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第40話 最強の力、最高の救済


第三者side


「ガイタが死んだか」


ゲイルが呟く。


「マジで?」

「ああ。エイドハンターに倒された」

「エイドハンター……?」


聞き馴染みのない名前にヴィテレは首を傾げる。


「殺したと思ったら殺し損ねていた男だ」

「なるほど」

「だが、今回の戦いでよくわかった。アイツも完全には回復していない。なら、俺の方が有利だ」

「潰すつもり?」

「3人まとめて冥土に送ってやる」


ゲイルはニヤリを笑った。


─────────────────────────────────────


「ご飯、出来ましたよ」


莉乃がそう言えば、2人が食卓に着く。


「……肉じゃが」

「なんですか?嫌いですか?」

「いや、ちょっと懐かしくなっただけだよ」


透馬はそう言って椅子に座る。


「さぁ、冷めないうちに食べよ!」

「そうですね」


春香の言葉に莉乃も席に座る。


「「「いただきます」」」


透馬は肉じゃがを口に入れる。


「……っ!」


透馬は目を見開いて、食事する手が止まる。


「透馬?」


春香が声を掛けると、透馬は涙を流す。


「ちょっと!?何泣いてんのさ!」

「ごめん…もう2度と食べられないと思ってたから……」


涙声でそう言ってご飯を掻きこむ。


「透馬……」

「よかったです。同じ味を作ることが出来て」


莉乃は柔らかく微笑む。


「莉乃ぉ〜!」


透馬は立ち上がって莉乃を抱きしめる。


「ちょっ、な、なんですかいきなり!」

「もう2度と悲しい思いをさせたりしないから」

「お父さん……」


春香は2人を優しく見守っていた。


「それは分かりましたが、私がしばらく許すつもりはありませんからね」

「……はい」


─────────────────────────────────────

片付けを終え、お風呂にも入った後、莉乃はベランダいた。


「…………………」

「莉乃」


夜空見上げている莉乃に透馬が声を掛ける。


「なんですか?」

「莉乃に渡したいものがあるんだ」

「渡したいもの、ですか?」


透馬は頷き。1枚のカードを取り出す。


「これは……」

「27枚目のアビリティカード、オーディンだ」

「オーディン……」

「これは何のカードと組み合わせるんですか?」

「わからない。出力が高すぎてどれも拒否されるんだ」

「……何でそんなもの渡すんですか?」

「オムニバスの適性は莉乃が1番高いからだ」

「私を利用したいということですか」

「そういうわけじゃ……」

「いいですよ。元々私はオムニバスにやりがいを感じていましたし、世界を守るためです。オーディンカード、使いこなしてみせます」


莉乃はそう言って透馬からオーディンカードを受け取った。


「莉乃……」

「用はそれだけですか?」

「……ああ」

「そうですか」


会話が止まる。


「お風呂上がったよ〜!」


春香の声が聞こえてくる。


「……じゃあ、お風呂入ってくる」

「はい」


透馬はそう言ってその場を後にした。


「オーディンカード、ですか……」


莉乃は空に掲げながら呟いた。


─────────────────────────────────────


翌日。


「おはようございます」

「おはよう、七瀬さん」


公人は何か言いたそうに挨拶をする。


「何かが言いたそうですね」

「いや、そういうつもりじゃないけど……」

「なんですか?お父さんとの関係が気になってるんですか?」

「それは……」

「図星みたいですね」


莉乃はチラッと見れば、瑞稀や美香も彼女のことを窺っていた。


「はぁ…進展はありませんよ」

「そうなの?」

「ええ。仲が悪いわけではないので安心してください」

「なんだ〜!よかった〜!」

「てっきりずっとあのままかと思ってたわ」

「まぁ、それはそれとして許してはいませんよ」

「「「で、ですよね〜……」」」


先ほどまで笑顔だった3人は気まずそうに視線を逸らした。


「莉乃!おはよう」

「おはようございます、颯斗君」


颯斗は視線を逸らしている3人を不思議に思いながら席に着く。


「この前は悪かったな」

「え?」

「莉乃の親父さんなのにあんなに悪く言って……」

「いえ、気にしていません。それに悪いのは颯斗君ではなく、お父さんの方ですから」

「そう言ってくれると助かる」


颯斗は嬉しそうに笑った。


─────────────────────────────────────


放課後。

莉乃は帰宅し、キトゥンの手伝いを始めた。


