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運命共同体
運命共同体
すずらん
ミステリーサスペンス
2025年05月05日
公開日
1,067字
完結済
ある日届いたそれは、 不倫相手との間に生まれた赤ん坊の遺体だった。

第1話 遺体遺棄

 息子のスコップを使い、夜中の森林の土を掘り返す。汗と冷たい風が俺を責める中、月明かりは、この罪を調べるかのように、まぶしく光っている。


「赤ん坊の遺体なのだから、浅く埋めてもバレはしない」


 なんで、こんなことになってるんだ


 子どもの頃からモテてきた。

 女に困ったことなんてない。

 妻の他に性欲の相手はいくらいたっていいんだ。

 不倫相手に飽きたら捨ててきた。

 誰1人として、俺を咎めはしなかった。


 でも、幸内こううち華奈かなは違った。


『安全日だから』


 そう俺に耳元で甘く囁いた。

 2ヶ月後「妊娠したの。結婚しましょう」と言ってきたが、「おろてくれ」と冷たく言い放ち、その場を後にした。

 泣きついてきたが、最後の一回抱いてあげることにして、寝てる隙に逃げ出した。

 華奈には、住所や職場も教えてこなかった。

 お金がないはずだから、探偵を使って、俺を探すことはないだろう。たかを括っていた。


 妻にバレるかもしれない。

 勝手になんとかしてくれ。


 それが会社に現れて泣かれ、家の前で待ち伏せされた。


『もう不倫なんてしないから許してくれ』


 潔く土下座をする俺を見て、妻は引っ越しを条件にあっさり許してくれた。

 日頃から快楽を与えてきたからだと自負した。


 それから穏やかな日々だと思っていた。

 妻が時折俺を睨んでいたのを知っていたので、機嫌をとり、今まで以上に愛してきた。

 今まで妻任せにしてきた息子とも遊んだ。


 それなのに、あれから8ヶ月の時が流れ、我が家に段ボールが届いたかと思えば、赤ん坊の遺体だった。


 あいつ、産んだのか。そして、殺したのか?

 その処理を俺にしろと言っているのか?


『わたしたちの赤ちゃんよ。喜んでくれるでしょう?』


 メモを持つ手が震えた。

 喜べるわけないだろ!

 何を考えてるんだ!


「あなた。ネットで大きな買い物をしたのね」

「そうなんだよ。会社で使うやつでさ」


 妻を誤魔化し、その夜、森林へと急いだ。


 埋め終わり、土を叩いて隠した。

 ここなら見つからない。

 土を払う手がいつまでも取れないのが気になるが、この場を早く立ち去りたい。


 華奈、俺の家に遺体を送ったなんて言うなよ

 どこまでも狂った女だ。そして俺も同じように狂ってる。


 こうして、俺とあの女はあの女と運命共同体となった。


 ほっと一安心して家に帰ると。


『プレゼントです。今までありがとう。殺人鬼さん』


 と書かれた紙と離婚届が置いてあった。


 震える手で離婚届を持つ俺の耳に飛び込んできたのは、インターフォンの音だった。


 ドアを叩く音から聞こえくるのは女の声だった。


「埋めた場所、知ってますよ」


 その声が、あの女なのか、女刑事の声なのか、それすら判断ができなかった。

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