翌日は仕方がないので、学院に出席する。
一通り試験は終わっているようであったが、合格者はまだいない。
講義では、ドゥカキス先生が試験官の使う
うん、流石先生だ。
簡単な魔力の属性変化についても語っていたが、それは中等科の科目だ。
あの程度でできるやつなんていないだろうさ。
うん、ハーフェズが指先に小さな火を灯しているが、見なかったことにしよう。
「と言うか、何であれ聞いただけでできるんだ、ハーフェズ!」
「ふ、何だ、アラナン。天才に不可能はないに決まっているだろう。だが、これは駄目だな。先生の語ったやり方では、煙草に火を点ける程度の火しか出せん」
「そりゃ、あれは
ハーフェズは相変わらずぶっ飛んでいた。
それをちょっと聞いただけであっさりと再現しおってからに。
え、ぼくはどうかって?
悪いけれど、属性術を使う歴史が違うから!
ま、ぼくのは
イグナーツとの対戦は、午後からだった。
ファリニシュの作ってきた昼食を食べていると、静かだったマリーがぼそっと呟く。
「あんた、
ぼくはパンを食べる手を止めると、真面目な顔で頷いた。
イグナーツだって、好きでいるわけではないかもしれない。
だが、ヴァイスブルク家の手先として活動している以上、ぼくには情けをかける理由はない。
ましてや、マリーは狙われた当人だ。
イグナーツがいることに対する心理的負荷は大きいものがあるだろう。
此処は期待に応えてみるかな。
試合場には、何故か観衆が沢山集まっていた。
いつもそれなりには見物はいるけれど、鈴なりになっていることは滅多にない。
ぼくとハーフェズのときくらいか。
と言うか、隣で試合をやるはずのハーフェズとカレルまでいやがる。
ん、あれはジリオーラ先輩か。
なんで中等科までいるの!
どうも、中等科でも敵なしのジリオーラ先輩を破ったことで、注目を集めていたみたいね。
ぼくの試合を見てジリオーラ先輩と戦う参考にしたい人、ぼくと戦う参考にしたい人などがぞろぞろいるんだな。
イグナーツは気にしてないようだった。
彼は
あの銃は火縄が付いていない。
新型か?
「おい、試合で銃は使用していいのか?」
「学長の許可は取った」
あの爺さん、ぼくを殺す気か!
レオンさんほどの腕も
だが、一発撃たせれば連射はできないはず。
その一発を防ぐしかない。
立会のストリンドベリ先生の合図で試合が開始される。
合図と同時に五本の
イグナーツは
何をと思った瞬間、イグナーツの
「
にやりとイグナーツが
マジャガリーの
「マジャガル人を
イグナーツが
冷たい銃口に違和感を覚える。
この銃から、魔力の高まりを感じるぞ!
「
イグナーツが銃の引き金を絞る。
撃鉄には火縄がなく、代わりに
危険を察知し、撃たれる前から横に飛んでいたが、それでも間に合わない。
高速の弾丸がぼくの
「あつっ!」
かすめただけなのに、
それなりに耐熱性はあるはずなんだが、とんでもない高熱だ。
火弾が着弾した地面が溶けてどろどろになっている。
ぼくの
放置もできず、慌てて患部の温度を下げる。
「だが、撃たせたぞ!」
ぼくは
先込めの銃は弾薬の
今のうちに接近し、勝負を決める!
だが、イグナーツはぼくの接近に構わず悠々と弾薬の装填を行なっていた。
そうか。
ならば、遠慮なく攻撃させてもらおう。
最大の
大岩だって叩き割れる豪快な一撃を振り下ろしたが、
くっ、堅いな。
イグナーツめ、微動だにしていないじゃないか。
装薬と弾丸は詰め終わり、火皿に入れる点火薬を取り出している。
余裕の表情だな、こいつ!
「どうした、アラナン。あの光の一閃は使わないのか」
イグナーツが
冗談じゃない。
あんなの使ったら、
手数で打破しようと、燃え上がる
まずいな、そろそろ次弾の準備が終わる。
「貴様のお陰でおれは
撃鉄が
二射目。
指環の魔力で
いや、ただの
もっと凝縮しないと。
左手の前に
幾重にも魔力を重ね、厚みを増す。
これはもう
竜の咆哮が轟く。
それでも何とか下半分は残り、しゃがみ込んだぼくは一命を取り留める。
駄目だ、威力が桁違いすぎる。
守勢に回ったら、押し切られてやられる。
何か、新しいことをやらないと。
唇を噛み締めながら、勢いよく立ち上がる。
黒衣を翻しながら、イグナーツが薄く