とある一軒家の屋根裏にて、一狼と八雲は懐中電灯で照らしながら屋根裏の状態を確認する。
「八雲さん!これ、本当に仕事なんですか?これ、ただ害虫駆除をしているようにしか見えないんですけど!」
「いや、カラスマも言っていたようにこれ”も”仕事だからね。にしても匂いが強烈だな。ここにはかなりネズミがいると見た…」
懐中電灯で必要なところだけを照らし終わった八雲は懐中電灯を消して屋根裏から降りようとした時一狼が悲鳴を上げる。八雲は懐中電灯を一狼に向けて見ると一狼に二匹のネズミが群がっているのが見えた。八雲は初心者だからしかたがないとため息を吐きながらネズミを追い払った。
「自分より小さい動物に怯えるとはね。」
「ちょ、やめてくださいよ。一応怖かったんですから。」
八雲は一狼に後に続くように言い屋根裏から降りた。屋根裏から降りて八雲は家主に屋根裏の状況を話す。
「屋根裏ですが、確かにネズミがいました。目視で二匹。フンの数的にはあと三匹くらいはいるかと思われます。」
「あら、そうなの~?五匹なんで今日一日でどうにかなるかしら……」
「大丈夫ですよ奥さん。最近ネズミを追い出して寄り付かなくする薬もありますから。今日もその薬持ってきてますし、大丈夫ですよ。うちは安く早く正確に仕事するので。」
カラスマと話していた依頼主は安心すると一狼の方を見て八雲へ小声で話す。
「彼、新人でその精神の病にかかっているってカラスマさんからお聞きしましたけど大丈夫なの?」
「えぇ、全く問題ありませんよ。精神病というか……彼の場合は子供の頃のトラウマがひどいようで、一人に強烈な不安を覚える見たいです。」
「あら、それってPTSDとかっていうんでしたっけ?」
「確かにカラスマもそんなことを言っていましたね。だから、あまり警戒しなくても大丈夫ですよ。」
「あら、そうだったのね…少し申し訳ないわ。」
八雲と依頼主の談笑に一狼は入って依頼主に謎の謝罪をもらい首を傾げた。
「今のって……」
「すまないね……前に君が突っ込んできたときに依頼主に変な説明をしてしまった。君は今、異常な精神病患者から孤独にトラウマを持つPTSD患者になった。すまないね。」
「えぇ……そんな……」
「まぁ、今はそんなことはいいとして、薬を使うにあたってまず屋根裏のフンの掃除をしないといけないからね。掃除をしようか。」
掃除道具を持ち八雲は屋根裏へと向かった。一狼も掃除道具を持ち八雲の後へ続く。再び屋根裏へと来た二人はネズミのフンをほうきで集めてちりとりで取り、袋へ入れていき綺麗にしていく。ついでにホコリも掃除して屋根裏は約数時間で綺麗になった。その際に八雲も一狼もネズミが入ってきたであろう穴も見つけてそれをパテで塞いでいった。
「……あらかた終わったかな。さて、薬を置いて行こうか。」
八雲は高さ5,6㎝くらいの円柱の缶を取り出し並べていく。一狼は防毒マスクを取り出し八雲の置いた円柱の缶の中に薬を入れていく。八雲は一狼の様子を見て同じく防毒マスクを装着し煙をを吸い込まないようにする。一狼はサムズアップをして八雲へ合図を送ると八雲も同じくサムズアップをして一緒に屋根裏から出た。八雲が屋根裏へ通じるハッチを閉めると、二人はマスクを取り息を吐いた。
「大体こんなもんだね。」
「というか、あの薬ってどんな成分が……」
「あ~……あれはね、従来のネズミ駆除剤を使ったものだよ。筒の中に君の持っていた薬をいれて科学の力でなんやかんやさ。」
「え…あれって、ローズマリーさんの会社で作っている物ですよね?」
「ん~私は興味ないことには疎いからな。わからないな…」
一時間後、薬の煙が浸透したであろう時間が経過し一狼と八雲は屋根裏のハッチへ手を伸ばそうとしたとき依頼主のいる台所で大きな音がした。二人はすぐに台所へ向かう。台所へ入るとそこには依頼主の胸を貫くディウスだった。ネズミの顔にカマキリの大きな眼球がついてカマキリの鎌を携えているディウスだ。依頼主の胸から鎌を抜くと依頼主は開眼したままその場に血肉の音を立て、うつ伏せで倒れて絶命した。
「刺客ではなさそうだね……だがしかし、依頼主を殺した君には命で対価を払ってもらおう。」
八雲はベルトを腰に巻き、注射器をバックルにセットし突起を押し込む。
『
「一狼くん、マリィへ連絡を。」
「分かりました。」
熱水蒸気を振り払うと変態した八雲藤四郎がその姿を表す。カマキリディウスは血で汚れた鎌をきれいに掃除し威嚇をする。八雲はすでに肉塊と化した依頼主を抱き上げて体が崩れないところまで運ぶ。そんな八雲にカマキリディウスは威嚇しながら八雲の後ろへ着く。遺体を置くと同時にカマキリディウスは鋭い鎌を八雲の背中へ突き立てようとしたが、八雲は後ろ向きでカマキリディウスの胸に蹴りを一撃叩き入れた。
「君は、今この場で命の……生殺与奪の権を持っていると思っているのかね?」
振り向きながら、八雲は着物を直すような仕草をして台所を突き破ったカマキリディウスを追い外へと出た。煙の中から出てきたカマキリディウスは鎌を手入れし始める。八雲はそんな様子のカマキリディウスへ苛立ちを感じ、カマキリディウスが威嚇をすると同時にカマキリディウスとの距離を詰めてまたもや腹部に一撃を叩き入れる。足で押さえつけられたカマキリディウスは鎌を動かし八雲の足をとらえて八雲の足を食べようと口元まで運ぶ。そんなカマキリディウスへ八雲は、空いた足で頭部へ蹴りを叩き入れる。
「汚らわしい。キミ如きに足を食べられるくらいなら死んだほうがマシだ。あと、私の命を好き勝手出来るのはマリィだけだ……まぁ、虫風情に言葉が通じるとも思えないが……」
八雲はベルトの突起を押し込み足へエネルギーを充填する。カマキリディウスは体勢を立て直すと威嚇の姿勢をせずにそのまま八雲へ突っ込む。
「今更慌てたって遅い。」
『
足に充填されたエネルギーを炸裂させるようにカマキリディウスの胸に当てる。
「後悔する間もなく死ね。」
胸に伝わったエネルギーはカマキリディウスの全身に伝わり、ゆっくりと体が溶解し鮮やかなオレンジ色の体液がその場に溜った。ベルトを外すと連絡を終えた一狼がやってきた。
「八雲さん、連絡終わりました。数分後に来ます。」
「ありがとう。それじゃ行こうか。」
「八雲さん後ろ!」
八雲は振り向くが反応できずウロコまみれの尻尾が八雲を吹き飛ばす。土煙越しに八雲はそれが例のセンザンコウディウスだと気づいた。
「一狼くん……」
「八雲さん……」
「見つけました。明星一狼……」
一狼はベルトを腰に巻きバックルへ注射器をセットする。
『
熱水蒸気を振り払った一狼はセンザンコウディウスとにらみ合った。
続く。