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第11話 南国修学旅行・後編


第三者side


「着いたぞ!沖縄〜!!」


クラスメイトの1人が那覇空港で雄叫びを上げる。


「やめろ!迷惑でしょうが!」


担任は彼の頭を小突いて、周囲に謝罪する。


「流石に浮かれすぎではないでしょうか?」

「莉乃、お前も人のことを言えないだろ」

「えっ?」


莉乃はすでにサングラスに麦わら帽子を着ており、他の生徒から明らかに浮いていた。


「………ダメ?」


麦わら帽子の端を掴み、上目遣いで見る。


「うっ……(これでわざとじゃないのおかしいだろ……っ!!)」


颯斗は内心思いつつも。


「「「ダメじゃないですっ!!」」」


クラスメイトは声を揃えてそう言った。


「はぁ……」

「恋する男の子だなぁ?」

「うるせえ」


莉乃に聞こえないように颯斗と公人はそんな会話を交わした。


「とりあえず、点呼だ!」


担任は点呼し、全員がいることを確認する。


「じゃあ、これから海に移動してマリンスポーツをやる奴はそこで体験だ!」

「「「うひょおおおっ!!」」」


大盛り上がりしつつも、教師の指示はちゃんと聞いて、移動を開始した。


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「綺麗ですね〜……」

「そうだな……」


一行は海に到着していた。


「さぁ、ここからは心置きなく遊べ!着替えはあそこだからな?それと着替えたらマリンスポーツをやると言っていた奴らは俺のところに集合してくれ。それと、危険なおふざけはNGな?何かあったらすぐに近くの教師に言ってくれ。以上だ!めいっぱい楽しんでこい!!」


