息子のスコップを使い、夜中の森林の土を掘り返す。汗と冷たい風が俺を責める中、月明かりは、この罪を調べるかのように、まぶしく光っている。
「赤ん坊の遺体なのだから、浅く埋めてもバレはしない」
なんで、こんなことになってるんだ
子どもの頃からモテてきた。
女に困ったことなんてない。
妻の他に性欲の相手はいくらいたっていいんだ。
不倫相手に飽きたら捨ててきた。
誰1人として、俺を咎めはしなかった。
でも、
『安全日だから』
そう俺に耳元で甘く囁いた。
2ヶ月後「妊娠したの。結婚しましょう」と言ってきたが、「おろてくれ」と冷たく言い放ち、その場を後にした。
泣きついてきたが、最後の一回抱いてあげることにして、寝てる隙に逃げ出した。
華奈には、住所や職場も教えてこなかった。
お金がないはずだから、探偵を使って、俺を探すことはないだろう。たかを括っていた。
妻にバレるかもしれない。
勝手になんとかしてくれ。
それが会社に現れて泣かれ、家の前で待ち伏せされた。
『もう不倫なんてしないから許してくれ』
潔く土下座をする俺を見て、妻は引っ越しを条件にあっさり許してくれた。
日頃から快楽を与えてきたからだと自負した。
それから穏やかな日々だと思っていた。
妻が時折俺を睨んでいたのを知っていたので、機嫌をとり、今まで以上に愛してきた。
今まで妻任せにしてきた息子とも遊んだ。
それなのに、あれから8ヶ月の時が流れ、我が家に段ボールが届いたかと思えば、赤ん坊の遺体だった。
あいつ、産んだのか。そして、殺したのか?
その処理を俺にしろと言っているのか?
『わたしたちの赤ちゃんよ。喜んでくれるでしょう?』
メモを持つ手が震えた。
喜べるわけないだろ!
何を考えてるんだ!
「あなた。ネットで大きな買い物をしたのね」
「そうなんだよ。会社で使うやつでさ」
妻を誤魔化し、その夜、森林へと急いだ。
埋め終わり、土を叩いて隠した。
ここなら見つからない。
土を払う手がいつまでも取れないのが気になるが、この場を早く立ち去りたい。
華奈、俺の家に遺体を送ったなんて言うなよ
どこまでも狂った女だ。そして俺も同じように狂ってる。
こうして、俺とあの女はあの女と運命共同体となった。
ほっと一安心して家に帰ると。
『プレゼントです。今までありがとう。殺人鬼さん』
と書かれた紙と離婚届が置いてあった。
震える手で離婚届を持つ俺の耳に飛び込んできたのは、インターフォンの音だった。
ドアを叩く音から聞こえくるのは女の声だった。
「埋めた場所、知ってますよ」
その声が、あの女なのか、女刑事の声なのか、それすら判断ができなかった。