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【宵闇】竜攘虎搏

オウィディウスシステム記録№─ ─ ─


某日、システムを奪った月下琥珀が職員が戦闘を開始、約20分の戦闘で約12回のEXエクストラチャージを使用し著しくパワーの低下を確認できた。その後、二本目の注射器をセットし使用した。見た目の変化は見られなかったが、体内のセル値の上昇、ドーパミン、セロトニン、オキシトシンそして、大量のアドレナリンが確認できた。


ただ、短期間での連続使用のためかわずか3分ほどでパワーは低下し普段出しているパワーに戻った。


────────────


注射器を使用後約10秒経過───。


月下は今までと違う体の感覚に脳内麻薬が大量に出ている感覚を覚える。にらみ合う目の前のスケーリーディウスとの間合いに一歩で距離を詰めて固めた拳をぶつける。スケーリーディウスは生成していた硫化鉄でその拳を防御するが、月下の拳はスケーリーディウスの硫化鉄を破壊し打撃を貫通させてダメージを与える。ここまでわずか5秒。


使用から約30秒経過───。


吹き飛んだスケーリーディウスはそのままビルのガラスを突き破り転がる。吐血すると月下を迎え撃つために硫化鉄を生成しながら立ち上がろうと膝をついたが、眩暈に倒れそうになる。


「ここまでのレベルの打撃は受けたことないな……」


フラフラと立ち上がり真っすぐ向かってくる月下を待ち構えるが、月下は打撃を打つ瞬間自らの軌道を変えてスケーリーディウスが防御していない脇腹辺りに打撃を浴びせる。

横からの衝撃にスケーリーディウスはビルの壁を突き抜けて隣のビルの中まで壁を突き破る。


使用から約1分経過───。


月下はこの力には時間制限があると動物的な勘で悟り、急いで決着を付けるため、隣のビルの壁を突き破り、スケーリーディウスへ手を伸ばし首を掴み持ち上げる。そのままベルトの突起を押し込もうと左手がバックル部分へ向かうが、スケーリーディウスは生成途中で壊された硫化鉄の破片を月下の左手へ投げて妨害する。そのまま月下の右腕に足で組み付きそのまま体を捻り月下の右腕を使い物にならなく使用と力を振り絞るが、女性の力とは思えぬほどの怪力に驚愕し締まる器官を気にしつつ拘束から解放されようと月下の顔面に向かって絡めた足を勢いを付けて蹴りを叩き入れる。月下はスケーリーディウスの蹴りを受けて首から手を離してしまい、顔を抑えてしまった。


使用から約2分半経過───。



月下の体に変化が訪れる。だんだんと視界がぼやけて全身の力が抜けていくのが分かった。だが、力は溢れているのでまだ時間はあると直感しベルトの突起を押し込む


EXECUTIONエクスキューション


残り25秒。


月下は拳にエネルギーを充填させてスケーリーディウスの元へ走る。スケーリーディウスはその様子に迎え撃つか、逃げるかを自問し即答で「否」の回答を出す。そして、傍にあったガラス製の机に手を伸ばし少しでも月下の拳を受け止める準備をする。月下は鈍く光る赤い拳をスケーリーディウスに向けて繰り出した。


10


9


8


7


6


5


4


3


2


1


月下は全身から力がなくなっていくことを実感し拳の先を見つめる。ガラス机を盾にしたスケーリーディウスは机を構えたままの姿勢で月下と目を合わせる。机は影も形もなくなっており、スケーリーディウスの両腕は焼け焦げてボロボロになっていた。しかし、息はしており肩が上下に動いているのが分かる。


「くそ…これでもダメか……」


「危なかった……薄くても盾をしていなかったら確実に死んでいた……」


互いに距離をとり構えなおす。


互いに満身創痍。


互いに限界を超えている。



だからこそ、なればこそ、互いに引けない。


拳を構えなおすと、月下は息を整え、スケーリーディウスは拳に硫化鉄を纏わせていく。月下はスケーリーディウスの硫化鉄が固まり切る前に踏み込む。スケーリーディウスはそんな月下に慌ててバックステップを踏み避けようとする。そんな二人の間に槍が投げ込まれる。

月下はその槍に動きを止めて距離を取り、スケーリーディウスはそのままバックステップを踏み槍を見つめて安堵する。


「どうやら、時間切れのようだ。」


スケーリーディウスは疲れ混じりの吐息を吐きながらつぶやく。槍の主はビルの上を突き破り降りてくる。砂煙から出てきたのは灰色の体色のディウスだった。


「処刑人ともあろう者が、猫一匹も仕留められないとは何たる醜態だ。恥を知れ。」


灰色のディウスはスケーリーディウスに向かって槍を突き出し罵倒する。


「今回ばかりは油断していた…何はともあれ、来てくれて助かった。」


「ふん…指令だ。『一旦引き上げろ。』とな。」


そんな会話を聞いた月下は二人を逃がすまいと距離を詰める。


「逃がすと思うか?貴様ら二匹とも乂る。」


「はぁ…戦う気はないと言っているのに……」


灰色のディウスはそのままスケーリーディウスの盾になるように月下に向き直る。月下は拳をそのまま突き出し灰色のディウスを飛ばそうとしたが、灰色のディウスはびくともしない。


「この通り、我々に戦闘の意志はない。ここはお互いのためにも引こうじゃないか……」


「こっちは遊んでるんじゃないんだ……はいそうですかと踵を返せるわけないだろ?」


月下は突起を押し込んでエネルギーを充填しようとしたが、心臓がドクンと大きく跳ねてその場にうずくまる。


「体は限界のようだな。」


「く……そ……」


灰色のディウスはスケーリーディウスと共にそのまま踵を返し月下の前から消える。月下はだんだんとぼやけてくる視界と厚くなる全身に危機感を覚えてその場からフラフラと消えていった。


続く。

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