富士山樹海の地下にて、今年もまた目覚めた。その巨体は苔と岩で覆われており体長は圧巻の45m。出現と共に背中や腹部の器官から有害物質を放出する。
特別大災害級怪獣№2 山の怪獣。
そんな№2の対策会議が開かれたのだが会議は難航している。
一隊 隊長
「ん……これじゃどうしようもない気が……」
うなっている理由は対策の内容である。№2はその巨体や体外に排出される有害物質だけでなく、ある特殊な能力も持っている。それが「テレパシー」だ。このテレパシーは周囲にいるコルチゾンやアドレナリンと言ったストレス物質を放出する人間を呼び寄せるもので№2は発生当時、このテレパシーを活用して周囲の人間を食していたようだ。それから約一ヶ月にわたる食事のあとは樹海の地中にもぐりこみ再び来年の初夏まで眠るという何とも厄介な怪獣だ。
そして、九重や他の隊長が見ている対策内容というのが「主にコルチゾンを放出しやすいA型の人間を一ヶ月自宅待機させる」というものだ。待機させたA型の人間は一ヶ月の間、政府の許可なしに外出はできないというものだった。
「これさ、結局家族内がみんなA型で一斉に外出して帰ってこなくなったらどうするの?」
九重の言葉に対策を考えた政府機関がうつむく。
「ほら、考えてないじゃん。どのみち僕らに任せる気だろ?もっとめんどくさがってないで対策考えてよ。」
「すみません……」
他の隊長も顎に手を添えたり難しい顔をしていたりとこの対策は無意味に終わるのではないかと考えている。そして、九重はそんな雰囲気の中、ため息を吐きながら口を開いた。
「これさ、毎年この怪獣に国のお金使って税金とかを誤魔化そうとしてるだけだよね?」
その言葉にびくりと体が震える関係者。
「沈黙は肯定と同義ってことで……そろそろやめようよ。対策じゃなくて討伐しようよ。今の世代の戦力がみんなやめたり年老いてきて戦力が半減したら次はいつ黄金世代が来るかわからないよ?」
関係者は俯きながら汗を拭く。
「まぁた沈黙。いいよ。下がって。もう、これ僕らで考えるほかないよね?守るための対策じゃなくて討伐のための作戦を……」
隊長は皆首を縦に振る。九重は皆の顔を見て資料を伏せて前を向く。
「一応、総隊長にも許可はもらってるからいいよね?」
関係者は無言で頭を下げて会議室を出ていった。
「そいじゃ始めようか。山の怪獣№2の対策もとい、討伐作戦の会議を。」
隊長たちは先ほどよりも表情をこわばらせて一層気を引き締めた。九重はこの雰囲気にうなずき、一隊 副隊長
「八重ちゃ~ん資料持ってきて~」
「すでに配り終えました。」
「お~さっすが~……と、皆手元に資料はあるかい?聞かなくてもあるよね~?」
九重は資料が行き届いているか目配せして説明を始める。
「今回の討伐作戦は総力戦と言っても過言ではない。自動部隊である一、四、六、一・三。補助部隊である五、七、八。技術部隊の二、三、九。救護部隊の十、一・一、一・二の計十三部隊総員90名全員が全身全霊を尽くす作戦だ。」
一、四、六、一・三部隊(以降を※いとする。)
期日に富士の樹海付近で作戦を実行する。樹海や富士山の範囲から出せば作戦失敗は免れない。怪獣の四方位を囲み怪獣の動きを止めつつ討伐をする。期日には別件で怪人や怪獣も発生する恐れがあるため10名で向かう。現地に向かう10名は以下の通り
一隊 隊長
隊員
隊員
四隊 隊長
隊員
隊員
六隊 隊長
隊員
一・三隊 隊長 氷室アンナ
隊員 杉山アカリ
他メンバーは本部待機
五、七、八部隊。(以降を※ろとする。)
※い部隊と同じく樹海付近での作戦。※い部隊が囲めていない範囲を※いを補助する陣形で配置する。※いと動揺に怪獣の動きを止めつつ討伐を目標とする。こちらも期日の別件の怪人怪獣発生を警戒して10名の隊員選出をする。
五隊 隊長
隊員
隊員
七隊 隊長
隊員
隊員
八隊 副隊長
隊員
隊員
隊員
他メンバーは本部待機
二、三、九部隊(以降を※はとする。)
期日には本部で待機する隊と現地で武器の修理や手入れの隊で分ける。現地に向かうのは以下の9名とする。
二隊 隊長
副隊長
隊員
隊員
隊員
隊員
三隊 隊長
隊員
隊員
他メンバーは本部で待機
十、一・一、一・二部隊(以降を※にとする)
※に部隊も上記同様に現地に向かうメンバーと待機のメンバーで分ける。現地へ向かうのは以下9名とする。
十部隊 隊長
副隊長
隊員
隊員
隊員
隊員
一・一隊 副隊長
隊員
隊員
他メンバーは本部待機
なお、本部待機のメンバーは期日の戦闘後の隊員のケアと別件で発生した怪人、怪獣に備えてもらう。
資料を見ていた全隊長は深くうなずく。九重はその様子を見て誰も反論はないだろうと思ったが一応異を唱える者はいないか問うた。
「誰か、異論はあるかい?」
その言葉には誰も手をあげず、誰も九重に対する反抗の目はなかった。
「よし。それじゃ、期日までに部隊のメンバーに伝えて今日からでも顔合わせとかしておいてね。それじゃ、解散。」
九重が手をならすと隊長たちはいっせいに立ち上がり会議室を出ていった。
EMG:15 №2
次回 EMG:16 VS特別大災害級怪獣 №2