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第11話 目が覚めたら全部終わってた!

 《グリード城 宿泊部屋》


 日がのぼり気持ちのいい光が窓から入ってきて朝を伝える。


 「ん、んー……」


 自分が発したとは思えない甘い色気がある声を出しながら伸びをして目をゆっくり開けた。


 「……知らん天井だ」


 身体を起こし、周りを確認する。

 床はモフモフした高級カーペットで横はワインレッドの高級感の漂う壁。


 「夢であって欲しかった……」


 今まで悪夢の様な事は自分の身体を見て全て現実という事を自覚した。


 今回はちゃんと服を着てるな……


 うん、ピンクのバスローブ……なんでやねん!


 「毛布がちょっとした服みたいになっただけやんけ」


 ちなみに下着は履いてない。


 俺のアレもなくなっててアソコの毛まで金髪になってる……


 「と、とりあえず、状況整理だ……ここに来て色々なことが起こりすぎた……」


 えーっと、まず俺は弟を誘って家の近くの居酒屋で酒を飲んでた。


 泥酔して帰ってゲロ吐いて寝て起きたらこの世界に居て……


 そこで衝撃の真実、身体が女になっていました……ぐわぁぁぁあ!気持ち悪い!


 それから部屋で着替えようとしたら王女様が来て……全裸毛布で王の前に戻ってくる。


 それから……


 「……『女神』だっけ?」


 この世界では『女神』って絶対悪って言ってたな?


 「何だそりゃ!俺悪決定じゃん!?確かに女は悪だと思うけど俺男だよ!?」


 もうあの……何もしないんで元の世界に帰してもらっていいですか?


 「どっかの蜘蛛先輩とか盾の先輩とかと同じパターンだったらマジでどうしよ……あんなハードモードで生きていける気がしないよ!!!」


 うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!なんかもう今後を考えるだけでマジで鬱になりそう!頭がコングレッチュレーション!ぐちゃぐちゃになってきた!


 「落ち着け俺!こう言う時はあの人になりきるんだ!」


 俺は息を整え……


 「ふぅ……」


 思いっきり枕に顔を埋めて叫んだ!


 「う~~ううう あんまりだ…H E E E E Y Y Y Y あ ァ ァ ァ ん ま り だ ァ ァ ア ァ

AHYYY AHYYY AHYWHOOOOOOOHHHHHHHH!!おおおおおおれェェェェェのォォォォォ うでェェェェェがァァァァァ~~~!!」


 …………ふぅ……頭の中のもの全部出せたぜ……ありがとうエシ先輩。


 「とりあえずあんまり考えないで楽しく異世界ライフしよう!」


 俺は自覚のあるバカだ。

 このバカ頭はこう言う時に使う。


 「それにしても、剣向けられるの恐かったなぁ……軽くトラウマだよトラウマ、タイガーホース!平和に育ってきた日本人は銃も突き付けられた事ないから怖いの!」


 良くもまぁアニメや漫画の人たちは剣向けられて平気だよな……俺なんてマジでおしっこ漏れそうだったよ。


 ……ちょっと出たけど……


 「なんか考えてたらトイレしたくなってきた」


 トイレってどこあるんだろ?なんか部屋の構造的にはビジネスホテルみたいだし。


 「とりあえずベッドから出るか」


 ベッドから出て入り口らへんを見てみるとそれっぽいドアがあった。


 「あー、たぶんここだここ」


 ちょうどドアノブに手をかけた所ですぐそこの入り口が開く。


 「あら、起きたのですか?」


 「は、はい、おかげさまで」


 おぅふ、尿意ががが。

 と言うか、何で王女様直々に!?下っ端に来させなさいよ!


 「入っても宜しくて?」


 「え、い、いや今は」


 「何もないですわよね?むしろ私達を待っていたのですわよね?」


 「あ、ちょ」


 おいいいい、女が入ってきたぞ!俺の体の中の細胞達が危険信号を出して鳥肌を出現させた。


 女性恐怖症が確実に発動している。


 「とりあえずお座りになられて?」


 「は、はい」


 イスに座るとどう足掻いても近くになるのでベッドに座る俺……頼むからそれ以上俺に近づくなよー?


 「まず、あなたに質問がいくつかあります、あなたも私にあるでしょうから私の質問に答えたら教えてあげます」


 よし!王女は狙い通り少し離れたイスに座った。

 それに気を取られて話の先手取られたけどまぁいいか。


 「わかりました、俺……僕が知ってることなら何でも」


 女で1人称が「俺」は昔俺をいじめてきた女を思い出すので「僕」にした。


 ちなみに「私」と言うと自分が本当に女になったみたいでゲロ吐きそうなので絶対にない!


