ルナティックティアーズ プログレッシブ/パスコード
綾瀬真優
ミステリーサスペンス
2025年05月08日
公開日
13.3万字
連載中
銃社会と化した2025年の日本。
大人気MMO、EXCのオフ会で起きた恋愛トラブルを引き金に、コスプレイベント中に射殺事件が起きる。デート中、その場に偶然居合わせた高校生の流雫(るな)と澪(みお)は犯人を仕留める。
事件の被害者の同行者は、アウロラと名乗る少女の悠陽(ゆうひ)。2人は悠陽と知り合うことになる。
一方、EXCではチート級エネミーにキルされたアバターがNPC化、元の持ち主やフォロワーを襲撃する事件が起きる。
悠陽へのストーカー疑惑も含め、自らをスタークと名乗る男と、始めたばかりのEXCで対峙する流雫と澪。
しかしその翌日、スタークは列車に飛び込み自殺する。その影響に頭を抱えるエンジニアの椎葉。その恋人でネットニュース記者の逢沙(あすな)は、AIを信仰する謎の集団「栄光の剣」が怪しいと睨み、開発元を取材する。
人気MMOを巡る思惑が引き起こす凶悪犯罪。6発の銃弾で、真相を掴め。
第0話 澪標
何時もと同じ朝を迎え、少女は服を着替える。青を中心にコーディネートされた服装に身を包み、肩に触れるボブカットの先端を軽く指で跳ね除け、家を出た。
今朝の夢は少し不思議だった。女戦士となった自分が、崩壊する世界で最愛の少年に護られながら、漆黒の空に戦いを挑む……。それは昨夜寝る前に少しだけプレイした、パズルRPGゲームの影響だとは容易に想像できた。
星無き空に紡ぐ、愛と未来の行方。そのキャッチコピーが、2人のために生まれてきたとさえ思えてくる。少し痛々しいと思われようと、それが今の偽りなき思い。
人は誰もが、迷いながら生きる。だから人は、澪標となる存在を求める。それは人、物、そして神と呼ばれる存在。人によって異なるそれは、少女にとってはとある少年だった。
力になりたい。あたしがついてる。数え切れないほど、そう言った。好きと言ったことは数回しか無く、何時から愛しているとしか言わなくなった。悲しみや苦しみさえも受け止める、それが愛すると云うこと。
……誰かの澪標となるために、あたしはそう名付けられたのかもしれない。