「さて、と」
俺が視線を送る先には、ゴブリンジェネラルが一体とゴブリンが5体並んでいた。
Dランクであったジェネラルは難なく召喚できた。
農業の【1からお任せ】の条件であり、今俺がこのダンジョンに召喚できる魔物の上限でもあるのが、この5体だ。
「今度こそ使えるんかな?」
:ワクワク
:早速やってみよーぜ!
:気になりすぎて昼しか寝れんから
:ちゃんと昼夜逆転してるじゃん
スレ民の期待も背負いつつ、チーフ役になるであろうジェネラルの頭に触れた。
──────────
無名のゴブリンジェネラル1(変更可) Lv1
行動コマンド
→農家
・1からお任せ
・土作り
・肥料散布(別に肥料が必要)
︙
︙
ステータス
──────────
「んで、【1からお任せ】をタップする、っと……」
ポチッ
シュポッ
:ツイッターかな
:おっ通知か
:あれ、通知無い。ワイのスマホ壊れたんやが
:俺にも通知きた
:お前ら
『ジェネラルの近くにいる5体のゴブリンを使用して、【1からお任せ】を起動しますか? YES or NO』
すると、前回の警告文とは違い、確認画面のようなものが表示された。
「あんま生命体に『使用』って言葉は使わないほうがいいぞ? あ、はい起動します」
俺がそう言うと、ついに【1からお任せ】を起動することに成功した。
6体のゴブリンが持つ棍棒が光出す。
:草
:たしかにw
:奴隷じゃん。…………奴隷か
:何も間違ってないんよな
:人聞き悪すぎるけど
:お!?
:なんか棍棒が光りだしたぞ
:ざわ……ざわ……
:わく……わく……
:ワクワク隠しきれてないやつおったな
:おー!?
棍棒を纏っていた光が収まると、なんと
「えっ……待って、そんなんできんの?」
こう……棍棒で耕すんじゃないんか……?
俺の驚きもスルーされ、今度はジェネラルが、いつの間にか持っている設計図をもとに、空中を指でなぞり始めた。
四角を描くようになぞり、そしてそれが終わると……
「ごめん詳しくなくて何もわからん」
:草
:そやった、この前までただのスレ主だったもんな
:大出世すぎるな
:ジェネラルの指先光ってるから多分魔力込めてるんだと思うで
:あれが魔力
:分かるか? スレ主
:赤ちゃんに教えてるみたい
大の大人を赤ちゃんとか言う無礼者もいるが、どうやら今は魔力を込めてるらしい。
……えっ、魔力込めてる?
「待って、農業する前に俺にそれ教えてほしいんやが」
ブーブー
『【行動コマンド】の備考にて【意思】が選ばれてません。そのため、意思疎通は不可能です』
「そのくらい教えろやああああああ!!」
:弄ばれてんじゃん
:ざーこざーこ♡
:ワイはそこ行きたいからなんも言わへんで!
:スレ民も奴隷にされかけてるって
:仕事しててなんも知らんけどとりあえず……ざーこざーこ♡
:サボりニキ……せっかく頑張ってたのに最悪のタイミングで……w
:ん? ワイがサボりニキやで? そいつはワイじゃないで?
:なぬ!?
:このスレ、真面目ニキいたんか!?
:して……サボりニキは何を?
:ワイはサボりニキやぞ? サボってるに決まってるじゃねえか
:フッ……じゃないんよ
ジェネラルが魔力を込めだしてから、少しして。
「おわいうぇ?」
地面に、白い枠組みが浮かび上がってきた。一辺が100mほどの正方形である。
なんだこれ、と思っているとその枠に沿うように5体のゴブリンが並び──土づくりを始めた。
これは……なんというか…………
「待って、お任せすぎるって」
『そりゃあ、【1からお任せ】、ですから』
「そうだけどさあああああ!!!!」