インド洋の深海にてその生物は発見された。鉄を纏い深海の底を歩く巻貝。「鱗を持つ足」を意味する”スケーリーフット”またの名をウロコフネタマガイは自らが放出する硫黄と周りの海水から浸透してできた鉄イオンが徐々に反応することで生じる「硫化鉄」纏う巻貝である。
スケーリーディウスは自分の腕に着いた硫化鉄と鎌の硫化鉄を合わせて無理やり大鎌を研いでいき、大鎌のかたちを整え命を刈り取る形を作り出す。それを見る月下は拳を握り隙を伺うが鎌を研いでいるだけなのにこのスケーリーディウスには隙が全くない。一歩を踏み出そうとするが、足がなかなか動かない。
「……ッ!」
「どうした…?来ないのか?俺は隙だらけだぜ?」
「嘘つけ、その手慣れた研ぎ方……私が向かって言ったらすぐに鎌を振り下ろすのだろう?」
スケーリーディウスは鎌を研ぎ終えて構える。月下がこちら来ないのを確認すると一歩を踏み出し大きく重い鎌を引きずりゆっくりと月下へ近づく。ゆっくり、ゆっくり……月下に避ける暇を与えるように……だが、月下はその足を動かそうとしない。いや、動かせない。異様な威圧感と殺気。その威圧と殺気で月下は動けなくなっているのだ。
「どうした?避けないのか?俺はまだ、鎌を振るってないぞ?」
「……うるさい」
スケーリーディウスはそんな月下にゆっくりと近づき鎌を大きく上げる。月下と大鎌の影が重なる。大鎌が縦に向き
素早く振り下ろされる。
『
月下は間一髪ベルトの突起を押し込み、エネルギーが充填された拳で鎌を迎え撃つ。
「とっさにEXを使ったか…さすがは復讐鬼だな。」
「死なないために訓練もしてきたからな…次はこちらから行くぞ……!」
『
再び突起を押し込み足にエネルギーを充填する。スケーリーディウスはその様子に慌てる様子もなく鎌で防御をしようと構えるが、数分待っても月下は攻撃を仕掛けて来ない。まさか逃げたかと鎌を降ろすと月下はその場にいなかった。逃げられたかと月下の後を追いかけようと一歩を踏み出すと月明りに月下の影が重なる。見上げると月下はかかと落としの姿勢で影が重なったスケーリーディウスの上に落ちる。その間、ベルトの突起を何度も押し込む。足に充填されていくエネルギーは鈍く光る赤から眩く光る赫になっている。驚異的なエネルギーに危機感知が働いたスケーリーディウスは手から硫黄を放出し持っている鎌へ流し込み鎌を大きく分厚い盾に変形させていくが、月下の落下時間には間に合わない。
『
『
『
「少し、眠ってもらうだけだ……!!」
盾が形成されるが完全に固まり切ってない硫化鉄は月下のかかと落としを受けて変形し穴が空く。雷鳴のような音と共にスケーリーディウスはその場から離脱し、月下の攻撃を紙一重で避けた。
「………ッ!危なかった…」
「避けられたか…だが、武器は失ったようだな…?」
「だからどうした?」
「これで、お前は私と同じ土俵に立ったわけだ……今度こそ、眠れ。」
「情報は吐かないし、死なない。」
互いに拳を構えて近づく。月下が拳を打ち込むと、スケーリーディウスはそれに合わせて拳をぶつける。互いの拳がぶつかり弾かれる。反動で距離が空くと月下は距離を詰めるように前にステップを踏む。ボディが完全にがら空きになったスケーリーディウスは月下の拳を防御できずもろに腹部に打撃を受ける。だが、スケーリーディウスは気を失わずに月下へ反撃の一撃を浴びせる。
「いやぁ…危ない危ない…スケーリーフットを引いてよかったと心底感謝したよ。」
スケーリーディウスは月下の打撃を受けた箇所を見せびらかすように腹部で生成したボロボロの硫化鉄を払い落した。
「くっ…!」
「EXの乱用はかなり体力を使うと聞いたことがあるが、君は何度使用したかな?」
かなり疲弊した月下は膝を付いてしまう。スケーリーディウスはそんな月下に近づき、月下と目線を合わせる。
「さて、どうしてくれようか……」
「くそが…」
月下はスケーリーディウスを睨みつける。スケーリーディウスは月下の頭を左手で掴むと右手で硫化鉄を生成する。右手の硫化鉄は下に向かって垂れて不格好な刃を形成する。
「君が奪ったオウィディウスシステムを回収する。そして、君を殺す……いいよね?」
「……私は…復讐の……自分の幸せのために…ここで死ぬわけにはいかないんだ……」
バックルを開き、空になった注射器を取り出し、新たな注射器をセットする。
「二本目か……」
「実践するのは初めてだがな…」
『
「二本目で絶対に
熱水蒸気がスケーリーディウスを吹き飛ばすと再び変態した月下が現れる。
「二本目を使用したか……面白い。レポートも兼ねて戦闘を続行しよう。」
「実験……?お前の目の前にいるのはお前の命を乂りとる者だ…足元すくわれないようにしろよ?」
続く。