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第135話 初めての再会!


 ヒロユキ達がモグリ邸を出発した後、その少し後に近づくダンボールの影……



 女物の下着のメーカーが書かれたそのダンボール____








 ____そして、ダンボールの中から人が出てくる!








 「待たせたな!」



 某ゲームの渋い主人公の決め台詞を放ち、出てきたのは勇者【アオイ】!!



 「あぁ……腰が痛かったぁ……」


 そう言いながら腰を叩き、モグリ邸を見る。


 「さて、と来たのはいいけど、みんな無事に避難してるかな?そういや、途中から小さいハエ見なくなったな?なんでだろ?」


 疑問を口に出しながらもインターホンを押す。


 「ま、まぁ、いないよね?」


 一応確認で3回ほど押して少し待ち、避難していると判断すればギルドまで再度ダンボールで移動して行く……と思ったが__



 「アオイ?」


 「え……」


 アオイの想いとは裏腹にウマヅラが出て来てしまった。


 「無事だったか!」


 「ウ、ウマズラ先生!?避難は!?」


 「その事だが……まず中に入れ、話がある」


 「は、はい」


 アオイはウマズラに案内され、会議室に入るとそこにはモグリや他の獣人達が待機していた。


 みんな入って来たアオイを見て安堵の声をかける。


 「アオイ!」


 「アオイちゃん!」


 「無事だったのねー!」


 「みんな……え、えと、ただいま戻りました」


 モグリも他の人たちと同様にアオイを暖かく迎えてくれる。


 「よく戻って来てくれた、疲れただろう……まずはゆっくりと休むといい」


 「子供たちは!どうなりました?」


 「安心しろ、子供達“は”無事だ」


 「良かった__ん?子供……達?」


 「……」


 「あの……それは一体どういう意味ですか?」



 「実は____」



 ______________


 __________



 ______



 「そんな……ネールさん……」


 アオイはウマズラと一緒に大量の花が飾られた棺桶が置いてある部屋へ来ていた。


 「あいつの奴隷商は貧乏な所でな……売れ残って餓死しそうな所をモグリマスターが買ったんだ….だからこそ、子供達に料理を作る想いは人一倍強かった」


 「なんで、そんな優しい人が……」


 「少ない間だったが同じ先生として働いた仲だ、アオイも見てやってくれ」


 そうしてウマズラが棺の小窓を開けると、頭に包帯が巻かれてるネールが安らかに眠っている顔が出てくる。


 「……」


 アオイは静かに目を閉じて手を合わせた。


 「……」


 ウマヅラは何も言わずに部屋を出ていく……



 「………………どうして、この世界って人が簡単に死ぬんだろうな………」



 誰もいない部屋。

 呟きはアオイ自身しか聞こえない。



 「ネールさん、俺もアンタに美味しい料理を食べさせてもらった1人だ……この恩、忘れないよ……」






 「ありがとうございました」





____________



________



____









 「こんな暗い気持ちじゃ子供達に会えないな……」



 廊下を歩いているとふと《医務室》が目に入った。


 「確か……ここには……」


 アオイはモグリから身を挺して街中の小さいハエ達を倒した少女の事を聞いていた。


 「お礼、しよう」


 扉が静かに開かれ、部屋に滲む光が、苦しむ少女の姿を照らした。

 ベッドの上で彼女は大量の汗をかきながら、息苦しそうに苦しんでいた。

 その目には、苦悶の色が滲んでいる、そして、その一瞥が、アオイの姿を捉えた。


 「!?」


 「あ、えーっと……その……部屋間違えました!ごめんなさい!」


 お礼を言おうとしたアオイだったが、冗談ではない程の状況だったので急いで部屋を出ようとした、が、止められる。


 「ま、待って……!」


 「は、はい?」


 「み、水を……」


 「あ、了解です!」


 「ありがとう……ございます」


 「……」


 「……」


 「えと、ユキさん?かな?」


 「そう、です」


 「あの、えっと、色々聞いてて……ありがとうございます」


 「………………」


 ユキはアオイの姿を見て、涙を溜めている。

 その様子はまるで、大切な人に会ったときのようだった。


 「やっと……やっと……」


 「?」


 「いえ…………すいません……少し魔力を使いすぎて身体が……キツいので起こしてもらっていいですか?」


 「う、うん」


 アオイは優しく、その軽い身体を起こそうとすると__


 「!」


 「え!?」


 近づいて来た所をユキは思いっきり抱きしめた。


 「寂しかった、辛かった……頑張った」


 「あ、あの?ユキさん?」


 「辛かったよぉ……」


 涙が溢れ出し、ユキの頬を伝う。

 その姿はまるで、悲しみや喜びを抑えきれずに泣く子供のようだった。


 「………………そっか、良く頑張ったね、偉い偉い」


 アオイは何も言わず、優しく手を伸ばしてユキの頭を撫でる……するとユキは微笑みながら、「えへへ……ありが……とう」と言い、そのまま力が抜けるように眠りについた。


 「フフッ、凄い人って聞いていたけどやっぱり中身は子供なんだろうな」


 ベッドにゆっくりと横たわらせると、窓からは赤い光の柱が空へと伸びているのが見えた。


 その光は、ヒロユキが発動したギルドの転移魔法の光だった。



 「…………」



 アオイは何も言わずにその部屋を後にした。










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