作戦終了報告書 〇月×日 木曜日 一隊 隊長 九重 一
AM 3:00~ 作戦準備
【内容】起床後武器、ウェアの手入れ。作戦に必要な武器等の性能確認。
AM 4:00~ 作戦の確認
【内容】武器の手入れを終えて資料を持って隊長のみ会議室にて作戦の確認。後に隊員への伝達も行った。
AM 5:00~ 全員集合
【内容】各隊を全員集合させ健康チェックする。挨拶も終えて車両へ乗り込む
AM 5:30~ 出発
【内容】各隊を乗せた車両が現場へ出発。
AM 7:00~ 到着
【内容】現場へ到着後全員を車両から降ろし作戦の準備をする。
以降、№2討伐作戦を実施。作戦が終了したのは16:28。
報告
№2は討伐できなかったが、№4白い悪魔の乱入で場が収まった。№4は意思疎通が可能であった。№4が結界を張ったので今後は№2が暴れる心配はないが、時間経過を見て時折調査する飛鳥あり。作戦中、№2の他にウラミビトという怪人も発生。しかし№2に攻撃をし№2の体内から出た何かを回収して戦闘離脱。怪人の特徴は地蔵頭のタキシードと奇抜な風貌のモノだった。意思疎通が可能で№2は何かに利用していた。
この戦闘で二つの新兵器【ヤタガラス】と強力防塵防毒マスクを使用した。【ヤタガラス】の性能は素晴らしく、私の体の動きについてこられていて申し分なかった。マスクも試作品にしては№2の有害物質を防げたりと申し分ない。しかし、マスクに関してはもう少しテストを重ね、性能をより信頼できるものとした方が良いと考える。
以上
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作戦終了報告書 〇月×日 木曜日 一・三隊 隊長 氷室 アンナ
AM 3:00~ 作戦準備
【内容】武器、ウェアの手入れ、動作確認
AM 4:00~ 作戦の確認
【内容】各隊長が集まり再度作戦の確認
AM 5:00~ 全員集合
【内容】挨拶と各隊員の体調チェック
AM 5:30~ 出発
【内容】富士山均衡へ出発
AM 7:00~ 到着
【内容】準備時間。
以降、№2討伐作戦開始 作戦終了は16:28
報告
№2は討伐できていない。が、乱入してきた№4により結界が張られて以降№2は地上には出てこないと言っていた。(が、一年後に調査をする必要がある。)
№2は戦闘時形態を変えていたため他の特別大災害級怪獣も再度調査が必要と考える。
№4については意思疎通が可能であると分かったため、これから戦闘に乱入するたびに意思疎通を図っていこうと考える。
作戦中、九重から囮作戦を提案されてその作戦に部下の杉山が指名されて大変喜ばしいと考えた。杉山もその後、やる気を出し作戦の最後の方は皆へ激を飛ばすほど成長が見られた.。これも大変喜ばしい。今回の作戦は討伐自体は失敗に終わったかもしれないが、部下が成長して大変喜ばしい結果になった。新兵器は九重の動きについてこられていたで量産したらとてつもない戦力になる。マスクはもう少しテストを重ねてみるとよいと思った。実際につけてみるとマスクはもう少し軽量化し、簡単に取り外しできれば良いと思う。
以上。
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その他、隊長、隊員の報告分を見て総隊長
「№4が意思疎通可能な怪人もとい怪獣か……うむ……」
難しい顔でつぶやく百太郎に九重は疑問を投げかける。
「何か問題が?」
「いや、何も。だが、しかし隊長中心の報告書の端々に結界という言葉見えるが、信用できるのか?」
「信用はできる。僕が言うんだから間違いない。それにたとえそれが嘘だったとしてもまた討伐作戦を決行すればいい。」
「気楽に言ってくれるな。」
「今のこのMDCAは今までにない黄金期だと僕は考えているからね。」
百太郎は深いため息をつき九重に部屋を出るように手を動かす。九重はへらへらとしながら総隊長の部屋を後にした。ドアの音を聞いた百太郎は№4の姿をパソコンに映し報告書に再び目を通す。
「白龍神め……何を考えておる……いや、それはどうでもいいんだ…六代伊吹……なぜ寄りにもよって君が依り代なのだ……」
百太郎はため息を飲み込んだが、深く短い溜息を何度も吐いた。
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午後の公園。主婦が他愛のない会話をして子供たちが遊具や砂場で遊んでいる。だが、そんな公園に突然黒い空気が立ち込める。主婦はマウントを取り合い、子どもたちは喧嘩を始める。そんな黒い空気の中心にベビーカーを押す白無垢の女性とその女性を囲むタキシード姿の男性が二人。その三人組は歩きながらベビーカーの中身の話をしている。
