目が覚めると、俺は真っ白な空間に立っていた。
「
声が聞こえて後ろを振り向くと、そこでは白髪白眼の美女が宙に浮かんだ分厚い本に視線を落としながら、何やら不穏なことを呟いていた。
「あの……?」
「貴様が疑問に思っていることを答えよう。我は異世界の神だ。地球の神が貴様を手違いで殺してしまったのだが、地球は魂が飽和状態なので我が引き取った。まあ最近はよくあることだな」
「えぇ……」
「ただそれではあんまりなのでな。貴様は記憶を保ったまま若返らせて転生させてやる。特典として、いわゆるチートな能力も与えよう。あぁ、だが貴様の望みを聞くようなことはしない。この『真実の書』には貴様のすべてが載っている。サクッと読み取って望み通りの能力をやろう」
「すべてって、そんなまさか」
「えー……誰にも言ってないが、実は大きすぎる身長と強面の顔がコンプレックス。大体の人に怖がられるし、まともに女と付き合ったこともないので、次に生まれ変わったらデカすぎない身長の爽やかイケメンになりたいという欲望がある。老若男女問わず、とにかく好かれてモテたい……か。ふむふむ、平凡な望みだな」
「プライバシー侵害がすごい」
「しかし、これ系は実のところ結構難しくてな。神も万能ではない。魅了の魔香や魔貌は制御が効かぬし、魅了の魔眼は面倒……あ、そういえば魔眼は余っている在庫があったな」
「いま面倒って言いました!? っていうか余ってる在庫!?」
「どれどれ……あぁ、これなら慣れれば制御できるようになるだろう。そこまで強力ではないし、ちょうどいい。よし、問題なしだな。望みはすべて叶えてやろう。我の加護も加えてな。至れり尽くせりだろう? だがカスタマーサポートとかはやってないから後から苦情は受け付けんぞ。なんかあったら自力で頑張れ」
「待って待って早い、早いです、しかも一方的すぎて」
「それではよき第二の人生を」
「ちょ、待っ……うわあああぁあぁああ!?」
美女が手を振ると足元に黒い穴が開き、俺はその中に落ちていって——やがて意識を失った。