キッチンにて軽い食事の用意をする。
マユミは必要がなかったがカナエが食べていなかったので、スープを器にいれると後ろで見ていたカナエが小さな子供のように声を上げた。
『マユ、料理もできるんだ。』
『これくらいはね。カナエ君はできないの?』
『・・・うん。』
トレイに乗せて彼に手渡すと背中を押す。
マユミには兄弟はいないけど、いたらこんな感じなんだろうか。
リビングのテーブルにトレイを置いてカナエが席につく。
いただきますと手を合わせてスプーンを口にした。
『美味しい。』
嬉しそうな顔にマユミは頷く。
まだ半分ほど残った缶を手に、彼の傍に座った。
普段アルコールを飲むことはない、この缶は先日シバタが遊びに来たときに持ってきた土産の残りだ。
口当たりが良くぐいぐいと飲めてしまうあたり危険な酒だとシバタは笑っていたがその通りのようだ。
食事を終えてカナエは手を合わせると、ごちそうさまでしたと小さな声で呟く。
『カナエ君・・・ってさ。』
『ん?』
『あんなぶりっ子しなくてもいいのに。』
マユミの言葉にカナエは驚いた顔をした。
なんだかいじらしい顔をすると前に手をついた。
『マユは・・・そっちのがいい?』
本当に小さな子供のようで可愛らしくてマユミは頷いた。
『うん。僕はそっちのほうが自然で好き。話しやすいし・・・。』
『そっか。』
カナエは頷くとくったくなく笑う。
『そう、それ。僕は友達が少ないわけじゃないけど、あんまり作られてしまうとやっぱり身構えてしまうから。カナエ君はそっちがいいよ。』
『・・・マユが言うならそうする。』
『ふふ、疲れなかった?あれ、大変じゃない?』
マユミは缶を飲み干すと顔が火照った気がして手を押し当てる。
『確かに疲れる、まあ・・・あれはおっさんとかはイチコロなんだよ。』
『そっか・・・。』
『あんまりいい気はしない?』
『どうだろ・・・カナエ君はカナエ君だからね。でも・・・友達だったらあんまり危険なことはして欲しくないかな。そういう・・・のって巷でいうパパ活ってやつでしょ?心配にはなる。』
大学の友人の中にも女の子はいる。
生憎そう言った話は聞かないけど、話題に上がると皆なにかしら意見は交わしていた。
金のためとは言っても、半身を売るような行為になる。
『僕は・・・そう思う。』
酔いが回っていたかもしれない。
説教臭い自分を鼻で笑いながらカナエを見る。
彼は目が覚めたようにまっすぐな目でマユミを見ていた。
『・・・うん。』
棄てられた子猫みたいだと思う。
ああ、だから先生は猫みたいって言ってたのか。
マユミはふわふわした気分でベットに座った。
『そっちに行っていい?』
そう問われてマユミは頷く。いのせいか、それともこの子猫に触れたくなったのかどっちだろう。
すぐ傍に座ってカナエは額をマユミの胸に当てた。
『ありがとう、マユ。』
『うん。』
金髪の頭を撫でたあと、マユミの意識は薄れていった。