「それで、これが新しい仲間なの?見たところただの肉塊にしか見えないのだけれど?」
「えぇ、その肉会で当たっています……そろそろ生まれても良いはずですが、他に何か必要なのでしょうか……」
「君が知らないのなら僕らも知らないね。とりあえず前より僕らの周りにいる人間たちはよりマイナスエネルギーに満ちているね。ほら、今にも殺し合いが始まりそうな雰囲気が。」
彼岸花異形頭の此方は公園を見渡して人間の姿の自分の唇を触りその様子を嬉々として見ている。そんな人間同士のいがみ合いを見てムカデ異形頭の白無垢
「誰が上とか、それが欲しいとかねちねちとくどいわね……「自分が勝ちたい」「自分が上に行きたい」そんな思いをもって黙っていればいいのに……」
地蔵頭の怨マが微笑みながらベビーカーの黒い塊を取り出して赤子のように抱える。
「ふふふ……そうですね~それよりこの子をどうにかしないと……何が必要なのでしょう?」
赤子のように上下に動かしていると黒い肉塊が動き出す。怨マは動きを止めジッと黒い塊を見つめる。塊は伸縮し、ひび割れ黒い靄と共に生まれた。怨マの腕の中でそれは脈打ち暖かくなる。その様子を見ていた此方と勝は怨マの腕の中を覗き込む。黒い塊は赤子の形をしており、やがて大きくなり、怨マの腕の中をすり抜けて地面に着地する。赤子はだんだんと大きくなり、五歳児くらいの体系で成長が止まるとその姿をはっきりと現す。裸の操り人形のような体は病的に白い肌をしており、その頭は右半分が狐で左半分は狸のものの異形だった。その偉業は顔を上げてつぶらな瞳を三人に向けて首を傾げる。
「生まれたわね……これなに?狸?狐?」
「どっちもだろうね……それにしても何もわからなさそうな顔が何とも無垢だね。」
此方と勝はしゃべっているが、怨マはその二人押しのけて新しい怨者へと手を伸ばす。
「新たな怨者……ようこそこの世へ」
「あ、ア、らら、たたら……ううううらら……うらみびと?ってわたし?」
ラジオのチャンネルを合わせるように狐狸の少女は口を開いた。口を開いて初めて少女だと認識した三人は微笑みながら少女へ目線を合わせる。
「女の子?女の子よね?やったー女が増えた女が増えた♪」
「へぇ……女か。ま、バランスはよくなったね。」
「仲間が増えてとても心強い……とその前にここでの化け方を教えましょう。」
怨マは少女の顔に手を伸ばし自分の顔を指さしマネするように伝える。地蔵頭に切り替えたり人間の頭に切り替えたりして見せる。少女は首を傾げながら見様見真似で頭を変えて人間の頭になる。金髪の碧眼を和風にまとめた少女の頭。そして、裸へ手を伸ばして体をなぞっていき七五三にありそうな赤い振袖を着せる。少女はその場でくるりと一回転し自分の姿を見下ろす。
「かわいいじゃな~い♡」
「怨マにしては趣味のいい服だね。」
「ふふふ……では、皆さん行きましょう。」
その場の空気がだんだんと軽くなってくると公園の誰もがその異質な家族へ目を向けた。赤い口紅をした男性と耳たぶが大きいタキシードの男性二人に白無垢の女性。その女性に手を引かれているのは赤い振袖の外国人の少女。その誰もが今までの険悪な空気を忘れたようにその家族に見とれた。
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仕事に行けなかった六代伊吹は、雇い主の神社の巫女、伯朧 桜子の前で跪いていた。
「全く……姿が見えないと思っていたら……遅刻っていったい何歳ですか!?もう……次はありませんからね?」
「はい、すみません……」
「はぁ、これ以上叱っても意味がないので早く仕事をお願いします。」
六代は立ち上がると足についた土埃を払いながら境内の庭の手入れを始める。そんな六代に白龍神は申し訳なさそうに話しかける。
『いや、すまないな。ワシのために……』
「いや、別にいいすっよ。怒られ慣れてますから。さて、お……仕……事?」
視線を感じて後ろを振り向くとそこには桜子がこちらを睨んでいる姿があった。
「な、なんでしょう?」
「今、誰と話してたんです?」
「い、いえ……何のことでしょう?」
「前々から思っていたんです。六代さん時々誰と話しているのかと……」
桜子はだんだんと詰め寄ってくる。六代はそんな桜子に圧倒され後ずさる。
「誰と話しているんです?もしかして前に自らを白龍神と言っていた方と話しているんじゃ……」
「そそそ、そんなわけ……」
「本当ですか?本当に本当ですか?白龍神様に誓えますか?」
『ワシは別に罰は与えんよ?無理にそんな……』
「どうなんですか?」
「か、勘弁してください~」
午後の空気が流れる神社に六代の声が響いた。
EMG20:作戦終了報告書
一部 完
次回 EMG2-1:伯朧神社伝説