その言葉と同時に全員が更衣室に向かってダッシュした。


「全く……元気が有り余ってるわね」


美香が呆れたようにそう言う。


「そうですね」


莉乃は同調しながら、ゆっくりと歩いていく。


「そういえば、お店どうなったの?」

「ハロウィンの写真をあげたら、結構話題になってましたよ?」

「そうなのね?」

「えぇ。瑞稀ちゃん曰く、“ぷちばず”したらしいです」

「まぁ、あのコスチュームの莉乃は可愛かったものね」

「そうですか?」

「そうよ!莉乃はもっと自分に自信を持っていいと思うの!」


美香は鼻息荒く莉乃に言う。


「そうでしょうか?腹筋は割れてますし、あまり女性らしくないですが……」

「見た目じゃないわ!内面よ!」

「内面ですか?自分で言うのもなんですが、あまり社交的ではないと思いますけど……」

「え?」

「え?」


2人は互いに見合って、小首を傾げる。


「いやいや、喫茶店手伝ってる時点でかなり社交的だと思うけど!?」


瑞稀が会話に入ってくる。


「み、瑞稀!?」

「聞いてたんですか?」

「もちろん!」

「莉乃っちはすごく魅力的だよ!!」


瑞稀は鼻息荒くそう言う。


「は、はぁ……」


莉乃は理解し難そうに返事する。


「早く着替えよ!」


瑞稀は莉乃の手を取り、走り出した。


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莉乃たちは水着に着替え、颯斗たちと合流する。


「あ!やっと来たか!」

「ごめんなさいね。ちょっと莉乃と話し込んじゃったのよ」

「別に構わないさ。女子だけで話すなんてあまりないだろうしな」

「基本的に颯斗と一緒に居るからなぁ?」


公人はニヤニヤしながらそう言う。


「う、うるせぇ!!」

「そうですね。颯斗君と一緒に居る時間はかなり長いですね」


莉乃は恥ずかしげもなく、そう言う。


「莉乃、お前なぁ……」


颯斗は顔を真っ赤にしてフルフルと震えていた。


「七瀬さん、魔性の女すぎる……」

「?????」


莉乃はハテナを浮かべていた。


「そ・れ・よ・り!何か言うことがあるんじゃない?男子諸君」


瑞稀が人差し指をピンと立ててそう言った。


「水着、すごく似合ってるぞ。美香」

「あ、ありがと……」


公人に褒められ、美香は顔を赤らめ、モジモジしていた。


「私は!?」

「ニアッテルー」

「棒読みやめろや」


瑞稀は口調が荒くなっていた。


「七瀬さんも似合ってる。だよな?颯斗」

「うぇ!?あ、ああ!!すっごく似合ってる!!フリルとかも可愛いし!!」

「ありがとうございます」


莉乃は表情ひとつ変えずに感謝を述べる。


「反応が薄いっ!!」


颯斗はその場に崩れ落ちた。


「ドンマイ、颯斗」


公人は颯斗の肩をポンと叩いて言った。


「よし!莉乃っち!泳ぐよ!」

「はい」

「私も行く!」


女性陣は海へと繰り出していった。


「…………………」


颯斗は砂浜で体育座りをしていた。


「俺、男として見られてないのかな」

「恋してるの認めるんだな」

「もう意地張ってもどうにもならないって分かったからな」


颯斗は遠い目をしてそう言った。


「七瀬さんって朴念仁だもんな」

「あれは朴念仁とかいうレベルじゃないだろ」

「確かに」


2人して遠い目をしていた。

その視線の先ではストイックに全力でクロールをしている莉乃とそれを見てドン引きしている美香と瑞稀がいた。


「ねぇ、あれって遊んでるのかしら」

「どう考えてもガチで泳いでるよね」

「しかも、速くない?」

「うん、めちゃ速い」

「完全に私たち置いてけぼりよね」

「だね」


2人もまた遠い目をしていた。


「ふぅ……久しぶりに泳ぎましたが案外泳げますね」


莉乃は一通り泳いだ後、砂浜に上がり、颯斗たちの元へ戻る。


「莉乃!お前凄っうぇ!?」


颯斗は顔を真っ赤にして目を逸らす。

公人も両手で顔を覆う。


「どうかしましたか?」

「莉乃っち〜!!水着が!!」

「え?」


言われて視線を落とせば、上半身の水着がなかった。


「全力で泳いだ影響でしょうか」

「はい!これ!」


美香は水着を渡す。


「ありがとうございます」


莉乃は受け取って水着を着用し直す。


「えっと、乙女の恥じらいはないの?」

「?別に見られて減るものではないでしょう?それに、水着を着用している時点でほぼ裸なんですから今更です」


莉乃は何を言っているんだと言わんばかりに言う。

2人はまた遠い目をした。


─────────────────────────────────────


「ジンベイザメ、すごいですね」

「だな」


一行は美ら海水族館へと足を運んでいた。


莉乃と颯斗は2人きりで水槽を眺めている。

公人たちは気を遣って姿を眩ませた。


「それにしても久我さんたちは何処に行ったんでしょうか」


莉乃は周囲をキョロキョロしてそう言う。


「どっかで逸れたんじゃないか?」

「では、探しに行きましょうか」

「えっ」

「どうかしましたか?」

「ふ、2人で回らないか?」


意を決して言った提案を。


