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第89話 名前はアカネ!


 「よしよし」


 「......」


 あれからアオイが泣いている間、ずーーーーっと34番は抱きしめてアオイの頭を撫でていた。


 「......も、もう大丈夫......だよ」


 その効果もあってか徐々にアオイ自身の感情が戻ってきている。


 「いいえ、まだです」


 「うぐ......」


 少なくとも今の状況に顔が赤くなるくらいまでは回復している。


 「うにゃぅ……」


 「可愛い良い!!妹ちゃんクンカクンカ」


 思いっきり34番はアオイの頭を嗅ぐ。


 「うぐ……」


 当然、こうしてる間にも時間は進んでいる。


 なので元々居るはずだった“主催者”がこの部屋に入ってくるのも不自然ではない。


 「遅くなってすまない、ちょっとそこで__」


 「__ずっと聞いてましたよね、ドアを少し開けて」


 「敵わないな」


 主催者の名前はリュウト、アオイと同じく【勇者】として召喚された人間だ。


 「奴隷時代に私のトイレを覗く看守も居たんです、今さら人目なんて気にしません」


 この少年が、降りてきた。


 奈落の底に落ちたアオイの心を救いに……


 「それで?いつまでそうしてるつもりだ?」


 「あ、ごめんなさい」


 そう言われた後、アオイは解放され、長い髪を無意識に髪をかきあげた。


 「っ!」


 「?」


 リュウトはアオイの無意識の行動を見て見惚れるが……


 「リュウトさん、許しませんよ?」


 ネコミミ獣人は一言釘を刺す。


 「え?あ!な、何を言ってるのやら!」


 「ジーーーー」


 「そ、それより、知ってると思うけど、改めて紹介するよ……その獣人は俺のパーティーメンバーの____」


 「むぅ!」


 あからさまに34番は顔を膨らまし不服そうな顔をリュウトに向ける。


 「ごほん......家族の《アカネ》だ」


 「よろしくお願いします♪アオイさん」



 奴隷No.34番……アカネ。


 アオイはその名前を心に刻み、覚え込ませる。


 「よろしく……お願いします、アカネさん」


 アカネの手を握り、優しい温もりを感じる。


 「さて!と、じゃ、そろそろ戸の前で手を組んで待っている奴を連れてくるよ」


 リュウトは話の区切りが付いたのを察して外に居る……




 “もう1人の勇者”に声をかけた。



 「もう入ってきていいよ」


 「......帰ろうかと思った」


 「まぁそう言うなってハッハッハ」





 「!?」





 入ってきた人物はアオイが絶対に忘れるはずのない存在。




 「......久しぶり」








 ヒロユキの姿だった。





 「さぁ、全員揃ったし、【勇者会議】を始めようか。」



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