「莉乃、いいって!俺がやる」

「なんでですか?」

「莉乃にはオーディンカードを使いこなして欲しいからな」

「そう、ですか……」


莉乃はそう答え、奥へと引いていった。


「今のは最悪ね」

「え?」


京子の言葉に透馬は首を傾げる。


「あなた、莉乃ちゃんのことちゃんと見ているの?」

「当たり前じゃないですか!莉乃は大事な娘ですよ!?」

「申し訳ないけど、私にはそうは見えない」

「え?」


透馬は気の抜けた声を出す。


「今のあなたは莉乃ちゃんを娘として見ているんじゃなくて、ゲイルを倒すための人材としてしか見ていない」

「そんなわけ……!」

「だったらなぜ、莉乃ちゃんにお店の手伝いをさせないの?」

「それは…今の2人じゃダークオムニバス…ゲイルには勝てないからで……」

「そうだとしても、3人で力を合わせるとか色々あるでしょう?」

「………………………」


京子の言葉に透馬は黙ってしまう。


「京子さん」

「莉乃ちゃん……」


呼びかけられ、振り返れば莉乃がいた。


「私は気にしていません。お父さんの言い分も分かります」

「でも……」

「今の私たちではゲイルに勝てないのは事実です。それに3人で協力してもお父さんは10分も戦えません。それだけの短時間で決着を着けられるとも思っていません」

「莉乃ちゃんが納得しているならいいのだけど……」

「では、私は特訓してきます」


莉乃はそう言って再び奥へと向かった。


─────────────────────────────────────


「ふぅ……今度はこれで行きますか」


莉乃は一息吐き、カードをスキャンする。


『オーディン!』

『ジェット!』


「オムニバスチェンジ!」


莉乃はチェンジャーを回転させる。


「きゃあっ!!」


しかし、変身は出来ずに吹き飛ばされる。


「これも…ダメですか……!!」


莉乃はそう言って弾き飛んだチェンジャーとカードを拾う。


「今度は……」


『オーディン!』

『フェニックス!』


「オムニバスチェンジ!」


しかし。


「きゃあっ!!」


変身できず、また吹き飛ばされる。


「はぁはぁ……!」


莉乃は諦めずに立ち上がる。


「オムニバスチェンジ!」



「オムニバスチェンジ!」



「オムニバスチェンジ!」


それから何度もカードの組み合わせを変えて挑戦するが、全て弾かれる。

そんな時、莉乃は走って行く颯斗と透馬を見た。


「颯斗君……?来てたんですね……」


莉乃はチェンジャーを拾い上げる。


「私も行かないと……」


莉乃は2人を追って走り出した。


─────────────────────────────────────


「ゲイル!!」


2人は一足早く現着していた。


「来たか。オムニバスども」

「当たり前だ。お前をぶっ倒さないといけないからな」

「フッ!フハハハハ!俺を倒す?とんだ夢物語だ」

「やってみないと分かりませんよ」

「「莉乃!?」」


莉乃の登場に2人は驚く。


「莉乃!お前……」

「すみません。まだです」

「じゃあなんで!」

「黙って見てられるわけないでしょう?」


莉乃は透馬にそう言って颯斗の隣に並ぶ。


「行きますよ」

「ああ!」

「仕方ない。短期決戦だ」


『ロボット!』

『ドラゴン!』


『フォートレス!』

『ユニコーン!』


『ライナー!』

『ホエール!』


「「「オムニバスチェンジ!」」」


『機械仕掛けの逆鱗!ロボドラゴン!』


『要塞の一角獣!フォートレスユニコーン!』


『定刻の巨獣!ライナーホエール!』


「はぁ…無駄な足掻きだ」

「はあああっ!!」


莉乃はバスターのブレードモードでゲイルに斬りかかる。


「ダークオムニバスチェンジ」


ゲイルはそう言うと同時にパンチを繰り出し、バスターを受け止める。


『暗黒の原子象!アトミックマンモス!』


「フン!!」


ゲイルは回し蹴りで莉乃を蹴り飛ばす。


「「はああああっ!!」」


颯斗と透馬はダブルパンチを繰り出す。

ゲイルはガードする素振りも見せずに、胸で受け止める。


「なに!?」

「俺には勝てない!!」


ゲイルはそう言って2人の腹部に手を当て、衝撃波を放つ。


「「ぐっ……!」」


2人は地面を擦って後退する。


「ほう?」

「この程度…屁でもない!」


そう言って透馬は鯨刻を取り出し、斬撃を放つ。


「全く……」


ゲイルはダークオムニバスブレードを取り出し、斬撃を弾き飛ばす。


「だったら!」


『スペリオルライナー!』

『スペリオルホエール!』


「オムニバスチェンジ!」


