「どうしましょ……これ」
「……」
「あらあら~、ユキさんの勝ちだけど、倒れちゃったわね~」
ユキと門番の勝負は門番が6杯、ユキが8杯でユキの勝ち……だがその反動で門番が倒れてしまった。
「……」
……お酒で飲み倒れてる人を見ると兄さんを思い出す……医者のたまこが居たので見てもらい、命に別状はないのは確認した。
───時間は日が沈み夜。
居酒屋としては今からが本番だろう……
「……考えなしの勝負するから……」
「な!?し、仕方ないじゃないですか!こういう頭が柔らかくない人はこうするのが1番なんですよ」
「……」
「いてっ、チョップしないでください」
「でもどうするの~?これじゃぁお店は無理よ〜?」
「「……」」
仕方ない事だ……俺達には何も____
「いいえ、お店は開けます」
「え?」
「……え」
ユキはそう言った後、厨房を見る。
「途中ですけど食材の切り方も丁寧、鍋の煮込み具合も弱火からゆっくりとじっくり時間をかけてる……ひとことで言うと、愛を感じます」
「……何言ってるんだ?」
「でもどうするの~?言っとくけど私は料理出来ないわよ〜」
「任せてください!料理は全て私がします!!」
____深夜1時。
「うぐ…………」
「……起きたか」
2階にあった寝室に寝かせていた店主は起きる。
「時間は……!?、しまった!」
状況を把握したのか焦りながら飛び起きて焦りながら下へ走っていった……フッ……
「……」
店は大繁盛。
その光景を見て驚きの表情で店主は止まっていた。
「大将遅いぜー!この姉ちゃん達!いつ雇ったんだ!」
「大将!飲み比べで負けたらしいな!大将負かすなんてよっぽどだぜ、この人間の姉ちゃんは!」
酔って顔を赤くした2人がゲラゲラ笑いながら店主を見るなり大声でその場から声をかける。
どうやら2人は常連らしい。
「やっと起きましたか」
「あら〜、おそかったわね〜」
たまこは眠そうなのかあくびをしながら会計のレジに立っていて、ユキは料理を作っている。
「あ、あぁ……すまない」
たじたじな店主は厨房のユキの料理を見て驚く。
「こ、これは」
「あなたのオリジナル料理【鷹鶴の九門焼き】……良い料理ですね……下味付けがしっかりされていて、その品質を落とさないように焼くのに私は色々と考えさせられました、私にここまで考えさせるとは、お母さんの料理以来です」
「お前が、作ったのか?」
ユキの作った料理は元の世界で言うと北京ダックみたいな感じだ。
良く焼かれた鳥の丸焼きの上から照り焼きソースがしたたっている……兄さんが居たら舌舐めずりしてお酒飲みながら一瞬でたいらげそうだ。
「そうよ大将!大将の料理も美味かったけどこの子が手を加えるとさらにうまいぜ!おまけによぉ!この子は偉い!こんなに小さいのにしっかりしてて……まさか……まさかよ……おかんをずっと探して旅してるなんて……」
およおよと次はお客が泣き出す。
俺達が勇者の事は秘密だ。
だから、普段冒険者をしてる理由が聞かれた時はユキの目的を話している。
……嘘はついてないからな。
「そんな泣かないでください、私は絶対に見つけて見せますから」
「偉い!人間も獣人も心はみんなおんなじ何だなぁ、およよよ」
「おいおいヒック、飲みすぎだぞ~?ヒック」
「なんでぃ!お前もじゃないか」
「はいは~い、2人とも〜お時間ですよ〜」
「もうそんな時間か!じゃぁな大将!明日も来るぜ!」
「うぇ~い」
客は千鳥足で笑顔で帰っていった。
「そ、そのありが__」
「礼を言う前にこれを食べてください」
ユキは店主の前にお皿をつきだす。
「……」
その上には俺が良く知ってる料理が置かれている。
「なんだこれは?」
「美味しいものを教えてもらったお礼です、お母さんの1番料理をあなたに教えます、食べてみてください」
店主は箸を使わずに1つ手に取って食べる。
「!!!!!!」
……おぉ、はじけた。
それを皮切りに獣の様に手を使わず口で皿の上のものを食べ始める。
「な、なんだこれは!うまい!うますぎる!」
「ふふん♪どうですか!これが“唐揚げ”という食べ物です!」
その料理は元の世界の一般家庭でよく出される料理だった。
「今日は遅いのでまた明日、来ますね」