 「あなた、なんで異世界から来てるのに私達の言葉がわかるの?それと字は読める?」


 「なんでって言われても解る事は解るから答えようにも」


 「じゃぁ、これは?」


 そう言うと皇女の指の先が光出して空をなぞると{読める?}と漢字を含めて文字が浮き出た。


 「はい、読めます……すごい、これが魔法?」


 「なるほど、字と言葉は伝わって魔法の方に驚く、あなたの世界では魔法は無かったの?」


 「無かった、と言ったら語弊があるかな?昔にあったのかもしれないって思われてました、こっちじゃ、おとぎ話とかで出てくるみたいな感じです」


 「ふーん……魔法も知らない使えないのにあなた達は【勇者】として私たちの世界に来た、なぜかしら」


 「不思議ですね?」


 「魔法もない世界、原始的な世界かしら?もしかして洞窟に住んでたとか?」


 ムカッ


 何だろう、そのつもりで言ってないんだろうけど女でそう言われると俺たちの世界を馬鹿にしてる様に聞こえる。


 仕方ない、教えてやろう!




 映画で見ただけの薄っぺらい【科学】の世界をな!



 「ご、ごほん、僕達の世界では魔法なんて頼らなくても良いんですよ?そもそも効率が悪いから無くなったんだと思いますし」 


 「あら、じゃあどんなのかしら魔法より効率がいいものって」


 「私達の世界では科学を使ってましたよ」


 「科学?」


 「そう!科学!科学が溢れる世界で代表的なのは……あー……えーっと……」


 代表的なの代表的なの……あ!そうだ!あの映画だ!


 「戦闘スーツですね!わざわざ着る必要がなくて必要なときに身体からノペッとナノマシンで出てきます!空も飛べたり!さらに武器なんて銃やレールガンやファンネル!ドラグーンシステム!ファング!全部スーツに収まっていて……おっと失礼」


 危ない危ない、つい盛りに盛ってしまってた。

 あまり言い過ぎるとバレる事は無いと思うけどバレた時が怖いからここら辺にしとこう。


 「な、なるほどナノマシン?それで召喚された時に半裸だったんですね、そしてそれが魔王を殺す力の秘密」


 うん、間違った方で納得してくれてるけど、まぁいっか。


 「そ、そんなとこです」


 「貴方達が勇者と呼ばれるのは私達が持っていない科学の力を持っているから……なるほど……次にあなたが私に質問していいですよ?」


 質問かぁ……うーん、やっぱりあの事かな。


 「他の勇者は今どこへ居るんですか?」


 確か弟が居たはず。


 「彼等は数日前に近くの《クインズタウン》に向かって旅立ちました、王宮のサポートをさせて貰いながら彼等は彼等のこの世界の人生を自由に歩んでもらうつもりです」


 なんと!俺より先にもう異世界冒険ファンタジーへ!?

 これは俺もゆっくりしてられないな。

 早く出て追いつかないと!あっちは俺の事を兄だって事知らないんだ、このまま会えなくなる可能性が!


 「ゆ、行方は解るんですか?」


 「はい、どう生きるか選択しても必ずギルドを通すと思います、その時の履歴はこの城で検索できるのでそれを辿ればどの町や村に居るか大体検討が付きますよ」


 そ、そうか、なら会えなくなるって事はあんまり無さそうだ、王宮のサポートってどこまでか分からないけどここまで説明したなら「教えて!」って言えば教えてくれるって事だな。


 まぁ、後、こういうシチュエーションの時に言いたかった事がある。

 人生でこんな事言うって無いと思ったけど!


 えーっと確か


 「そうですか、次の質問です!」


 俺はベッドから立ち上がり、歯を光らせて、指を鳴らして、親指を立てて決め顔を作り


 「君の名前を教えてほしい」


 うん!やっぱり異世界でこんだけ条件が揃ってれば言いたいよね。

 まぁ、腹の底からこの女の名前なんてどうでもいいけど!


 ちなみに王がサクラと言ってたので解ってて聞いてる。


 「私の名前はサクラ、そう言えばあなたの名前は?」


 おっとぉ、カウンターが来た!


 えーっと、名前、かぁ。


 元の世界の名前なら【タダシ】だけど、正直今この見た目からは合わないし、どうせ異世界に来たんだからネットのハンネみたいな感じだよな。


 アニメなら後ろにある本を組み合わせて、とっさに江戸川コ○ンと名乗る様な所だけど……まぁ、こう言うとき好きな色でそれっぽくしよう。


 「僕の名前は……アオイ」


 我ながら安直だぜ。


 「そう、アオイちゃんね?これからよろしく」


 うわぁ、席立ったのがミスったな。

 俺が立ったからあっちもイスから立ち上がって握手を求めて来た。


 「よ、よろしくサクラさん」


 苦笑いが出る、手から蕁麻疹がでそうだ。

 後でめっちゃ手、洗お。


 「えーっと、次が最後の質問なんだけど」


 「はい、どうぞ?」


 「僕が気絶した後、何があったの?」











 「あの後の出来事、それは____」









 そこで初めて自分が気絶してる間に何があったのか聞いた。




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