「なぜですか?みんなで回った方が楽しいですよ?」


莉乃は鮮やかに蹴り上げた。


「そ、そうだよな!?」


颯斗の表情からは明らかに残念さを読み取れる。


「(莉乃ぉ……そりゃないぜぇ……)」


内心めちゃくちゃ凹んでいた。

その後、無事に合流し、みんなで回った。


─────────────────────────────────────


一行が次に訪れたのは『おきなわワールド』だ。


「すごいところですね……」

「だな」

「さ!2人琉球グラスの手作り体験に行くぞ!」


おきなわワールドに圧倒されていた2人に公人が声をかける。


「わかった!」

「行きましょう、颯斗君」

「ああ」


それから5人は琉球グラスを作る体験をした。

今度はシーサーを作り……


「なんですかそれ?」

「かっこよくない?」


颯斗はシーサーによくわからないマークを描いていた。


「かっこいい、悪いは置いておいて。それはなんですか?」

「オムニバスのチームマーク!」

「私たちのマークですか?」

「そう!やっぱこういうのがあった方がヒーローって感じがするだろ?」

「それはそうかもしれませんがどこで使うんですか?」

「確かに」


颯斗は自身の考えたクレストを使うタイミングがないと気づくとガクリと肩を落とした。

5人が楽しくおきなわワールドを満喫していると。


「随分と楽しそうだな」

「お前は!!」

「ダークエイドヴァルキリー……!!」


ダークエイドヴァルキリーが現れた。


「せっかくの修学旅行なんだ!」

「邪魔しないでください」

「修学旅行だと?そんなちっぽけなことは知らん」


ダークエイドヴァルキリーはそう吐き捨てた。


「どうやら聞く耳持たずのようですね」

「公人、瑞稀達を頼む」

「わかった」


公人は2人を連れてその場を離れた。


「莉乃、行くぞ」

「はい」


2人はカードをスキャンする。


『リアクター!』

『ナイト!』


『UFO!』

『マジシャン!』


「「オムニバスチェンジ(!)」」


2人はチェンジャーの外枠を回転させる。


『灼熱の騎士!リアクターナイト!』

『未確認の手品師!UFOマジシャン!』


「え?な、なに?」


戦いが始まろうとしていた時、訪れていたクラスメイトが現れた。


「来るな!!」

「フッ、ちょうどいい」


ダークエイドヴァルキリーは一枚のカードを取り出す。


「さぁ、現れるがいい。コブラオミナス」


ダークエイドヴァルキリーはクラスメイトにカードを投げつけた。


「うあああああああっ!!」


そして、クラスメイトの姿は人型のコブラのような姿になった。


「てめぇ!!」

「許せませんね……!!」

「莉乃、ソイツを頼む。俺はコイツをぶちのめす」

「ほう?それが出来るとでも?」

「やってやるよ」


やる気満々の颯斗が飛びかかり、戦闘が始まった。


─────────────────────────────────────


莉乃side


「ふっ!!」


私はすぐさま斬りかかる。

コブラオミナスはオムニバスブレードを受け止める。


「フン!!!」


コブラオミナスは体を自在に動かし、鞭のような攻撃を放ってくる。


「ぐあっ!!」


その攻撃を受け、私は軽く吹き飛ばされる。


「ならこれでどうでしょうか」


『ジェット!』

『スパイダー!』


「オムニバスチェンジ!」


『蒼空の糸使い!ジェットスパイダー!』


「ふっ!はああっ!」


私は糸を放ち、コブラオミナスの動きを封じる。


「はああああっ!!」


私はそのままコブラオミナスを空中に放り投げる。


「こちらで締めましょう」


『クレイドール!』

『ケルベロス!』

『3つ首の土人形!クレイベロス!』


私はそのままチェンジャーの外枠を回転させる。


『クレイベロス!フィニッシュ!』


「はああああっ!!」


私が上空に拳を突き上げると、ケルベロスのオーラがコブラオミナスを噛み砕いた。


「グアアアアアッ!!」


コブラオミナスは爆散し、私は落下してくるクラスメイトを受け止め、コブラの力をカードに取り込んだ。


「これでよし」


─────────────────────────────────────


颯斗side


「行くぞ!!」


俺はUFOのワープ能力を駆使して、ダークエイドヴァルキリーの背後を取る。


「はあああっ!!」


俺の行動に反応し、拳を受け止める。


「なっ!?」

「随分とアビリティカードの力を使いこなせるようになってきたみたいだな?だが、甘い」



『絢爛の暗黒狩人!ダークジュエルシャーク!』


ダークエイドヴァルキリーはノーモーションでフォームチェンジする。


「フン!!」


左手の巨大なハンマーで俺を殴り飛ばす。


「がはあっ!!」


俺はそのまま大きく吹き飛ばされ、地面を転がる。


「こんなのはどうだ?」


『蒼空の暗黒糸使い!ダークジェットスパイダー!』


さらにフォームチェンジしたダークエイドヴァルキリーは強度の高い糸で俺を縛り上げる。


「ぐっ……!!」


こんなところで負けられない!!

