお嬢様風の女性が入ってくる。そして、一狼を見るなり一気に距離を詰めて手を握る。


「あなた、例の保護対象さんですわね?お会いできてとても光栄ですわ!」


「マリィさぁん踏んでるよぉ?僕のこと踏んでるよぉ?」


「あら、ずいぶん分厚いカーペットだと思ったら、カラスマだったのね。」


ヒールのかかと部分でカラスマの背中をぐりぐりとして退くお嬢様風の女性はドレスの裾を軽く上げて挨拶する。


「ワタクシ、LWO創立者の一人ローズマリー・センチピートですわ。以後お見知りおきを……」


カラスマが立ち上がるとこの場の視線が一狼へ集中した。


「さて、改めて僕らの仕事内容を説明しようか。これから君は身を隠して生活をしなきゃならないからね。」


一狼は視線に驚きながらも頭を下げた。


────────────


製薬会社OWLのビル。最上階の会長室から外を見下ろす製薬会社OWL会長 影戸=T=レクスはため息を吐きながら回転イスへ座り直す。前に向き直ると同時に会長室のドアが開くとスラックスの女性が入ってくる。


「会長。例の件…№103000の件は処分となりましたが、あえなく見失ったそうです。」


「あぁ、そうか。残念だ。」


「ダークウェブの方にも賞金を懸けて出しております。」


「うん。ありがとう。」


影戸の秘書 柊は影戸へ疑問をぶつける。


「会長。なぜ、今回に限ってこんな遊びのようなことをしたのですか?いつも通り我々の班を使えばよろしいかと思ったのですが。」


「ん~……たまにはいいんじゃないかなぁ?人生仕事だけだとつまらないでしょ?」


秘書は呆れた様子で無言になると午後の予定が組まれたスケジュールを持っているタブレット端末から影戸のスマホへ送信する。


「こちらは午後の予定です。ご確認ください。」


「わかったよ。ありがとう柊。」


柊は無言で頭を下げて会長室を後にした。影戸はスマホを手に取りスケジュールを見て次の予定までに時間があるのを確認するとパソコンにある古いパソコンからダークウェブに入り「一攫千金ウェブ」というサイトを開く。そこには明星 一狼の顔写真と情報が載ったページを見る。


明星 一狼 高校生 賞金¥100000000


「一億じゃ足りないかな…まぁ、それならここをこうやって、こうやって。」


明星 一狼 高校生 賞金¥100000000 キャリーオーバー実施。

※一人失敗するごとに+一億※


「こんなもんかな……」


影戸はエンターキーを押すとデータが更新される。更新したあと、影戸はその情報を色々なところへ流す。


「これより、明星 一狼を狩るゲーム……ディウスハンターゲームを開始する。」


続く。

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