『定刻の超巨獣!ライナーホエール!スペリオル!』


「それはもう見た」

「はああああっ!!」


透馬は鯨刻を振り翳す。

ゲイルはバリアを展開し、攻撃を防ぐ。

しかし、バリアにヒビが入る。


「ほう?だが……」


透馬の変身が解除される。


「もう制限が……っ!!」


莉乃はカードをスキャンする。


『スパイダー!』

『バスターフィニッシュ!』


「はあっ!」


莉乃は糸を発射し、透馬を捕まえて自分の元へと引っ張る。


「ありがとう」

「気にしないでください」


莉乃はそれだけ言ってゲイルに立ち向かう。


「「はああっ!」」


颯斗はそれを見て息を完璧に合わせ、2人で徒手空拳でゲイルを攻める。


「その程度か?」

「はぁはぁ……」


颯斗は息が上がり、その場に膝を着き、変身が解除される。


「颯斗君!」

「大丈夫だ!」


颯斗の返事を聞き、莉乃はゲイルに集中する。


「残念だが、終わりだ」

「……っ!!」


ゲイルは莉乃の腹部に手を当てて。


『アトミックマンモス!フィニッシュ!』


「ぐああああっ!!」


莉乃は吹き飛ばされ、地面を転がり強制変身解除する。


「「莉乃っ!!」」

「お前達は俺には勝てない」

「私たちは…負けません……!!」


莉乃は立ちあがろうとする。


「春香さん…みのりちゃんに学校の友達…颯斗君、お母さん…お父さん……みんなが私を愛してくれています……!私は守りたいんです…私の大切なものを…愛するものを!!!だから…私は最後まで諦めません!!」


莉乃がそう言うと、体が輝き出す。


「な、なんだ!?」

「莉乃……?」

「うおおおおおおっ!!」


すると莉乃の体から光が分離し、長方形に変化する。

莉乃はそれを掴み取る。


「アビリティカード!?」

「なんだと!?」


莉乃はカードをスキャンする。


『アムール!』

『オーディン!』


「オムニバスチェンジ!」


莉乃はチェンジャーの外側を回転させる。


『博愛の超絶神!アムールオーディン!スペリオル!』


「なんだ!!なんなんだお前は!!」

「私はスペリオルエイドヴァルキリー!これが私の新たな力です!!」


そう言って莉乃はゲイルに飛びかかった。


─────────────────────────────────────


「ふん!!」


莉乃のパンチはゲイルの反応速度を超えていた。


「ぐああっ!!」


ゲイルは大きく吹き飛ばされる。


「あなたはもう、私には勝てない!」

「舐めるなぁ!!」


ゲイルは爆弾を放つ。


『オムニバスブレード!』


莉乃はオムニバスブレードを取り出し、更には左手をハンマーに変える。


「ふっ!はあっ!せやあっ!」


莉乃は爆弾を全て破壊する。


「まさか…アビリティカードの力を全て使えるのか!?」

「どうやらそのようですね」


莉乃はそう言って右手で半円を描く。

すると小型のジェット機が現れる。


「こんなのはどうです?」


指をパチンと鳴らすと、炎に包まれる。


「発進!」


そう言えば、ジェット機はゲイル目掛けて飛んでいく。


「くっ!ぐああっ!」


ゲイルはそれを避けきれずに喰らう。


「はああっ!」


莉乃はライオンのエフェクトと共に蹴りを入れ、更にはユニコーンのエフェクトと共にドリル状のエネルギーを纏ったパンチを放つ。


「ぐあああっ!!」

「ゲイル…あなたを倒す!」


莉乃はチェンジャーの外側を回転させる。


『アムールオーディン!スペリオルフィニッシュ!』


「はあああああっ!!」


莉乃はエネルギーを纏った蹴りを放つ。


「ぐあああああっ!!」


ゲイルは大きく吹き飛び、地面を転がる。


「ぐああああっ!!」


そして、爆発する。


「ぐっ、ぁ……!」


ゲイルは強制変身解除し、地面に倒れる。

そして、ダークオムニバスチェンジャーは砕け散った。


「倒した……!」

「すごい……!」

「クソっ…次はこうは行かないぞ!」


そう言ってゲイルは姿を消した。

それと同時に莉乃は変身解除した。


「あれ……?まだ5分くらいしか経っていないはずなんですが……」

「そのフォームは5分ほどしか維持できないみたいだな」

「なるほど。そういうことですか」

「やったな」

「はい」


颯斗と莉乃はクロスタッチした。


「じゃ、俺は帰るよ」

「お気をつけて」

「おう」


颯斗はそう言って去っていった。


「私たちも帰りましょう」

「そうだな」


2人は一緒に歩き出した。


          To be continue……


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