俺はUFOのワープ能力で拘束から脱する。


「新しい力、試してみるか!」


俺はそう言ってカードをスキャンした。


『プラネット!』

『フォックス!』


「オムニバスチェンジ!」


言って、外枠を回転させる。


『宇宙の化け狐!プラネットフォックス!』


キツネを模し、所々惑星の要素が取り込まれた衣装に変わった。


「エイドバスター、行くぜ!」


俺は一気に距離を詰める。


「はあああっ!!」

「ぐあっ!」


俺の拳はダークエイドヴァルキリーを殴り飛ばした。


「流石はプラネットのカード……宇宙系のカードは圧倒的な力だな……」


膝を着いたダークエイドヴァルキリーがそうこぼす。


「なら、私も答えよう」


そう言って奴はカードをスキャンし、外枠を回転させた。


『ダークプラネット!』

『ダークフォックス!』

『宇宙の暗黒化け狐!ダークプラネットフォックス!』


「はあああっ!!」


奴はたくさんの惑星を生成し、放ってくる。


「うわっ、と!」


なるほど、そういう使い方か!


「はあああっ!」


俺も同じように惑星を出現させ、奴と撃ち合う。


「これで決める!」


撃ち合いつつ、俺は外枠を回転させる。


『プラネットフォックス!フィニッシュ!』


するとポンと音を立てて、俺も放っていた惑星の中に紛れ込む。

そして、惑星を捌いていた奴の元に飛んでいく。

すると奴は惑星を破壊しようと拳を出してくる。

俺はそこで変化を解き、奴の腕を起点として大きく跳ねる。


「はあああああああっ!!」


そして落下の勢いを利用し、奴にパンチを叩き込んだ。


「ぐああっ!!」


俺の拳を受け、奴は地面に倒れ伏す。

奴は一枚のカードを落とす。


「フェニックスカード?」


俺はそれを回収する。


「なかなかやるな……まぁ、いいだろう。今日はこれくらいにしよう」


奴は俺の必殺技を喰らったのに、無傷でピンピンしていた。

そう言ってダークエイドヴァルキリーは姿を消した。


「逃げたか……」


─────────────────────────────────────


第三者side


おきなわワールドでの戦闘を終え、莉乃達は国際通りに来ていた。


「おじさんとおばさん、何が嬉しいでしょうか……」

「何でもいいんじゃない?」

「え?」


迷っていた莉乃に美香が声をかけた。


「満さんと薫さんが1番嬉しいのは多分、莉乃の楽しい思い出だろうから」

「私の思い出……」

「もう忘れちゃった?」

「そんなわけありません!この修学旅行、私にとって初めてばかりでとても楽しかったです」

「なら、そのことを2人に伝えてあげれば喜ぶんじゃないかしら」

「じゃあ、お菓子にします。お話に合いそうなので」

「じゃあ紅芋タルトとかにしとく?」

「はい、そうします」


莉乃は少し微笑みながら紅芋タルトを大事そうに抱える。


「本当に2人のことが好きなのね」

「当たり前です。父と母が死んでからずっと、私のことを見てくれていましたから。眠り続けていた時も、目覚めてから今までも。だから、恩返ししたいんです。少しでも、私を育ててよかったって思ってもらえるように」

「そっか……」

「オムニバスだって、最初は恩返しの側面が強かったんです。でも、今はみんなを守りたいって思ってます」

「莉乃らしいわね」


2人はそんな談笑をしていた。


「さ、そろそろ集合時間ね!」

「行きましょう、美香ちゃん」

「ええ!」


そうして莉乃の修学旅行は幕を閉じた。


           To be continue……



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